株式会社アイル

社長が午後退社で会社が成長!? アイル流経営メソッドの全貌


株式会社アイル 代表取締役社長 岩本 哲夫

※本ページ内の情報は2017年2月時点のものです。

中堅・中小企業向け販売・在庫管理システムなどの開発・販売を行う株式会社アイル。同社の強みは「リアル」と「Web」の両面からのアプローチ。独自の「CROSS-OVER シナジー戦略」を提唱し、再契約率98%以上、6,500社以上の顧客を有する。

社員教育にも力を注ぐ代表取締役社長の岩本哲夫氏は、昼までで帰宅するなどのオリジナルメソッドが注目を集めている。今回は創業の経緯や人材マネジメント、今後の展望などについて伺った。

岩本哲夫(いわもと てつお)/1955年大阪府生まれ。日本大学商学部卒業後、株式会社大塚商会に入社。販売管理システムの営業を担当し、トップセールスを達成する。その後マネージャー職などを務め、1990年に退職。1991年に株式会社アイルを設立し、代表取締役社長に就任。株式会社アイル並びに岩本自身を取材し、まとめられた書籍に「創発経営 - アイルの常識は業界の非常識 -」 (著者:鶴蒔靖夫)がある。

自ら道を切り開く

-前職について教えてください。

岩本 哲夫:
私は元々大塚商会に勤務していました。大学時代は音楽活動をしており、就職活動もあまりしていなかったのですが、友人に誘われて受けた大塚商会に入社することになりました。機械には強くありませんでしたが、システム担当となり、営業をしていました。しかし営業活動はどこか音楽のライブに似ている感覚があり、やっていくうちにトップセールスを記録するまでになりました。営業を5年、その後はリーダーやマネージャーなどの職に就き、約12年在籍していました。

-独立しようと思われたきっかけは何だったのでしょうか?

岩本 哲夫:
定年まで会社勤めをしていた人は、会社員体質でサラリーマン向きなのだと思い ますが、私の場合はお客様から「君はずっとサラリーマンのタイプではないから、若いうちに独立した方がいいと思うよ」と言われることがありました。

家のローンもあるし、やはり会社に留まろうという思いもあったのですが、周りからも独立の方向にどんどん導かれたという感覚もありましたね。会社員だと転勤などもありますので、当時の部下たちと同じ環境で仕事をしたいという思い、さらに上からの指示で動くのではなく、自分の道は自分で切り開きたいという思いもありました。

当時は中間管理職でしたので、仕事だけに集中できないという面もあり、さまざまな要因が重なって独立するという決断に至りました。

-創業時のことについてお聞かせいただけますか?

岩本 哲夫:
創業時は営業の人間5名のみでスタートしました。私どものようなSIer、つまりシステムインテグレーションを行う会社では、技術者(SE)が絶対に必要なのですが、営業部隊しかいなかったのです。例えて言うなら、お医者さんのいない病院のような状態です。

そこで、一番若手の社員に教育を受けてもらい、SEになってもらうことにしました。当時、富士通の販売管理のソフトを販売していましたので、富士通のSEの方にもバックアップしていただきました。

売り上げも順調に伸び、5億円に達したところで、3年間伸び悩む足踏み状態が続いたことがありました。その時、私は午後から帰宅するということをしました。メンバーに任せたところ、また売り上げが上がり始めたのです。その後、リーマンショック時を除いて、ずっと右肩上がりを維持しています。やはり上の者が何から何まで口出しをしていては駄目で、我慢も大事だということを学びましたね。今でも出社するのは午前のみです。

急速に変化する世の中に対応するために

-改めて御社の事業内容について教えてください。

岩本 哲夫:
様々な業種の企業の情報システムの企画や運用、保守などを一貫して行うシステムインテグレーター(以下、SIer)です。私どもの強みは、WEBと基幹の両方のシステムを1社で対応できるという点です。WEBを活用した業務管理(ネットショップの構築・管理など)や販促支援と、基幹システムの提供、さらに両システムの連携といった、WEBとリアルのクロスオーバー(交差)技術はオンリーワンだと自負しております。ニーズを汲み取る提案力と高い分析力で、市場の変化に対応したサービスを提供しています。

-事業展開にあたって、社長が大切にされていることは何でしょうか?

岩本 哲夫:
スタッフには常に「物事の本質を見る」ように言っています。あらゆる情報があふれていますが、それに振り回されずに根本的な部分で本質を見抜くということです。先ほどお話ししたクロスオーバー戦略も、将来必要になると創業当時から構想していた内容です。

実は子どもの頃、実家が氷屋をしていました。ちょうど電気冷蔵庫が発売になった時、家族会議がありました。そんなにすぐに世の中は変わらないと話していましたが、実際はあっというまに世間が変わって倒産しました。世の中の流れはとても速いので、その流れを見る力が必要です。流行を追うのではなく、創るということも常に意識しています。

大量生産大量消費の時代から、本質的な価値を重視するようになり、知識・情報型の時代に変わりましたが、インターネットの普及でそれはさらに加速しました。今や物はネットで買う時代です。そこで当社のWEBとリアルのクロスオーバーもより 浸透するのではと思っています。

-他にも大切にされていることはありますか?

岩本 哲夫:
弊社はお客様の業務に合わせた最適なシステムの提案が強みですので、お客様の声を聞くことが基本です。ですが、声を聞くだけではいけません。決して押しつけはしませんが、私どもとお客様の50:50の理論を大切にしています。

海外のホテルの経営者が、日本のホテルに「おもてなしとはどんなものですか?」と聞いた時の話です。日本側は、お客様と従業員は縦の関係ではなく50:50だけれど、実際は60:40ぐらいでこちらが主導権を握り、お客様に言われたことをするのではなく、お客さまが喜ぶことを察知して、準備しておくことだと答えたそうです。

弊社でも実際は60:40ぐらいで、お客様にシステム提案をしており、その提案が差別化にもつながっていると感じています。

情報は徹底的にオープンにする

月報会議の様子。

-人材マネジメントのこだわりについてお聞かせ下さい。

岩本 哲夫:
創業時から月1回の月報会議を行っています。市場の動きや会社としてのスタンスなどを事細かく毎月確認し、書面に残しています。情報はガラス張りで、当会議で全社員に共有します。部署ごとに何を進めているかもすべて記録することで他部署が何をしているかも全員が把握できます。もちろん課題や失敗も共有しますし、経費や利益、還元率なども公開しています。

その他にも、会社のビジョンについては熱く語ることを大切にしています。ビジョンの共有、皆の方向性が統一されることで一体感も生まれ、展開も早いし、軸がぶれることもありません。皆が同じ方向を向いている組織は強いと思います。

また、「無駄の合理性」という概念も重視しています。 一見無駄と思えることも必要なのです。社長会食という会もあります。毎月、優秀な成績を収めた人を料亭に招いて会食をします。皆はじめは緊張しますが、社長と密接な距離で会話できる上、 毎回大爆笑の会なので、楽しみにしてくれている社員も多いようです。

-御社の採用の特徴について教えてください。

岩本哲夫:
採用に関しては直感を大切にしています。学歴よりも人間力、生きる力や、心の強い人を重視します。

企業セミナーでは、90分ほど私が会社のビジョンなどについて熱く語ります。なかなか語り切れませんが、思いが伝わっているのか、非常に熱心なエントリーシートが多いように感じます。エントリーのうち6割が面接希望で、4割は辞退というのが平均らしいですが、弊社の場合は99%が面接希望です。志望度も高いと思います。

社員全員が「プチ社長」

-今後の展望についてお聞かせください。

岩本 哲夫:
今後の目標としては、クロスオーバー戦略を浸透させたいということと、業界でトップになることです。利益率の高い会社にしたいですね。また、労働集約型ではない仕組みづくりを推進したいと考えています。現在、就労時間は柔軟な選択を可能 にしており、早朝に出勤して15時半に帰るなどを実践している社員もいます。

弊社では、社員が直接私にメールを送れる仕組みがあります。もちろん全員に返事をしていますが、例えばお昼休憩が12時からだと飲食店に行列ができるので、11時45分からにしてほしいとの要望があり、すぐに役員会議にかけてOKにしました。今では服装も自由になっています。

現場の意見をどんどんくみ上げ、皆がプチ社長として会社の仕組みを作っています。弊社は直近3年間における産休後の復職率も100%です。やはり自由な空気だと、社内の雰囲気も明るくて良いですよね。

また労働集約の脱却という点では、新しいソフトを2017年中にリリース予定です。 カスタマイズ作業を大幅に減らすことができ、生産性の向上につながります。他にもさまざまな仕組みづくりを着々と進めているところです。

-岩本社長の夢を教えてください。

岩本 哲夫:
アイルをもっと有名にすることです。クロスオーバーといえばアイルと言われるようになりたいですね。日本で一番高い山は富士山というのは皆が答えられますが、2番目の山の名前は言えない人が多いです。やはり一番にならないといけません。看板やCMなどという方法もありますが、あくまで市場での口コミが大切だと考えています。

個人的には、ミュージシャンとしてひと花咲かせたいです。先日昔の仲間とライブをして、そう思いましたね。

編集後記

昼までで帰宅するがビジョンは熱く語るなど、以前ラジオで対談したという藤沢久美氏の人気書籍『最高のリーダーは何もしない―内向型人間が最強のチームをつくる!』のリーダー像とも共通する 岩本社長。同社はこれからもそのビジョンによって、さらに強い組織となっていくことだろう。