※本ページ内の情報は2024年5月時点のものです。

株式会社ハマキャストは自然石の風合いを再現し、紫外線や汚れに強く、美しい外観を保つことができる石材調外装材やタイル外壁の脱落防止工事、屋上防水工事などの専門工事会社である。さらに工事の品質と性能を保証するため「完全責任施工」を謳い、業界屈指の外壁の長期保全を実施している。

そんな同社の代表取締役社長である濵中陽子氏に社長就任の経緯や今後の展開をうかがった。

父親が倒れ、突然後継者となる

ーー社長になった経緯を教えてください。

濵中陽子:
父に誘われて25歳で弊社に入社した私は、建設業の知識もなく、男の世界というイメージも強かったので、長く働くことはないだろうと思っていました。

しかし、次第に弊社で取り扱っている商品や製品に思い入れや魅力を感じ、建設業界の常識を覆し、長期的に使えるものをつくろうという父の考え方にも共感するようになっていきました。

そのような中、2019年1月に前社長である父親が急病で倒れました。その後、病状は中々改善せず、その年の10月に私が後継者として社長に就任することになったのです。

前職では、フォトショップやイラストレーターを使って、カタログの制作や広報活動をメインに行っていたので、経営を引き継ぐことにはかなり抵抗がありましたが、専務を務める母や社員の後押しもあり決心しました。

とはいえ社員時代は納期があり、タスクが明確に定まっている仕事ばかりをしていたので、社長に就任した当初は、何をすべきか全くわかりませんでした。

誰からも具体的な指示がもらえず、「社長の仕事」とヤフーで検索したこともあったほどです。

資金繰りや経営方針の決定など未経験のことに挑戦し、さまざまな経験を積みました。緊張や不安、挫折を繰り返し、一つずつ乗り越えることで、徐々に社長とは何かを理解し、一社員から経営者へと変わっていくことができました。

社長になって変えたこと、変えなかったこと

ーー就任直後にコロナの流行が始まりましたが、どのように対処しましたか。

濵中陽子:
コロナの流行で外出が難しくなったので、外部の専門家や総務、経理のベテラン社員と協力して、社内環境や規則の整備を行いました。

たとえば、IT導入による業務の効率化や就業規則の改訂など、会社の基盤を強化するための取り組みです。この期間を使って、社内の意思決定プロセスの構築や事業基盤を安定させました。

父は、84歳にしてもなおトップダウンのカリスマ的なリーダーシップを発揮し、社員全員が彼の指示に従っていました。

38歳の私に同じようなことができるわけもありません。ですから、トップダウンからボトムアップへと大きく組織編成の舵を切ったのです。

確かに父がすべてを決定するアプローチはスピーディーでしたが、現場の問題が見えにくく、社員が経営視点に立って行動することが難しかったと思います。

そこで、私は彼らにある程度の裁量を与えて主体的に業務ができるようにしました。

また、福利厚生の規則も改正しました。男女関係なく、ライフステージによって仕事への影響はさまざまあります。男性の育児休業や介護の問題、プライベートでの病気や怪我などにより社員が離職しなくてもいいように、会社としてのサポート制度を設けました。

たとえば、他社には見られない「病気ケガなどによる長期欠勤時の有給制度」の導入などがその一例です。これにより、社員が安心して働ける環境を提供しています。

父の姿勢を受け継いだものもあります。それは、競合他社に真似できないような技術力を守ることです。同時に、自社の利益だけでなく社会貢献に取り組み、お客さまが喜びかつ環境にも優しいものをつくるという企業姿勢や、社員を大切にする社長としての心構えは、絶対に変えないと決めました。

正解のない決断、社長の葛藤

ーー社長になって辛かったことはありますか?

濵中陽子:
社長ゆえの責任の重さです。もちろん、大変だろうなとは思っていましたが、最初は本当の大変さを理解していませんでした。

しかし、日々経営に携わる中で、責任の大きさを実感するようになりました。自分が下した決断が、社員にとって良いことばかりではないかもしれない、社員を路頭に迷わせてしまうかもしれない、という不安を抱くことがあります。

たとえば、新社屋を建てたときのことです。私が社長に就任した当時、弊社の拠点は大阪市内に分散していました。私は一箇所に統合した方がいいと考え、物件を探し続けて移転を果たしました。

社員の中には通勤先が変わるなどのデメリットが発生する場合もあるでしょう。しかし、私はこのタイミングで移転することが、今後の会社にとってベターだと判断し、決断しました。結果として、拠点統合によるムダの削減やコミュニケーションの取りやすさに繋がったと感じています。

このように、正解がわからないことやすぐに結果が出ないことも多い中で、1つ1つ決断しなければならないことがたくさんあります。

ーー軸がぶれなければ良いと気づいてから、考え方や行動はどのように変化しましたか?

濵中陽子:
もともと私は人見知りで、人前で話すのが苦手でした。しかし、ノルマとして朝礼時に社員の前で話すようにしているおかげで、苦手意識が少し改善されました。

また、いろいろな経営者の方とお会いする機会が増えたことで、考え方の幅も広がりました。社長に就任してから、内向的だった性格も変わったと思います。

じつは、社長就任時に創業100周年で社長を退任することを決めています。今年が創業78年なので、あと22年です。経営者の引き継ぎには10年かかると想定しています。

私が社長に就任した時は、経営について何もわからずとても苦労しました。ですから、この12年の間に有望な後継候補者を見つけて、後継者育成にも取り組みたいと考えています。

塗装業界の常識を覆し、未来を切り拓く

ーー貴社の技術力の強みを教えてください。

濵中陽子:
弊社の商材に、外壁を石のように見せる塗料がありますが、その塗料を生かすハイクオリティな塗装は弊社にしかできません。また一般的に、塗装工事のプロセスでは、材料が塗料メーカーからディーラー、そして工事会社と流れていきますが、弊社では開発から施工までを一貫して行うため、見た目が良く耐久性の高い仕上がりを低価格で実現できているのです。

商材に自信があるからこそ、責任を持って品質を保証します。建設業界で品質や性能に対して保証をするビジネスモデルは少ないので、ここが弊社の1番の強みだと思います。

弊社独自のトップコートは、美観性を保つだけでなく、建物の資産価値を向上させ、長期の耐久性を実現します。また、1回施工すれば20年の保証があり、50年ほどはメンテナンスしなくても汚れません。親水性のトップコートを使用しているため、雨水で汚れを流すことができるのです。さらに、建物に最も影響を及ぼす紫外線をカットすることで外壁の汚れや劣化を防ぎます。

ーー商品開発に力を入れているとお聞きしました。

濵中陽子:
詳しい内容はお話しできませんが、人体に害がなく、従来品よりクリーンなもので同じ性能を出せないか、もっと施工しやすくできないかなど、常にさまざまなことに挑戦しています。

職人という職業は、喜びを感じられるやりがいのある仕事だと考えています。

先日、入社2、3年目の社員が、技術が身についてきて、自信を持って仕事に取り組んでいると嬉しそうに報告してくれました。

今後も施工場所や人を増やし、会社を着実に成長させていきたいと考えています。

編集後記

大卒の新入社員が、職人として成長していると嬉しそうに話してくれた濵中社長。業界の常識を覆し、他社にはない強みで建築業界のイノベーションに挑み続ける彼女の情熱が、若手社員の熱意を誘発し、新たな価値を創造していくのだと感じた。

突然の社長交代に戸惑いながらも突き進んできた濱中社長の目には、次世代の戦略も見えていることだろう。ハマキャストと濵中社長の挑戦に、これからも注目していきたい。

濵中陽子(はまなか・ようこ)/1981年大阪府生まれ、龍谷大学卒。株式会社ハマキャスト入社後、営業、製品開発、広報、人事などのセクションを経て、2019年10月に同社代表取締役に就任。