※本ページ内の情報は2024年3月時点のものです。

ファッション産業では、製造から出荷において、環境への負荷を減らす取り組みが進められている。

革製のファッショングッズの企画・製造・販売を行っている株式会社クイーポは、1965年の創業時から環境に配慮したものづくりをしてきた。

同社の2代目社長である岡田敏氏に、先代から受け継いだ自然に優しい商品づくりや、自社ブランドに対する考えなどの思いを聞いた。

サステナビリティを意識した商品づくりの先駆け

ーー貴社の事業内容をご説明いただけますか。

岡田敏:
弊社は、ハンドバッグやスモールグッズ、ウェアなどのファッションアイテムを中心に、企画から製造、販売まで一貫して行っている会社です。新宿にある本社のほか、大阪と福岡に営業所を、葛西に物流センター、タイのバンコクに自社工場を持っています。

社員数はおよそ120人で、全国の百貨店に派遣している販売員さんが300人以上、タイの工場ではおよそ160人が働いています。

ーー今年(2024年現在)25周年を迎えるブランド「genten(原点)」について教えてください。

岡田敏:
「genten」のコンセプトは、「ファッションとエコロジーの融合」です。基本理念として、「環境に配慮します」「限りある資源を大切にします」「長く愛着を持てるモノづくりを目指します」の3つを掲げスタートしています。

弊社では環境問題があまり意識されていなかった時代から、できるだけ環境に負荷を与えないものづくりを行ってきました。

たとえば、皮をなめす処理をする際、化学薬品を使わず、植物由来のタンニンを使って革にします。こうして他社に先駆け、自然に優しい商品を供給することにこだわってきました。

ーー今後、自社ブランドをどう展開していく予定ですか。

岡田敏:
「genten」を日本発のラグジュアリーブランドにしたいと考えています。ラグジュアリーにはさまざまな意味がありますが、私は「輝きを持った」ブランドをイメージしています。

日本独自のアイデアを活かし、「日本には手頃な価格で購入できる優れた革製品がある」と海外から評価されることが目標です。海外の方々にとってクイーポの商品を買うことが、来日する目的のひとつになると嬉しいですね。

ーー今後は自社ブランドを主力製品として販売していくのでしょうか。

岡田敏:
自社ブランドに力を入れつつ、アナスイを初めとした、ライセンスブランドの良さも活かしながら、インポート商品も増やしていこうと考えています。昨今では、手頃な価格のバッグを求める方と、富裕層や訪日外国人をメインにハイブランド商品を求める方とで二極化が進んでいます。

そのため、弊社のような中価格帯の商品は、これから売れにくくなると予想しています。そこで、プラダなどの輸入事業を行ってきた経験を活かし、インポート商品を増やそうと動いているところです。

そのひとつとして、伊藤忠商事との協働でイタリアのバッグブランド「ゲラルディーニ(GHERARDINI)」の日本での販売を継承しました。今後さらにハイブランド商品のラインナップを拡充させ、顧客の獲得につなげていきたいと考えています。

魅力ある商品を提供し、世界で認知される企業へ

ーー海外進出への思いはありますか。

岡田敏:
以前はフィレンツェやパリ、上海などにも路面店があったのですが、一旦撤退してしまったので、将来リベンジしたいと思っています。

今ある日本発ブランドはデザイナーが注目される傾向にありますが、弊社は、有名なデザイナーはいなくても、海外から求められる存在になれる自信があります。

会社名だけで海外で認知されているブランドは、多くはないと思いますので、クイーポが代表的な企業となれるよう、認知活動に力を入れていきます。

ーー経営者としてどのような考えを大切にされていますか。

岡田敏:
弊社の従業員はファミリーだと思っています。お客様に幸せを提供するため、従業員の幸せを最優先にしています。そのためにも、利益を出し続けられる会社でなければいけません。

私は会社の売上は、お客様からの信頼のバロメーターだと思っています。そのため従業員には、お客様から支持される会社を目指すこと、また、謙虚な姿勢を保ちながら、自分の意見もしっかり主張するようにと伝えています。

ーー本日、本社ビルにお邪魔していますが、とてもきれいで立派な建物ですね。

岡田敏:
「ここの社員はこのビルよりも立派だ」といわれたらもっと嬉しいですね。もちろんすでに優秀な社員がそろっていますが、自分はまだ成長できるという思いを持って、さらなる高みを目指してほしいと思っています。

会社の伝統を守りつつ、さらなる成長を目指す

ーー今後の目標を教えていただけますか。

岡田敏:
「ファッションを通して人・社会を幸せに」が弊社の理念です。この理念をもとに「人・モノ・自然を愛しロマンを求め続けていく」というビジョンを掲げています。

このビジョンを具現化するため、「クイーポは魅力的な商品をつくる会社だね」と多くの方に思っていただくのが目標です。そのためには、私たち自身が価値のある商品を生み出そうという意識を持つことが大切です。

また、社長就任時に掲げた「志は高く実行は緻密かつ大胆に素早く」をモットーに、会社の地盤を固めていこうと考えています。組織の土台をしっかり整えたうえで、3代目に事業を引き継ぐつもりです。

これまでのクイーポの歴史や理念は大切に守りながら、さらなる進化を目指し、努力してまいります。

ーー岡田社長が求める人物像を教えてください。

岡田敏:
弊社は従業員の離職率が低く、会社としては望ましい状態です。転職が普通の時代になりつつありますが、社内において転職以上の魅力ある活動が出来る会社にしたいと思っています。

終身雇用制度が崩壊しつつある現代では、会社に守られるのではなく、自分の実力で勝負したいという方が増えています。弊社は、こうした向上心のある若手人材が成長できる組織でありたいと思っています。

自分の成長のために、さらなる高みを目指して努力できる方に入ってきてほしいですね。

編集後記

2代目である岡田敏氏は、環境に配慮した商品づくりにこだわった創業者の思いとともに、会社を引き継いだ。「日本にも優れた革製品を販売している会社があることを知ってほしい」と語る姿からは、自社の商品への愛着と自信が感じられた。株式会社クイーポは、これからも環境と人に優しい商品をつくり続け、私たちに輝きを届けてくれることだろう。

岡田敏/1960年富山県生まれ。1982年に専修大学卒業後、小杉産業株式会社(現株式会社コスギ)入社。1990年株式会社クイーポに入社。経理部・総務部配属後、営業本部長を経て、2009年代表取締役社長に就任。創業者の意志を受け継ぎ、ファッションとエコロジーの融合を軸とした経営を行っている。