光学機器市場は世界規模で拡大が続き、技術・品質をめぐる競争が激化している。

こうした中、長野県飯田市に本社を構える夏目光学株式会社は、半導体や通信、医療、航空、宇宙関連など、多くの分野で使用される高性能光学素子の開発・製造で知られる。

大手メーカーも参入している業界内で、独自の存在感を放つ夏目光学の細江社長に、自社の強みや社員に求める人物像、今後の経営ビジョンなどをうかがった。

-初めに、創業の経緯について教えてください。

細江社長
弊社は1947年、初代の夏目哲三が「飯田製作所」として創業しました。
創業者は長岡工業高等学校(現:新潟大学工学部)で精密工学を学んだ後、海軍で技術を修得し、戦後の荒廃した社会でメッキ業を始めました。
家族を養うため、自転車修理や塗装など幅広い仕事に挑戦し、地域の生活向上に尽力していました。

その後、オリンパス株式会社に弊社のメッキ電源を譲る代わりに、レンズ研磨機を頂く機会がありました。
これが転機となり、光学レンズを磨く技術を高めてレンズ製造業へと進出しました。
その後も多岐にわたる製品製造において成長を続けていきました。
今でも創業者のビジョンと情熱は会社の基盤となっています。

1980年の技術展で「信州の面白いレンズ屋」と評判に

-貴社の製品が広く受け入れられたきっかけは何でしたか。

細江社長
1970年代には、双眼鏡などの接眼レンズでトップシェアを誇っていましたが、1980年代からエレクトロニクスやレーザー分野にも進出し、多種多様なレンズを提供できる体制を整えました。

転機は1980年、東京の科学技術館で開かれた「80センサー技術展」に出展したところ、多種多様なレンズを取り揃えていたことや、創業者の人柄から「信州に面白いレンズ屋がある」と業界内で大きな評判を呼びました。

技術展の影響で認知が拡大したことに加えて、いただいたご依頼に高い技術力で応えることで、大きな信頼も獲得することができました。
例えば当時、世界初のCDプレーヤーのピックアップレンズを供給するようになり、また半導体露光装置と呼ばれる、半導体製造に使用する装置も黎明期から高い精度で提供し続けています。
現在も、私たちは半導体製造装置をはじめとする最先端の産業分野で重要な役割を果たし、高度な技術力と信頼性を誇っています。

レンズの設計から製造まで一貫して行うことで、多様なニーズに応え、高品質な光学部品を提供しています。

世界トップレベルの研磨技術にこだわり

-事業を継続される中で、特に強いこだわりがある点はどこですか。

細江社長
弊社は、3つのこだわりを持っています。

1つ目は、世界トップレベルの研磨技術を究めることで、半導体露光装置やX線放射光施設などの産業・学術分野を支えていることです。

2つ目は、さまざまな産業分野で活用される、多様な形状のレンズを自社加工している点です。
研削・研磨工法で、多種多様なレンズを製造し、さらにそれらのレンズの組み合わせによって数十種類のレンズをつくることができます。
さらに、これらのレンズの品質を保証できる企業は世界でも稀で、弊社はそのような特徴を持つ10社に入るのではと自負しています。

3つ目のこだわりは、お客様の特別なニーズに応える姿勢です。
たとえ世の中にまだ存在しないレンズであっても、ご要望に合わせて新たな製品を開発・製造いたします。
そのために、必要とあれば測定器や加工機も自社で設計し、課題に合わせたソリューションを提供できる体制を整えています。
こうした取り組みにより、多くの信頼をいただいております。

これからもお客様とともに新たな可能性を追求し、光学技術の未来を切り拓いていきます。

-創業以来、技術力の向上や、新たな領域へのチャレンジ精神を大切にされているのですね。

細江社長
まさに、これまでの弊社の歩みは、幾多の挑戦を重ねてきた歴史そのものです。
困難な壁を突破するための武器は、光技術と製造技術の高さです。
「すべては未来をつくる一歩のために。」という企業理念を基に、社員一人ひとりが積極的に仕事に臨んでいます。

粘り強い開発姿勢と挑戦する意欲は、弊社の業績にも表れています。
1990年代から2000年代初めにかけての「失われた10年」の間にも業績向上し続けました。
また、リーマンショックとコロナ禍に多くの企業が経営危機に陥るなか、弊社はこの危機を乗り切り、今でも高品質のサービス提供に取り組んでいます。
これから新たな苦難に直面しても、弊社に関わるすべての人たちとともに乗り越えられる存在でありたいと考えています。

さまざまな業界やニーズに対応し、高品質を実現

-将来有望な光学機器市場には大企業も参入していますが、貴社ならではの強みをお聞かせください。

細江社長
さまざまな業界やニーズに対応するため、測定器や加工機などを内製できることが、最大の強みの一つだと考えております。
そして、すべての工程を社内で一本化して行えるところが、競争力の高さを生み出していると思います。

また、弊社はチップメーカーや半導体装置メーカーなどの顧客企業に向けて直接、間接的に光学素子をを提供しています。
半導体露光装置には黎明期から関わっており、お客様が求める厳格な仕様に対応するための技術蓄積やノウハウ、経験を重ねてきました。
要求される仕様に応じた測定器を活用し、お客様のプロジェクトに適切な初期評価とフィードバックを提供できることも強みです。

こうした実績により、お客様からのご相談をいただく機会が多く生まれ、今後ますます増えていくと予想しております。

謙虚さと行動力を持ち、粘り強く挑戦できる若者を歓迎

-視点を変えて、採用に関する質問です。貴社が求める社員の人材像について教えてください。

細江社長
自発的に行動し、感謝の気持ちを持つ人材を求めています。
私たちの企業理念に共感し、情熱と好奇心を持ち、失敗を恐れず粘り強く挑戦を続ける姿勢を持つことが大切だと考えています。

さらに、謙虚さと行動力を兼ね備え、課題を解決する力を持つことが理想です。
前向きな態度で周囲や他者に良い影響を与えたり、巻き込みながらリーダーシップを発揮できる人材を歓迎します。

夏目光学の理念に共感し、共に成長できる方を心からお待ちしています。

-貴社に就職した場合、どのような働きがいを感じられますか。

細江社長
光の世界はまだまだ黎明期ですが、だからこそ、光技術が切り拓く未来を存分に追求することができます。
弊社が長年にわたり培ってきた独自の技術を駆使し、柔軟な発想で新しい価値の提供に挑戦することも可能で、企業や社会の課題解決に取り組むこともできます。

「困ったときは夏目光学に相談したい」「あのときに相談して良かった」と言ってくださるお客様も多くいらっしゃいます。
そのような声をお聞きすることで、喜びと達成感、新しいものを創り出す楽しさを味わえることも大きな働きがいに結び付くと考えております。

半導体、X線光学、宇宙関連など様々な分野への技術提供に注力

-最後に、貴社が描く今後の経営ビジョンをお聞かせください。

細江社長
自社の強みをさらに強化し、できることの幅を広げていくこと。
そして、そこへ向けた実行力を高めていくことが重要だと認識しております。

そのためには、強いものづくり力と現場力が不可欠で、間接部門も充実させていかなければなりません。
企業理念に共感し、それを体現できる人材の育成を図りながら、世の中から必要とされる持続的な経営を実現していきます。

また、幅広い産業に対して独自の技術を提供し、特に半導体、X線光学系、宇宙関連分野など様々な産業分野に力を注いでいく考えです。
更に、世の中のニーズに応えるため、光学設計からユニットまでのソリューションを強化提供し、夏目光学だからこそ発揮できる技術を増やしていきます。

会社全体で一致団結し、より多くの産業分野で成長を続けていくことが目標です。