がんこフードサービス株式会社

より良い会社づくりのために―100年企業を目指して


がんこフードサービス株式会社 代表取締役社長 東川 浩之

※本ページ内の情報は2016年12月現在のものです。

関西圏で外食チェーンを運営する「がんこフードサービス株式会社」は、1963年創業の歴史ある企業だ。和食を中心に、寿司やとんかつを提供し、昨今の和食ブームも手伝って順調に成長している。2013年に社長に就任した東川社長は、元々は「がんこフードサービス」のいち社員にすぎなかった。

そんな東川社長がどのようなキャリアを積んで社長に就任されたのか、そして今、社長として企業を育てる上でどんな思いを抱いているのか、インタビューを通じて紹介したい。

東川 浩之(とがわ ひろゆき)/関西圏を中心に90店舗以上の和食店を展開。料理、店舗の設え、そしておもてなしに本物主義を掲げ、より多くの方々に和の文化を味わいご満足いただけるよう『旨くて安い』をモットーに取り組む。歴史ある建物を活用した『お屋敷シリーズ』の店舗では、料亭さながらのロケーションで調理師の技、着物接客のおもてなしを楽しめると外国人観光客の方々から評価を得ている。

社長就任までのキャリアヒストリー

―入社からこれまで、どのようなキャリアを積んでこられたのでしょうか。
 
東川 浩之:
「がんこフードサービス」に入社したのは1979年、今から37年前のことでした。当時、当社は10店舗ほどの会社で、第一印象は「聞いた事ないな」というもの。ですが、いずれは自分で飲食店を出したいという思いもあり、小資本で開業できて安価に提供できる炉端焼きに関心があって面接を受けに行きました。正直なところ初めは、5、6年修行させてもらおう、という軽い気持ちでした。

その面接会場で、当社の創業者で現在の会長、そして当時は社長であった小嶋淳司と初めて会ったのです。1回目の面接は30分ほどで終わったのですが、2回目の面接は2時間30分にもおよび、そのうち2時間15分は社長の話でした。若者の気持ちからすると「もう分かったよ」というのが率直な感想でしたよ。

その後も何社か飲食関係の企業を受けたのですが、最終的には「がんこフードサービス」への入社を決めました。やはり、わざわざ社長が出てきて熱い思いを語ってくれたという事に一番惹かれましたね。

入社5年目の時に、社長に呼ばれ「東川くん、君2ヶ月後からホテルで働いてくれ」と言われました。宴会場や大人数の従業員を抱えた新規事業への参入を見据えて、私にホテルで修行をしてきてほしいということでした。驚きましたが、出向支配人という形でリニューアルオープンする新大阪のホテルで働くことになりました。そして1年間が経って会社に戻ると、今度は「1週間東京に行って、これらの飲食店を視察してきてくれ」という指示を受け、だいたい30店舗くらいを回りましたね。

視察を終えて大阪に戻ると、京都・三条に出店する100坪超、計5フロアの大型店に、支配人として配属されることになりました。小嶋会長から、「君に1年前からホテルでの修行や視察を経験してもらっていたのは、この人事のためだったんだ」と言われたときには、とても感動しましたね。私は小嶋淳司という人に惚れ込んでしまい、「この人について行こう」心に決めました。おそらく、人に惚れるという経験はその時が初めてでしたね。

30代から50代にかけては、営業SV、営業次長、営業本部長、常務、専務というキャリアを積んできました。振り返ると、入社からずっとお店の営業のライン上一本で仕事をしてきた事になります。ずっと「人」を相手に仕事をしてきたので、それは自分にとって一番の財産であるように思いますね。

その後、営業本部長兼副社長という立場になり、平成25年の10月に社長に就任し、今年で丸3年が経ちました。飲食業は客数・売上・利益の源は全てお店ですから、営業一本で積んできた私のキャリアが活かせるだろうと思い、社長就任の打診をお受けしました。

―働く中で、いつか社長になりたいという将来像は描いていたのでしょうか。

東川 浩之:
初めから社長になるために頑張ってきた訳ではありません。昔から心がけているのは、目の前の仕事に一生懸命取り組みながら、少し先を見据えることです。そもそも今の世の中、5年10年先はおろか、1年先ですら見通せない状況ですから。

ただ、たとえ1年先が見通せなくても、「1年後にこうなっていたい」とか、自分なりのポリシーは持っていました。そして、目の前の仕事に一生懸命取り組んできましたね。

人を育てる―「活人」の考え方を受け継いで

―小嶋会長への憧れや、学んだことはやはり大きいのでしょうか。

東川 浩之:
それは大きいですね。会長の座右の銘に「活人」という言葉がありますが、これには「人を活かす」と「人に活かされる」という2つの意味があり、自分としても大切にしている考え方です。

誰かを育てようと思ったら、その人にお金も時間も資源もとことん賭けるようにしています。当然、失敗する可能性もあります。ですが若いころの私に社長だった小嶋が賭けてくれたことはとても嬉しく、その後のキャリアにもつながりました。もちろん、葛藤も少しはあります。もし私が小嶋の立場だったら、当時の私にそれだけ賭けてやれるだろうかと。でも「人に惚れてもらう」ことも、人を育てる上で大切なことだと思ってやっています。それこそが「活人」の考え方です。

100年企業を目指すための3つの戦略

―現在、社長として、どんな会社を目指そうとお考えでしょうか。
 
東川 浩之:
私が社長に就任した平成25年は、当社の創業50周年の年でした。そこで「100年企業を目指そう」という長期的スローガンを掲げました。簡単なことではありませんが、将来的に定年の年齢が引き上げられれば、現在の新入社員は現役で創業100周年を迎えることができるでしょう。遠い未来の話ではないのだから、一緒に頑張ろうと訴えかけています。

実際のコンテストの様子。

―100年企業を目指すにあたって、具体的な戦略はあるのでしょうか。

東川 浩之:
戦略は3つあります。1つ目は「自分たちのブランド力を高めよ」。「自分」とは、個々の社員を指します。2つ目は「チェーン店でありながらもチェーン店らしからぬお店を提案しよう」。そして3つ目は「技術力を高めよ」です。

1つ目の「自分たちのブランド力を高めよ」ですが、私の考える「ブランド力」とは、「多くの人に支持されること」です。では、それを高めるためにはどうしたら良いか。重要なのは、今流行っている事、人気のあるものに目を向けて体感する努力です。自分たちが属する外食産業については、特によく知っておく必要がありますね。私は他社で新しいメニューが発売されたら、業務外でも必ず体感しに行きますし、20年前から食事は三食すべて外食で、毎日いろいろと食べ比べています。

やはり外食産業にいるからには、食事には使命感をもって意識を向けてほしいと思っています。また業界は違いますが、百貨店を数時間歩いて、客層や流行を観察することもあります。年齢が上がるにつれ、人気のあるものや流行に興味を持たない社員が多いことはとても残念です。大衆の好みを自分の目で知り、体感し、ヒントを得る。それを繰り返さないと、絶対に人間としての幅は広がって行かないと考えています。

3つ目の「技術力を高めよ」を実現するために、毎年社内でコンテストを開いています。調理の腕を競う部門、接客のレベルを競う部門、社員・アルバイト・パート含めすべての従業員がエントリー可能です。

―アルバイトやパートというと、ある程度「お金のため」と割り切って働いている印象がありますが、そのようなコンテストがあればモチベーションも上がりそうですね。

東川 浩之:
それはあると思いますね。当社は2年ほど前からアルバイト社員すべてに機会を与える取り組みをしていて、実際にアルバイトで女将を担当している人もいます。

今お話ししたコンテストのほかに、QC(クオリティコントロール:品質管理)大会も開催しています。当社は飲食業としては30年ほど前からいち早くQCの考え方を採用していて、実は社内で一番初めに取り組むことになったのが私でした。

この大会に参加してくれる従業員のいる店舗は、売上成績が良いのが特長です。QCの考え方の基本「自ら率先して行う」にもある通り、そういった従業員は仕事に対してとても前向きだからです。もちろん、従業員をマネジメントする店長も優秀と言えるでしょう。

次代を担う若い社員に向けて伝えたいこと

―100年企業を担う若い社員については、どのような印象をお持ちですか。

東川 浩之:
今の若い社員について思うのは、まじめさや勤勉さはある程度普遍的なもので備わっているとして、どうも「平均」を求めすぎているように思います。たとえば、「社長を目指そう」「年収1,000万円を目指そう」という目標にはあまり関心がなく、「そんなことは一握りの特別な人が達成できることで、私たちは平均でいい」という姿勢をとる。平均でいいから、初めから500万の年収が欲しい、と言ったような(笑)。

そんな若い社員が多いので、少し寂しい気もするし、実は彼らが求めている「平均」が、社内の平均を少し上回っているのも気になりますね。幸せになりたいという気持ちは誰もが持っていて、その方法は様々でしょう。お金を稼ぐ事を最大の目的にする人、家族の愛を最重要視する人。それぞれ価値観は違いますが、男女とも働く上では少しでも上を目指す気持ちでいてほしいという思いはあります。

―「平均」を求める傾向ということですが、どのような姿勢で仕事に取り組むのが望ましいのでしょうか。

東川 浩之:
初めから大きな目標を立てる必要はありません。まずは目の前の仕事に最善・最良を尽くすことです。それを続けていると、たとえば対立する上司が現れた際にも自信をもって自分の意見を述べられるでしょう。もし最善・最良を尽くしていなければ、上司に意見することはもちろん、自分が上司になったときに部下との信頼関係を構築する事も難しくなってしまいます。

また、プライベートな時間の過ごし方も大切です。例えば、接客コンテストで勝ち進む従業員は、自宅でもさまざまな接客場面をイメージトレーニングしているので、本番でも遺憾なく実力を発揮できます。そのような努力なしに、良い成果を得ることはあり得ません。

自分の目の前の業務に全力を尽くすこと、そして少し先の目標を立てて努力する事。それこそが人間の幅を広げる上で非常に重要であると思います。その努力は自信に結びつきますから、たとえ仕事の場面でなくても、家族から頼りにされる存在になったり、あるいは異性から好意を抱かれる要素にもなったりという事に繋がると思いますよ。

編集後記

インタビューを通じて特に印象的だったのは、東川社長が「常に目の前の仕事に一生懸命に取り組んできた」ということだった。働く上で、数年あるいは数十年先のキャリアビジョンを描くよう言われることは多いが、混沌とした世の中で先に迷う人も多いだろう。だが、大切なのは、今取り組んでいる仕事に全力を尽くすことなのだと改めて実感させられる。東川社長が今の立場にあるのはその努力の積み重ねであり、会社も同じように100年企業へと向かって進んで行くことだろう。