『チョコエッグ』『セコイヤチョコレート』『生クリームチョコ』…
ロングセラー商品を生み出す秘訣とは
フルタ製菓株式会社 代表取締役社長 古田 盛彦
2017年4月で65周年を迎える製菓メーカー、フルタ製菓株式会社。『チョコエッグ』『セコイヤチョコレート』『生クリームチョコ』といったヒット商品を中心に、クッキーやキャンディーといった幅広い商品群を展開しているほか、業務用チョコレートのパイオニア企業としての一面も持っている。新たなステージへの準備を進めている同社代表取締役社長、古田盛彦氏のインタビューを通じ、今後の戦略やロングセラーを生み出すフルタ製菓の強さに迫る。
古田 盛彦(ふるた もりひこ)/1962年大阪生まれ。関西大学経済学部卒業。1988年フルタ製菓株式会社に入社。常務・副社長を経て、2012年に代表取締役社長就任。「変化」「挑戦」「創造」の3つのキーワードを堅持し、いつも新たな気持ちでさらなる向上を目指している。
65周年を迎え、生産力アップを目指す
-御社の事業内容についてお教えください。
古田 盛彦:
弊社はお菓子の製造販売を行っておりますが、その中でも特にチョコレート、焼き菓子、ビスケットに注力して商品を展開しております。北海道から九州まで支店・出張所があり、販売網は全国をカバーしているほか、2011年からは上海にも販売拠点を作り、海外展開を開始しています。創業は1952年ですので、来期(2017年4月~2018年3月)の決算期で、65周年を迎えます。
弊社は私の父とその兄弟達3人で創業した会社でした。創業時は焼き菓子を製造していましたが、当時の日本では、チョコレートという商品が先進的なものとして人気を誇っていたということもあり、メイン商品をチョコレートに切り替えたのです。そこからはチョコレートを中心に様々な商品を展開していき、今日まで順調に成長を続けております。
-創業65周年に向けての取り組みをお教えください。
古田 盛彦:
売上目標を200億円超に設定いたしました。その目標に向けて、今後様々な取り組みを展開して参ります。弊社は業務用チョコレートのパイオニア企業でもあります。この分野も現在非常に好調ですので、更に商品群を充実させていく予定です。そのためにも、2015年に立ちあげた平尾工場(大阪府堺市)の稼働率を上げたいと考えており、この工場での業務用チョコレートの生産も強化していくつもりです。また、今後新しいブランドの立ち上げも検討しています。
“前向きな気持ち”を持ち続ければ、道は拓ける
-事業を進めていく中で、困難に直面したことはございましたか?
古田 盛彦:
弊社では2010年から中国法人を立ち上げるプロジェクトを進めておりまして、2011年の2月に法人化を実現することができました。しかし、その年の3月に東日本大震災が起きてしまい、日本からの輸出が止まってしまったのです。当時、上海の法人は販社としてスタートしていたものの、販売する商品が入ってこないという状況でした。しかし、なんとかして事業を続けていかなくてはならないということで、自社の商品に限らず、仕入れられるものは仕入れて販売していくという方針に急遽転換しました。日本から輸入することができなければ、現地で生産をしていこうかという案もあり、とにかく様々な方法を模索しながら経営を続けたのです。幸いにして1年程経ち、日本からの輸出が解除され、商品が届くようになりました。2012年4月くらいからは、少しずつ業績が数字として残るようになりましたね。
-その当時、社長や社員の方々はどのようなお気持ちだったのでしょうか?
古田 盛彦:
前を向いて進んでいけば、必ず道は開けると思っていました。当時、大変だったのは弊社だけではありません。日本中の企業が厳しい状況にありました。みなさんが同じように問題を抱えながら頑張っていらっしゃった時期でしたので、何としてでも乗り越えていかなければと思い、試行錯誤しながら事業を進めていきました。前向きな気持ちを持ち続けるということは、非常に重要なことですね。
ナンバーワン商品を活かした販売戦略
-御社の強みについてお聞かせください。
古田 盛彦:
商品は売り場によって様々なカテゴリー分けがなされます。チョコレートなら、『生クリームチョコ』など袋に入っている個数が多い商品はファミリーパックというカテゴリー、『セコイヤチョコレート』のような昔で言うところの駄菓子に当たるチョコレート商品は、ポケチョコという分け方をされます。弊社は幸いにして、カテゴリー内で有力な商品を複数持っています。そういう商品群というのは、営業で商談をする上での強みになるのです。
プレゼンテーションの仕方も工夫をすることが大切です。例えば流通向けにプレゼンテーションをする上でも「キャンディトイの中での主力商品は『チョコエッグ』である」、「ファミリーパックカテゴリーでのナンバーワンは『生クリームチョコ』」、「ポケチョコカテゴリーで『セコイヤチョコレート』はロングセラー商品であり常に上位に位置している」、そして「今後焼き菓子の分野でもナンバーワンを狙っていく」という「4本柱」を意識して行うよう、社員たちには伝えています。そうすることで、それぞれのカテゴリーにおける弊社の商品が持つ存在感をアピールしやすくなりますし、説明する側の弊社社員にとっても、自信を持てるようなプレゼンテーションの切り口になると思います。
また、ナンバーワン商品などをきっかけにして、別商品を商談の舞台に引き上げることもできます。そのようなチャンスを増やせる良い循環が出来ているということは、私どもにとっては非常に有難いことですね。
-そういった様々なナンバーワン商品を作り出す御社は、どのような社風なのでしょうか?
古田 盛彦:
トップ層と実際に仕事をする社員との距離感が非常に近いのが特徴です。会長室や社長室といった部屋も特別にございません。ほかの社員たちと同じように、部門ごとに籍を置いて、同じ視線で仕事をしています。ですので、現場の声も通りやすい環境になっていると言えます。風通しのよい組織風土を作ることは、情報をスムーズに伝えるためには欠かせないことです。決められた期間の中で成果を出すためには、意思決定のスピードを速くしなければなりません。その決断材料となる様々な情報が滞りなく流れるということは、非常に重要なのです。
小さな改善点を逃さない工夫
-御社では食品の安心安全に関する取り組みも積極的に行っていらっしゃるとのことですが、具体的にはどのようなことをされているのでしょうか?
古田 盛彦:
現在多くの食品企業がISOまたはFSSC22000という食品の安心安全に関する認証を取得しています。もちろん弊社もこれらの認証を受けており、取り組みの一環としては、10年以上前から続けている生産現場の改善活動があります。
以前、10人程で1つのチームを作り、一番多く改善点を出したチームを発表会の場で表彰するという取り組みを行っておりました。改善点は効果の大きさには関係なく、小さなことでも構わないので、とにかく数を出してもらうということが重要です。この取り組みを何年間か続けていったことで、工場現場の意識改善を行うことができ、ISOなどのマネジメントシステムに繋がっていったのです。現在でも工場現場の意識改善の取り組みは、この仕組みの名残を残しております。改善点を挙げてもらい、是正した後は改善前と後の写真を掲示しておくなど、社員の目に触れるような取り組みを続けています。
人材に求める肝となる要素
-社長がお考えになる優秀な人材、求める人物像についてお考えをお聞かせください。
古田 盛彦:
全体の目標を自分自身のタスクや目標に落とし込み、段階を設定し行動プランを立てられるということが肝心だと思います。それに加えて、やはり人間、生きていく中では良いこともあれば悪いこともありますので、前向きな気持ちを持てるかどうかというのは非常に重要になってくると思います。弊社に入社後も、その意志を持ち続けていけるかどうかということを、私は採用試験で見させて頂いております。
また現在、今後どのように世界が変わっていくのか、予測をすることも難しい時代です。しかし、そのような混沌とした情勢の中でも、我々は結果を残さなくてはなりません。菓子業界における今後の事業戦略の傾向としては、食品の安心安全と品質のレベルアップ、そして海外に市場を開拓していくという3つの動向に集約されます。ですので、こういった業界の流れを見据えて行動を起こせるような方を求めていますね。
編集後記
フルタ製菓の商品はロングセラーかつカテゴリー上位の商品が多く、幼いころから親しんできたという人も多いのではないだろうか。幼い頃の記憶と密接に結びついているお菓子の味というのは、ふとしたときに思い出し、社長が仰っていた「常に前を向いて進み続ける気持ち」に似た、懐かしくも力強い気持ちが湧いてくるものだ。こうした同社の精神が、今なお愛され続ける多くの商品を生み出しているのだろうと思った。