時代の先を読む力を発揮
-創業当時の秘話などございましたら、教えていただけますでしょうか。
三嶋社長:
創業した1999年、インターネットは普及途上でした。
もちろん、スマートフォンやタブレットはまだ存在していません。
パソコンのモニターもデスクトップ型の大きなブラウン管で、世の中の情報はテレビやラジオ、新聞から得るのが当たり前の時代でした。
そんな中、携帯電話が出回り始め、通話以外の通信も可能になったことが革新的に思えました。
その頃の私は、製造系・事務系の一般労働者派遣事業を手掛ける「株式会社総合プラント」を経営していました。
しかし、お客様からIT技術者派遣のご要望が増えたことで、「これからはITの時代だ」と直感したのです。
私自身、特にITに詳しいというわけでもありませんでした。
しかし、来たる21世紀はIT分野が飛躍的な成長を遂げると確信し、IT領域と製造領域に特化した高度なモノづくりに取り組むべく当社を創業しました。
ちなみに、「テクノクリエイティブ」とは文字通り「技術を創造する」という意味です。
社名を思い付いたときは同一の名前がないかどうか確認したのですが、今のようにネット検索を駆使できなかった状況では電話帳を調べるくらいしか方法がなく、大変苦労したことを覚えています。
ワンストップの高度な技術サービスを提供
-貴社の商品・サービスの中でも特に強みになっているのはどのような点でしょうか。
三嶋社長:
当社は、日本で先駆けの「総合エンジニアリング企業」です。
システム開発やインフラ基盤構築分野などソフトウェア関連の「システムインテグレーション」と、機械類や生産装置の設計開発・製造などを行うハードウェア関連の「エンジニアリング」の2事業領域を展開しています。
両事業にまたがるワンストップの技術サービスを提供することで、さまざまなご要望に柔軟に対応できる点が強みです。
システムインテグレーションでは、さまざまな業種のお客様向けにトータルITソリューションを提供し、最新のITトレンドに対応可能な人材を育成しています。
エンジニアリングでは、国内外のメーカーを中心に一貫生産体制を提供し、半導体製造装置や自動機などの分野で事業を展開してきました。
電気自動車や次世代エネルギー分野にも注力しています。
当社は高い技術力、確かな信頼、豊富な経験をもとにした創造力を活かし、顧客企業の経営戦略や業務課題など、あらゆる状況変化に柔軟に対応する新時代のビジネスインテグレーションサービスを提供いたします。
現在は熊本本社をはじめ、東京、名古屋、大阪、福岡、北九州、大分、広川(福岡)の8拠点を構え、エンジニアリング事業は九州からの全国展開も計画しています。
-創業から四半世紀の間には、経営上の危機に見舞われたこともあるかと思います。
三嶋社長:
2008年のリーマンショックは、会社にとって最大の正念場でした。
多くの企業が倒産に追い込まれたかと思いますが、当社も事業継続が危ぶまれる状況に陥りました。
かなりの退職者も出て、「この会社はもう終わりだろう」と悲観的な見方をしていた方も大勢いらっしゃったかと思います。
今考えれば、会社存続のふるいにかけられていたような気がしますが、何とか乗り越えることができました。
会社を続けることができたのは、部下にも助けられたおかげと感謝しています。
IT人材の育成にも貢献
―現在の業績は順調に推移されているかと存じますが、貴社のサービスが受け入れられた理由については、どのようにお考えでしょうか。
三嶋社長:
まずは、市場のニーズを正確に捉えた点にあると考えています。
すでに述べたように、IT技術が普及し始めた時期にシステムインテグレーションとエンジニアリングの事業領域を立ち上げ、ワンストップの技術サービスを提供する体制を整えました。
これにより、顧客の多様な要求に柔軟かつ迅速に対応してきたことが、多くの顧客に支持していただけたのだと思います。
また、AI・IoT・クラウド・5Gなどの最新技術に対応できる高度なIT人材を育成し、最先端のソリューションを提供していることが、顧客からの信頼獲得に繋がったと考えます。
さらに、国内外のメーカーと連携して一貫生産体制を確立することで、品質と効率を向上させてきました。
地域にとどまらず全国展開を計画し、成長を続けている点も企業としての信頼性を高めていると捉えています。
-視点を変えて、採用に関する質問です。貴社が求める人材像や、将来的に社長の右腕として活躍するために必要な「資質」があれば、ご教示いただけますか。
三嶋社長:
当社が求める人材は、柔軟な思考と高い適応力を持ち、新しい技術や知識を積極的に学ぶ姿勢を持ってくださる方です。
システムインテグレーションやエンジニアリングの分野で活躍していただく上では、専門性の高い技術力と問題解決能力、チームワークも重視します。
その上で、顧客のニーズを理解し、最適なソリューションを提供できるコミュニケーション力も求めています。
一方で、入社時にプロジェクトマネージャー(PⅯ)やプロジェクトリーダー(PL)の経験はなくても構いません。
「挑戦してみたい」「キャリアアップしたい」という向上心のある方を歓迎しています。
事業拡大のフェーズにある当社はPL、PM、要件定義などの上流工程を担うエンジニアの育成が急務です。
当社で活躍するエンジニアは優秀ですが、どちらかといえば作業工程を担うプロフェッショナルが多いという課題もあります。
そのため、入社年次や経験の有無に関わらず、「上流工程に携わりたい」という意欲的なエンジニアの育成に力を注いでいます。
そのため、実際のプロジェクトで活躍してもらうための勉強会も開催するなど、会社を挙げてのサポート体制も充実しています。
もちろん、最初から何でもできる人はおらず、どんな持ち場にも各自の役割分担があります。
それぞれが持つ能力を少しずつ高めながら、さまざまなことにチャレンジできる環境を整えたいと考えています。
また、経営の立場で活躍するためには、リーダーシップと決断力が欠かせません。
戦略的思考とビジョンを持ち、迅速に行動できる実行力も重要です。
さらに、変化の激しい業界で常に先を見据え、革新的なアイデアを提案できる創造力も求められます。
これらの資質を持つ人材が、当社の成長と発展に寄与することを期待しています。
-2022年11月には、東京証券取引所の「TOKYO PRO Market」に新規上場されました。上場の目的と実感できる効果についてお聞かせください。
三嶋社長:
創業以来、上場も大きな目標として掲げてきました。
ただし、売上高や利益を追求するだけなら、上場の必要性はなかったかもしれません。
しかし、これからも価値ある企業としてブランド力を高めながら成長・存続し、社会に貢献していこうと考え、改めて上場を選択しました。
上場から1年半余りが経過した今では、企業の信用力が高まり、優秀な人材の確保にも繋がっています。
とはいえ、上場は次のステップへの通過点です。今後は事業承継も視野に入れつつ、より優秀な人材を獲得していきたいという思いもあります。
企業価値1000億円と上位市場への指定替えが目標
-最後に、貴社の今後のビジョンをお伺いできますか。
三嶋社長:
当社は中長期的に企業価値1000億円を志し、直近3年以内に東京証券取引所のスタンダード市場への指定替えも達成したいと考えています。
これらの目標を実現するため、まずは持続的な成長を支える基盤を強化していく方針です。
また、システムインテグレーションとエンジニアリングの両分野で技術革新を推進し、最先端のITソリューションと製造技術を提供することで顧客満足度の向上も図ります。
国内市場における事業拡大も積極的に推進し、新たな顧客層の獲得と収益基盤の多様化を目指します。
さらに、優秀な人材の採用と育成を通じて組織としての競争力を高めるため、社内の連携を強化していく考えです。
編集後記
携帯電話が普及し始めたばかりの時代に、IT分野の飛躍的な成長を確信していた三嶋社長。
デジタルの知識が潤沢だったわけではないにも関わらず「総合エンジニアリング企業」の道を志し、困難を乗り越えながら成功に導いてきた手腕には驚かされる。
「モノづくり大国・日本」の復権にも、高度なIT人材の育成と最先端のソリューション提供によるイノベーションは欠かせない。
四半世紀に渡り、たぐいまれな慧眼力を発揮してきた三嶋社長の挑戦に、これからも注目していきたい。