少子高齢化が急速に進んでいる日本では、医療用品や介護用品の需要が伸びている。
しかし、相次ぐドラッグストアの統合や原油価格の高騰により、医療品を扱う会社では販売先の獲得や利益の確保に追われている。
そんな中、グループ本体の白十字製品を主力に取り扱い、医療・介護・衛生用品などを流通しているのが、白十字販売株式会社だ。
大手電機メーカーの経理畑から白十字グループ企業の代表取締役となった國米社長の思いについて聞いた。
前職での経験と社長就任に至るまで
ーーこれまでのご経歴についてお聞かせください。
國米正裕:
白十字に入社する前は株式会社東芝で経理を担当していまして、原価管理や連結決算などの業務を行っていました。
ーー白十字に入社されてからはどのような業務に携わっていらっしゃったのですか。
國米正裕:
私が入社した頃は原価計算のシステムがなかったので、工場に頻繁に赴き、システム会社や経営コンサルタントの方に協力してもらって新しい原価計算システムを作りました。
また、営業部門向けに値引システムも作りました。
弊社では代理店に対し、まず標準価格で販売し、翌月に値引きをして価格調整を行っています。
当時使用していたシステムでは最終的に総額でいくらマイナスになったかしかわからず、個別の販売価格を把握できていませんでした。
かと言って販売価格をすべて手入力で打ち込むのは非効率なので、エクセルでデータを作って簡単に入力できるシステムの開発に取り組みました。
システムを作り始めたときは、作業の手間が増えると反発の声も多かったですし、どうせできないだろうと言われました。
しかし、試行錯誤しながら値引システムを完成させたことで、製品別にいくら値引きしたかが把握しやすくなりました。
経理部の後は社長室、管理本部、営業本部西日本統括などを転々とし、8年前に白十字販売社長へ就任したのと同時期に白十字の専務に就任いたしました。
代表という立場になってからは、会社の顔として立ち振る舞うことに慣れるまで時間がかかりましたね。
白十字販売の強みや今後の目標
--貴社の強みについてお教えいただけますか。
國米正裕:
弊社はメーカーではなく卸会社なので、白十字以外の商品も幅広く販売できるのがメリットです。
そのため、お客様の要望に合わせてさまざまな商品をご提案でき、多くの方から頼りにしていただいていると自負しております。
また、最近はドラッグストアの再編が相次ぎ、対応エリアを拡大する傾向にありますが、
白十字は全国卸の協力を得て関東圏以外のエリアにも販売を行っています。
このように時流に合わせて日々戦略を練っています。
--今後國米社長が挑戦していきたいことはございますか。
國米正裕:
白十字にぜひやってもらいたいと提案しているのが、自然素材を使った紙おむつの製造です。
インドのグジャラート州にあるSaathi(サーティ)という会社では、バナナ農家の方々が収穫の際に切り倒した木や竹などから抽出した繊維を使い、生理用ナプキンを作っているそうです。
自然素材でできているため肌にもやさしいですし、肥料として活用できるのでゴミ処理問題も改善できる、まさに循環型の商品だと注目しています。
既に研究段階には入っていて、実際に商品化できるかどうかは未定ですが、なんとか商品化してもらえればと思っています。
将来的には弊社も販売だけでなく、こうした社会に貢献できる商品作りをしていきたいですね。
ーー海外展開は視野に入れていらっしゃるのでしょうか。
國米正裕:
前々から海外へも販路を広げていきたいとは思ってはいるのですが、販売ルートがないのでなかなか手を付けられていないのが現状です。
また、弊社の主力商品である紙おむつを輸出する場合、かさばってしまって運送コストが高くなるのがネックです。
さらに、為替変動によって利益が大きく左右されるので、これもなかなか難しい課題ですね。
ーー貴社の今後の課題についてお聞かせください。
國米正裕:
医療品業界は業績が安定していると言われますが、ドラッグストアの統合や原油価格の高騰などもあり、こちらから何らかの手を打たないと利益を出しにくい状況です。
そのため物流にかかるコストを見直し、固定費の削減をしながら、販売拠点を増やして売上拡大にも力を入れようと取り組んでいるところです。
また、基幹システムの見直しもしていきたいと考えています。
現状では会計は単独でシステムを使い、人事給与計算などは別のシステムを使っているので、仕入や販売システムが稼働しているホストコンピューターからデータを転送する手間がかかるのと、リアルタイムでデータが反映されないのが問題です。
こうした課題を解消するため、ERPを導入して情報を一元化し、効率的かつ正確な処理ができるようにしていきたいと思っています。
企業における従業員満足度の向上
--白十字グループでは従業員満足度の向上を目指されているそうですが、貴社での具体的な取り組みについて教えていただけますか。
國米正裕:
弊社では退職金制度の改革を行い、企業が掛金を負担して従業員が年金資産を運用する確定拠出年金(企業型DC)を導入しています。
職場つみたてNISAや職場iDeCoなども会社の制度として導入を検討して社員の資産形成を後押しできればと思っています。
また、個人で賃貸契約をしている社員に対して借上げ社宅制度を導入して、住居費の負担が軽くなることにより弊社で働くメリットを感じてもらえるようにしたいとも思っています。
このように社員が満足でき、かつ会社側の負担も少ない福利厚生を充実させていきたいですね。
ーー働きやすい環境を作るために心がけていることはございますか。
國米正裕:
弊社では入社して短期間で辞める社員が少ないのですが、これは営業の責任者が各拠点を定期的に回り、一人ひとりとコミュニケーションを取っているのが大きいですね。
直接上司に言えないことも彼には言いやすいはずですし、仕事に関する悩みを吐露しやすい環境ではないかなと思っています。
ーー若い方々に向けて、今のうちにやっておいた方がいいと伝えたいことはありますか。
國米正裕:
とにかく若いうちにいろいろな人と関わっておくことですね。
私は学生時代にソフトテニス部に所属していたのですが、怖い先輩たちに忍耐力を鍛えてもらったおかげで、社会人になってから辛い場面に遭遇しても乗り切ってこられたというのはあります。
仕事でも多少のことではへこたれない精神を身に付けるために、部活などで失敗を経験しておくことも大切だと思っています。
あとは学生時代に社会人として一番重要なコミュニケーション能力も磨いておいてもらいたいスキルですね。
編集後記
経理畑から管理本部や営業本部などを経て、代表の職に就いた國米社長。会社の顔として振る舞うことに慣れるまで時間がかかったと話す姿からは、実直な性格がうかがえる。
好きな言葉は「不易流行(ふえきりゅうこう)」と話し、老舗企業から受け継いだ伝統を大切にしながら、時代の潮流に合わせて変化していく白十字販売株式会社に期待したい。
國米 正裕(こくまい・まさひろ)/1965年7月23日大阪府生まれ。1988年3月に慶應義塾大学商学部卒業。同年4月株式会社東芝に入社し、京浜事業所で6年重電機器原価管理担当、本社で4年連結決算担当を経て1998年7月白十字株式会社へ入社。経理部課長、社長室長、管理本部長、営業本部西日本統括を経て、2015年6月白十字販売株式会社代表取締役社長就任。白十字株式会社専務取締役も兼任し、グループとして発展していくことを日々考えている。