※本ページ内の情報は2024年4月時点のものです。

2023年1月から10月までの人材不足による企業の倒産件数が、前年期と比較して78%増加し、集計開始以来の年間最多件数を上回ることとなった。

さまざまな企業が人材獲得に苦労する中、その問題に悩むことなく事業を展開しているのが株式会社ココナラだ。ビジネスからプライベート利用までそれぞれのスキルを売り買いすることができるという、今までにない事業形態であるがゆえの苦労や今後の展望などを、代表取締役社長CEOである鈴木歩氏にうかがった。

利用者急増の理由とは

ーー入社のきっかけと入社後に行った業務内容を教えてください。

鈴木歩:
きっかけは、ひょんなことから弊社の創業者であり、現会長の南と会ったことです。初対面にもかかわらず話がかなり盛り上がったことが印象的でした。何よりスタートアップ企業で働くことに面白さを感じ、すぐに入社を決意しました。当時は、スキルや知識、経験を持つ売り手側への世の中の関心が高かったため、入社して最初に買い手側へのマーケティングに着手しました。

ーー貴社が急成長したポイントについて教えてください。

鈴木歩:
2017年にテレビCMが放送されたことと、同時期にアプリをリリースしたことが大きなポイントだったと思います。CMが放送されてから一気に知名度が上がりました。

社名が認知された影響もあってか、CMの放送後2週間でアプリのインストール数が大幅に増え、会員登録も50万人を超えました。入社して1年で世界が大きく変わったような気持ちでした。

誰でも利用できるサービスへ

ーー貴社のプロダクトにおけるこだわりを教えてください。

鈴木歩:
直感で使用できる、極力シンプルなものをつくりたいと思っています。スキルシェアサービスの仲介という新しい概念を取り扱っているので、使い方は「シンプルで平準化され、普段使用しているツールと変わらないもの」をつくることにこだわっています。アップル製品のような、説明書がなくても使用できるものが理想です。

ーー事業目標を教えてください。

鈴木歩:
全ての人的リソースのニーズを叶えるサービスプラットフォームの構築です。受注・発注、アマチュア・プロを問わず、あらゆる人に活躍の機会を提供したいと考えています。

「スキル・知識・経験」にまつわることであれば、どのような形式のマッチングであれ、どのようなカテゴリーのサービスであれ、ココナラ内で完結するということが弊社の強みになると考えています。

現段階ではまず、ビジネス利用を増やし、認知度や利用頻度をあげて、社会に根付く人材のインフラとして確立することを目標にしています。その後、プライベート利用も日本全国に浸透し、「何か困った時、誰かに何かをお願いしたい時、ココナラで誰かにお願いするのが当たり前」の未来に向かっています。

ーーココナラとココナラプロの違いとはなんでしょうか。

鈴木歩:
「ココナラプロ」とはココナラが契約主体となりハイクラス実名クリエーターを紹介するサービスです。

ココナラは出品者と購入者の直接的なマッチングサイトであるため、契約の主体は出品者と購入者です。

一方、ココナラプロは出品者と購入者を弊社がエージェントのような形でマッチングさせるので、契約の主体が弊社になります。

既存業者の方に任せるより安価になる可能性があり、かつ第一線で活躍するプロクリエイターを通じた高いクオリティを保証し、バランスの取れた法人向けのサービスを提供できることが、ココナラプロの特徴です。

国内のみならずマーケットは海外へ

ーー人材不足問題も深刻化していますが。

鈴木歩:
世の中では仕事に対して人材が不足していることが問題視されていますが、「スキルマーケットココナラ」では本業として働くことも、副業として隙間時間に働くこともできるので、多様な働き方へのニーズに対応できていると思っています。なので、プラットフォーム上では人材(働き手)不足を感じたことはありません。

また、ココナラのスキル提供者には、子育て中の人や、シニア層も増えています。知識も経験も豊富だけど、時間や場所に制約がある人や、退職された方でも「活躍」できることが、人材不足に困らない理由だと分析しています。

ーー今後注力したいことを教えてください。

鈴木歩:
出品する側と購入する側の期待値をマッチングさせるために、生成AIを効率的に活用したいと思っています。自分の希望を言語化することが難しく、仮に言語化できたとしても適切な提供者を見つけることが難しいという問題に対し、生成AIのレコメンドによって問題が解消され、新たなシナジー効果が生まれるのではないかと期待しています。

また、2023年10月から、トップクリエイターと企業のマッチングを創出する「ココナラプロフェッショナル」、ハイレベル人材を活用して企業の経営課題を解決する「ココナラハイコンサル」、優秀なアシスタントがビジネスをサポートする月額制サービス「ココナラアシスト」を新事業としてローンチいたしました。

これにより、これまでの単発(タスク)のEC型だけでなく、長期(プロジェクト)のエージェント型まで網羅し、あらゆるニーズへの対応が実現します。
今後も、法人から個人まで、プロフェッショナルに直接依頼する際に、あらゆるサービス(役務)を提供できるマーケットプレイス「ココナラ経済圏」(※1)の創出を目指していきたいと思います。

【「ココナラ経済圏」(※1)とは】
法人から個人まで、プロフェッショナルに直接依頼する際に、あらゆるサービス(役務)を提供できるマーケットプレイスを「ココナラ経済圏」と呼んでいます。単発(タスク)型のスキルマーケット「ココナラ」や、長期(プロジェクト)型の「ココナラテックエージェント」等、ユーザーには様々なニーズがあります。あらゆるニーズの受け皿になる経済圏プロダクトと共通データベースの構築し、プロフェッショナルを活用しやすい社会の創出を目指しています。

ーー貴社の求める人物像について教えてください。

鈴木歩:
弊社は「一人ひとりが『自分のストーリー』を生きていく世の中をつくる」という明確なビジョンを持っています。自分のスキルや能力を提供したい、もしくは、誰かの力を頼りたいというニーズの双方を満たすことが至上命題だと思っているので、まずはその企業理念に共感してもらえる方がいいですね。

また、弊社はサービスのマーケットプレイスという今までにないものを作り上げていく事業であるため、仕事において圧倒的な熱量が必要です。他に参考にする例がなく正解もないのです。ですから、なにか壁に当たった時には自分たちでなんとかしていかなければなりません。

誰かを応援したいという思いが仕事の原動力になるという、弊社の考え方や企業理念に共感してくれる人と一緒に働きたいと思っています。

編集後記

社会では労働力不足が叫ばれる一方、ココナラ内では働く側によるスキルの供給のほうが多いという逆転の現象が起きている。時間や場所、属性にとらわれず、自分で働き方を選ぶことができるというサービスモデルが働く人々に受け入れられたからであろう。

国内のスキルシェアマーケットをワンプラットフォームにし、海外というさらに大きなマーケットも視野に入れている鈴木歩氏。どんな人も「ここなら」活躍できるという世界がやってくるのもそう遠くない未来かもしれない。

鈴木歩(すずき・あゆむ)/早稲田大学法学部卒業後、2006年株式会社リクルート入社、FromA、就職ジャーナル、ゼクシィ、広告代理事業の事業開発、Recruit USA(ホールディングスの海外経営企画)に携わり、商品企画、営業、事業開発、経営企画を幅広く経験。2016年より株式会社ココナラに入社、2017年に取締役COOに就任、2020年9月より代表取締役社長CEOを務める。