※本ページ内の情報は2026年9月時点のものです。

少子高齢化が急速に進む日本において、医療や介護現場を支える用品の需要は右肩上がりだ。ドラッグストアや行政、高齢者向けの介護施設を主要顧客に据える白十字販売株式会社は、自社製品と他社製品を組み合わせた柔軟な提案力を武器に、医療と介護の両輪で成長を続ける。ドラッグストアの再編や原油高といった業界の荒波に揉まれる中、長年培ってきた「お客様からの信頼」こそが同社の揺るぎない基盤である。

その伝統を受け継ぎながらも、組織のトップとして人事評価制度の刷新や環境に配慮した循環型商品の開発など、時代のニーズに合わせた変革を推し進めるのが、代表取締役社長の國米正裕氏だ。本記事では、これまでのキャリアで培った知見を活かした改革の歩みや、従業員満足度の向上にかける熱い思い、そして次世代を見据えた事業展望について迫った。

大企業での10年の経理経験を糧に挑んだ独自の原価計算システム開発

ーーまずは、これまでのご経歴についてお聞かせください。

國米正裕:
白十字に入社する前は株式会社東芝で経理を担当し、原価管理や連結決算などの業務を行っていました。もともと新卒で入社した際は、「時代の最先端を切り開いている技術を持つ総合電機メーカーで、さまざまな経験を積もう」と考えていました。しかし、叔父から「今後のことを考えて入ってくれないか」と強く説得されたことが転機となりました。やはり自身の家族が築いてきた会社ですから、その思いに応えたいと決心し、白十字への入社を決めたのです。大企業から一転して環境が大きく変わったため、入社当初は少しギャップを感じる部分もありましたね。

ーー白十字に入社されてからはどのような業務に携わっていらっしゃったのですか。

國米正裕:
私が入社した頃は原価計算のシステムがなかったので、工場に頻繁に赴き、システム会社や経営コンサルタントの方に協力してもらって新しい原価計算システムや、営業部門向けに値引システムをつくりました。弊社では代理店に対し、まず標準価格で販売し、翌月に値引きをして価格調整を行っています。当時使用していたシステムでは最終的に総額でいくらマイナスになったかしかわからず、個別の販売価格を把握できていませんでした。かといって、販売価格をすべて手入力で打ち込むのは非効率なので、エクセルでデータをつくって簡単に入力できるシステムの開発に取り組みました。

システムをつくり始めたときは、作業の手間が増えると反発の声も多かったですし、どうせできないだろうと言われました。しかし、試行錯誤しながら値引システムを完成させたことで、製品別にいくら値引きしたかが把握しやすくなりました。

組織の文化を変えた営業改革と5年がかりのISO取得

ーーその後はどのようなキャリアを歩まれましたか。

國米正裕:
経理部の後は社長室や管理本部などを転々とし、営業本部西日本統括を担当しました。当時、西日本は少し業績が縮小気味でしたので、関西と九州の営業所を集めた西日本会議の場で、業績向上に向けた意識改革を行いました。それまでは組織内で数字を意識して競い合う文化があまりなかったのですが、「ただ待つのではなく、自ら動く営業をしよう」と発信し、担当者全員で目標に向かって切磋琢磨するよう働きかけました。そうした取り組みを続けるうちに社員の意識が少しずつ変わり、組織の雰囲気が引き締まることで業績も徐々に上向いていきました。

そうしてさまざまな業務を経験したのち、11年前に白十字販売の社長へ就任し、現在は白十字株式会社の副社長も兼任しています。代表という立場になってからは、会社の顔として振る舞うことに慣れるまで時間がかかりましたね。

ーーこれまでのキャリアで、大きな転機となった出来事はありますか。

國米正裕:
ISOを取得したことは大きかったですね。当初は工場だけで取り組んでいたのですが、本社でも認証取得することになり、全体的な審査に臨むことにしたのです。私自身は全く知識がなかったものの、全社で業務改善や要求事項への対応を進めていきました。もともと社内には、公的な厳しい認証を突破してまで組織を改革するという文化がなかったため、調整には非常に苦労しました。しかし、5年ほどかけて取得に至ったことで、取引先様からの評価も高まり、結果的に顧客満足度の向上につながったと考えています。

医療と介護の2本柱を強みに挑む循環型製品への挑戦

ーー貴社の事業内容や、その強みについてお教えいただけますか。

國米正裕:
メインとなるお客様はドラッグストアや行政、高齢者向けの介護施設、病院売店であり、医療と介護の2つを柱としたトータルヘルスケアカンパニーとして事業を展開しています。超高齢社会がますます進む中で、シニア世代の方々や患者様の痛みや苦しみを少しでも和らげられる商品づくりに注力しているところです。

そうした中での弊社の強みは、メーカーではなく卸会社なので、白十字以外の商品も幅広く販売できる点にあります。売上ベースでいうと、白十字の商品が約5割、他社からの仕入れが約5割程度という割合です。お客様の要望に合わせてさまざまな商品をご提案でき、多くの方から頼りにしていただいていると自負しております。最近はドラッグストアの再編が相次ぎ、対応エリアを拡大する傾向にありますが、白十字は全国卸の協力を得て関東圏以外のエリアへの販売もカバーする体制です。このように時流に合わせて日々戦略を練り続けています。

ーー今後、國米社長が挑戦していきたいことはありますか。

國米正裕:
白十字にぜひやってもらいたいと提案しているのが、自然素材を使った紙おむつなど、環境に配慮した商品の開発です。介護用品などはどうしても使用後に焼却処理されることが多いのですが、それをなんとか循環型にできないかと模索中です。インドのグジャラート州にある「Saathi(サーティ)」という会社では、バナナ農家の方々が収穫の際に切り倒した木や竹などから抽出した繊維を使い、生理用ナプキンをつくっているそうです。自然素材でできているため肌にもやさしいですし、土に還る素材であれば、排泄物がついていても農家の肥料として活用できるのではないかと考えています。そうなればゴミ処理問題も改善できる、まさに循環型の商品だと注目しています。

既に研究段階には入っていて、現在は、実際にそうした循環が可能かどうかを検証するため、サンプルづくりを進めてもらうよう働きかけているところです。将来的には弊社も販売だけでなく、こうした社会に貢献できる商品づくりをしていきたいですね。

物流コストの削減とERP導入で挑む次世代の基盤づくり

ーー海外展開は視野に入れていらっしゃるのでしょうか。

國米正裕:
前々から海外へも販路を広げていきたいとは思ってはいるのですが、販売ルートがないのでなかなか手を付けられていないのが現状です。また、弊社の主力商品である紙おむつを輸出する場合、かさばってしまって運送コストが高くなるのがネックです。さらに、為替変動によって利益が大きく左右されるので、これもなかなか難しい課題ですね。

ーー貴社の今後の課題についてお聞かせください。

國米正裕:
医療品業界は業績が安定していると言われますが、ドラッグストアの統合や円安、原油価格の高騰などもあり、こちらから何らかの手を打たないと利益を出しにくい状況です。そのため物流にかかるコストを見直し、固定費の削減をしながら、販売拠点を増やして売上高拡大にも力を入れようと取り組んでいるところです。

また、基幹システムの見直しもしていきたいと考えています。現状、会計は単独でシステムを使い、人事給与計算などは別のシステムを使っているので、一元化できていないことが課題です。そのため、仕入や販売システムが稼働しているホストコンピューターからデータを転送する手間がかかることや、リアルタイムでデータが反映されないのが問題です。こうした課題を解消するため、ERP(※)を導入して情報を一元化し、効率的かつ正確な処理ができるようにしていきたいと思っています。

(※)ERP(Enterprise Resource Planning):企業の会計、人事、生産、物流、販売など、基幹となる多様な業務データを一元管理するシステム。

ーー医療現場において、新型コロナウイルスの影響で変化した部分はありましたか。

國米正裕:
感染の拡大によりお客様に会うことが困難になり、営業担当者は苦しい期間を過ごすことを強いられました。しかし感染が収束した後は、以前のようにただ商品を納品するだけでなく、営業担当者がより深く現場に入り込み、リアルなニーズを汲み取るようになりました。医療や介護の現場で何が求められているのか、どのような課題があるのかを直接ヒアリングし、「こういう商品があれば助かる」といった声を開発部門に持ち帰って新しい製品づくりにつなげています。

安定した賞与と360度評価の導入で目指す従業員満足度の向上

ーー従業員満足度の向上のために、何か取り組んでいることはありますか。

國米正裕:
弊社では退職金制度の改革を行い、企業が掛金を負担して従業員が年金資産を運用する確定拠出年金(企業型DC)を導入しています。職場つみたてNISAや職場iDeCoなども会社の制度として導入を検討して社員の資産形成を後押しできればと思っています。

また、個人で賃貸契約をしている社員に対して借上げ社宅制度を導入し、住居費の負担が軽くなることにより弊社で働くメリットを感じてもらえるようにしたいと思っています。このように社員が満足でき、かつ会社側の負担も少ない福利厚生を充実させていきたいですね。

ーー人事評価制度についてもお考えはありますか。

國米正裕:
人事評価制度をしっかりと整備し、透明性を高めていくことが今後の課題です。現在は「キャリアデザインシート」を活用し、自己申告制度を設けています。これは、1年に1回希望を出してもらって、それをもとに面談を行う仕組みです。

また、チャレンジシートを用いて自分で目標を立て、上司とすり合わせて点数をつける仕組みも導入しています。しかし、適正に評価されていないと感じている社員を出さないためにも、より分かりやすい評価基準が必要です。今後は上司が部下を評価するだけでなく、多角的な視点を取り入れるために、360度評価の仕組みも組み込んでいきたいと考えています。待遇面では、残業が少なく、多くても月10時間から20時間程度に収まっており、賞与も安定して5.3カ月分ほど支給できているため、社員が安心して長く働ける基盤は整っていると考えています。

ーー貴社ならではの組織の特徴や制度はありますか。

國米正裕:
特徴として、弊社では入社して短期間で辞める社員が少ないことが挙げられます。これは営業の責任者が各拠点を定期的に回り、一人ひとりとコミュニケーションをとっているのが大きいですね。直接上司に言えないことも彼には言いやすいはずですし、仕事に関する悩みを吐露しやすい環境ではないかなと思っています。

加えて、私自身も社員との関わりを大切にしています。2025年は各部署をすべて回り、社員と直接対話する機会を設けました。普段の業務では見えない和やかな雰囲気を感じられましたし、若い社員とも親しみやすくコミュニケーションをとることができました。こうした地道な交流が、組織の結束力につながっているのだと実感しています。

また、制度の面では、社員のライフステージに寄り添った柔軟な転勤制度を整えていることも特徴だと考えています。年齢を重ねるにつれて、結婚や介護など家庭の事情は変わってくるものです。以前は難しかった配置転換も、個人の状況をしっかりと把握し、全社的に柔軟に対応できる仕組みを整えています。一度退職して外の世界を見た後に、「やはりうちの会社がよい」と戻ってくる社員もたまにいるんですよ。外部を経験した社員が戻ってきて、後進を指導できる人材へと育ってくれることは、会社にとって非常に大きな財産です。

不変の信頼を礎に挑む情報発信と若手に贈る不屈の精神

ーー今後の展望について教えていただけますか。

國米正裕:
マーケティングやブランディングの強化は、今後さらに注力していきたい領域です。現状、弊社のホームページには商品の基本的な情報は掲載されていますが、今後はより実践的な内容を充実させていかなければなりません。たとえば、実際に商品を使用されたお客様の感想や、現場で働く社員の声などもWebサイトへ積極的に取り入れていきたいと考えています。現場の営業担当者がお客様から拾い上げたニーズを製品開発に活かし、その背景にあるストーリーをしっかりと外に向けて発信していくサイクルを構築したいと思っています。

ーー新しい取り組みを進める中で、変わらずに大切にしていることは何ですか。

國米正裕:
やはり軸をぶらすことなく、お客様からの信頼を第一に考え続けることです。私たちは医療や介護の現場を支える歴史ある会社ですので、新しいものを取り入れるのがそれほど得意ではない部分もありますが、だからといって他社の二番煎じになってはいけません。これまで築き上げてきた確かな品質へのこだわりと信頼をしっかりと守り抜きながら、従業員や取引先の皆様の満足度向上を追求していきたいですね。

ーー最後に若手へ向けて、今のうちにやっておいた方がいいと伝えたいことはありますか。

國米正裕:
何よりもまず、若いうちに多様な人と関わっておくことをお勧めしたいです。私自身、学生時代はソフトテニス部に所属しておりましたが、厳しい先輩方に忍耐力を鍛えられた経験があったからこそ、社会人になってからの困難も乗り越えてこられたという自負があります。

多少のことではへこたれない精神を養うためには、若いうちに部活動などで失敗を経験しておくことが非常に大切なのではないでしょうか。また、社会人として欠かせないコミュニケーション能力を磨いておくことも、将来に向けた大きな財産になるはずです。

編集後記

経理畑から管理本部や営業本部などを経て、代表の職に就いた國米氏。「会社の顔として振る舞うことに慣れるまで時間がかかった」と話す姿からは、実直な性格がうかがえる。伝統を重んじる精神を持ちつつ、5年がかりのISO取得や環境配慮型商品の開発など、現場の最前線で変革をいとわない姿勢が非常に印象的である。社員一人ひとりの声に応え、透明性の高い評価制度や組織づくりに挑むその熱意に、トータルヘルスケアカンパニーとしての確かな未来を感じた。同社の今後のさらなる飛躍が楽しみでならない。

國米正裕/1965年7月23日大阪府生まれ。1988年3月に慶應義塾大学商学部卒業。同年4月株式会社東芝に入社し、京浜事業所で重電機器原価管理を6年間、本社で連結決算を4年間担当。1998年7月、白十字株式会社へ入社。経理部課長、社長室長、管理本部長、営業本部西日本統括を経て、2015年6月、白十字販売株式会社代表取締役社長就任。現在は白十字株式会社の取締役副社長も兼任し、白十字グループとして発展していくことを日々考えている。