※本ページ内の情報は2023年12月時点のものです。

創業1917年(大正 6年)、小径βチタン合金パイプ、精密機械部品検査装置などの製造・販売、半導体の加工などを行っている二九精密機械工業。研磨加工が難しいとされる小径パイプのテーパー部の研磨も行うなど、技術力の高さに定評がある。

今後は医療分野にも力を入れ、海外進出も考えている同社の代表取締役社長の歩みや会社にかける想い、これからの時代をつくる世代へのメッセージなどについてうかがった。

四季報を持って営業したことも

ーー社長のご経歴を簡単に教えていただきたいと思います。

二九直晃:
学校は国際ゴルフビジネス学院のビジネス科を卒業しています。そこで、人間関係のマネジメントをビジネスに生かすカリキュラムを受けました。パソコンや簿記など、技術に直結する授業ももちろん受けました。

私たちの会社は1917年から二九精密機械工業として事業を展開しています。もともと私もこの会社で働く予定でしたが、親のアドバイスに従い、当社とは別の会社、工作機械メーカーの高松機械工業で5年間働き、社会人としての経験を積みました。

26歳くらいで当社に戻ってきてから営業をやりましたが、当時は四季報を渡されて、この会社へ行って来いと言われて、地道に顧客訪問を行うスタイルの営業を担当していました。ただ、飛び込み営業だけというわけでもなく、たとえばお付き合いのある銀行のネットワークの中で紹介いただいたお客様への訪問もやっていましたね。

社長としての責任と先代からの継承

ーー今年、社長に就任されました。心境の変化はありましたか。

二九直晃:
責任の重さが全く違うなと感じましたね。単純な話、常務時代は上に社長がいましたが、社長の上には誰もいません。会長はいますが、実質的には社長というのは一番トップになるので、その大変さはひしひしと感じています。しかし、私一人でできることには限りがあるため、一緒に働いてくれるスタッフの支えがあって初めて事業が成り立つといえます。

ーー先代からはどのような点を継承されましたか。

二九直晃:
「家庭が一番、仕事はその次」など、先代は名言を残すのが結構うまいところがありまして、それが理念や柱になっているところがあります。私は先代ほどの才覚は持ち合わせていないため、先代の言葉をこれからも大切に継承していきたいと思います。

二世の会で学んだこと

ーー社会人になってから社外でビジネスについて学んだ経験というのはありますか。

二九直晃:
二世の会というのがあって、27歳くらいの頃に入って、社外の方とお話しする機会がありました。年齢層も幅広い人がいて、経営者としての気持ちの捉え方も含めて、いろいろ吸収するものはありました。お客様に喜んでいただくためには何をしなければいけないのかなど、勉強させてもらったと思います。

医療分野における機会を探る

ーー貴社の未来の話についてもぜひお伺いしたいのですが。

二九直晃:
新規開拓については、医療分野についても進めています。いろいろな業界のお客様と知り合う機会をいただいている中で、当社の技術を今までとは異なる業種と掛け合わせれば、新しいイノベーションが起こるのではないかと考えています。

当社は金属加工だけをやってきた訳ではないので、これまで築き上げてきた技術をうまくミックスできるので、医療分野への期待は大きいですね。

もちろん、医療だけではなく半導体にしても、これから新しいソリューションに繋がっていけるチャンスは多くあるので、これまでの業界だけに絞らず多角的な面で見ていったら面白いのではないでしょうか。

手厚い研修で社員に気づきをもたらす

ーー貴社は新卒や中途でも採用されていますが、研修はどのように行っているのでしょうか。

二九直晃:
新卒や中途採用の方、それぞれのレベルに合わせて、かなり手厚くやっています。中途採用の方についてはすでにキャリアがあるので、会社の仕組みなどを覚えていただくことから始めていますが、新卒採用の場合、基礎的なことからさまざまな研修を行っています。

たとえば「4つの芽」という考え方で、専門家の先生を招いて、「顧客志向の芽」、「オンリーワン技術の芽」、「モノづくり達人の芽」、「リーダーの芽」の4つのグループに分け、それぞれの話し合いや専門家の先生からのアドバイスなどから新たな気付き、他部署メンバーとのコミュニケーションや情報共有を通じて新たな絆を作ることを目的とした研修を行っています。

今年は「4つの芽」から少し進化して「2つの若葉」として研修を行っております。1つは「オンリーワン技術の若葉」で、メンバーでの話し合いの中から「閃いた」技術の案を具現化していきます。もう1つは「人財育成の若葉」で将来管理職になることを期待している人のために、コミュニケーションスキル、マネジメントスキル、コンセプチュアルスキルなどを身に付けてもらえるような研修を定期的に行っています。

これからの人へ、メッセージ

ーー若手の方々向けに、メッセージをお願いします。

二九直晃:
製造業は3Kと一部では言われることもありますが、それとは反対に多くのチャンスがある業界です。製造の現場であれば今までにないものを作れるというチャンスがあり、お客様に本当に喜んでいただけるものを開発できますし、世界を相手に営業活動をする機会があります。

私たちもかなり高難度な技術で製造を行い、グローバルな活動も視野に入れています。お客様からはさまざまに期待していただいていますが、それにお応えして提案していくというチャンスは、成功すれば自分自身の大きな喜びに変えられます。

今の社会を私たちの仕事が下支えしていると思っていますので、その仲間にぜひ、なっていただきたいと思います。

これから未来が有効的で楽しい会社を一緒に作っていきましょう。

編集後記

現在、医療方面への業務の拡大を図っているという二九精密機械工業。長年培ってきた高度な技術で、人々の暮らしを豊かにするイノベーションを起こしている。行っている事業はなかなか私たちの目には触れないようでいて、身近なところでさまざまに支えてくれている。医療や産業分野の発展のため、今後ますますの活躍が期待される。

二九直晃(ふたく・なおあき)/1974年京都府生まれ、高校時代はライフル射撃で国体に出場。1995年国際ゴルフビジネス学院ビジネス科卒。高松機械工業を経て1999年に二九精密機械工業に入社。2010年常務取締役、2023年6月23日に代表取締役社長に就任。