※本ページ内の情報は2024年1月時点のものです。

近年増加しているM&A(Mergers and Acquisitions)は、企業の成長戦略として有効な手段であり、後継者不足に悩む中小企業の経営者にとっても事業継承における有力な選択肢である。

企業と企業を結びつける「結婚」に例えられる一大プロジェクト、M&A。単純なマッチングではなく、そのマネジメントを徹底的に行い、懇切丁寧に伴走するのが株式会社オンデックだ。誠実な対応を通してクライアントと信頼関係を構築し、成長し続けている会社である。今回は代表取締役社長の久保良介氏に、創業時からの企業努力、そして今後の展望についてうかがった。

業界トップクラスのクオリティで勝負できる会社に成長するまで

ーー起業のきっかけを教えてください。

久保良介:
もともと、M&Aありきで起業しようとしたわけではなく、起業しようと先に決めて、どんなプランで業務を進めようかと考えたのが24〜25歳の頃で、実際に起業したのが29歳でした。大学卒業まではずっと野球ばかりやっていたので、将来のキャリアについてはあまり考えていませんでした。キャリアプランは、社会人になってから考えればいいと思っていましたね。

偶然、財界で有名な方とのご縁を得て、その方に私のキャリアについて相談したところ、起業することを勧められました。そこで初めて起業という選択肢が生まれたのです。

ーーM&Aを選んだ理由を教えてください。

久保良介:
学生の頃から、社会に貢献できる事業にとても興味がありました。そんな中、私の恩師が、社会貢献のために仕事をしなくても、ビジネスで成功をして得たお金や人脈で、社会活動をすればいいというふうにおっしゃってくださいました。

そこで、色々なビジネスプランを考え、比較検討する中で、M&Aが最もビジネスとして成功する確率が高く、また、ビジネスを通じて社会に大きなイノベーションを起こしうると考え、この分野での起業を決めました。

ーーM&Aの知識やノウハウはどこで得たのですか?

久保良介:
前職は商社でしたので、もちろんM&Aについては経験がありませんでした。そのため、まずはM&Aの知識を書籍から学びました。相当勉強したと自負しています。

実践的なノウハウは、起業してから試行錯誤しながら学んでいきました。当時は、そこまでM&Aが盛んではなく、情報も全くありませんでしたので、知り合いを経由して弁護士さんや会計士さんなどのツテをたどり、教えを請いながら実践的なノウハウを蓄積していきました。M&A業務における、リーガルリスクやストラクチャリングなども、弁護士さんや会計士さんに1つひとつ相談して、解決していきました。

今でこそ、後継者問題に端を発した中小企業のM&Aというのはかなり認知が進んでおり、M&Aの情報も溢れているので、今であればこの分野で起業するのはけっこう簡単だろうな、とは思います。

ーー実際に起業して、想定外だったことはありましたか。

久保良介:
書籍に載っていない、実践的な部分や情緒的な部分の影響が、こちらが想定していた10倍くらい大きかったことです。オーナーやご家族、役員、従業員など、取引先のステークホルダーの心情を理解して、ケアして伴走をしていくことが一番難しかったですね。

この仕事の特徴でもあると思いますが、こちらが本気で関わるほど、相手の感情にも触れるので、こちらの感情の振れ幅も大きくなる。この点がこの仕事の良さ、面白さでもあると思います。

ビジネスで勝負できる人材に成長するために

ーー若いうちに行うべき努力について教えてください。

久保良介:
野球をずっとやっていたので、野球で例えがちなのですが、若い時にとにかくバットを振っておく、ということです。練習量で2倍、3倍の差がある相手に勝利することはかなり難しい。素振り50本で自分は頑張っていると思っている人と、500本やらなきゃ手を抜いたと思う人の感覚差や努力習慣は後からでは埋められません。

いろいろなことを吸収して、客観的に見ても高い付加価値を持つ優秀な人材は、漏れなくそれなりの努力をしています。自分自身を磨くための努力を、がむしゃらにできるのは20代が1番適していると思うんです。

30代、40代になってからやろうと思っても、限界があります。また、できてしまった器の大きさもあります。若いころに得た知識はその人の土台になっていくからです。若い頃に頑張ってつくり上げた器は、年齢を重ねたあとでは得られないものだと思っています。磨いたもの以上にはなれない。それだけに若いうちに、どれだけの労力を使えるかというのが、ビジネスマンとしての成長に大きく作用すると思います。

さらなる発展を目指す

ーー今後の事業拡大について教えてください。

久保良介:
ダイレクトメールを送り、お客様にフォローコールをするというやり方が、この業界で一番多い営業手法だと思いますが、弊社はそれをほとんど行いません。

弊社では、新規取引先開拓は紹介で得ることを最も重視しています。そのため、経営者のそばでそのサポートをしている団体や個人との連携強化が重要です。

連携の網羅率でいうと地域でばらつきがありますが、弊社は大阪に本社を置いて、18年やっているので大阪の市銀・地銀との連携はほぼ網羅しています。京阪神という括りでも相当数網羅していますし、首都圏でもそれなりには網羅していますが、大阪における網羅率と比較すれば、まだまだ拡大の余地はあると思います。

一般に、企業の所在地は東京に集中しているので、東京を中心とした首都圏はM&Aの案件も多いけれど、M&Aサービスを提供する競合会社も多い。競争の激しい地域ではありますが、サービス品質で勝負できると考えています。

ーー今後の展望について教えてください。

久保良介:
主力のM&Aのアドバイザリー事業に関しては、トップクオリティ企業として自他共に認められる水準まで持っていきたいと考えています。

クオリティは単純に数値化できるものではないので難しい面もありますが、例としてはコンペの勝率が挙げられます。今は70%程度で相応に高い水準にあると言えますが、今後はさらに引き上げていきたいですね。

そのためには、個々のコンサルタントの育成を継続する必要があると思います。中長期的な視点で自分自身のキャリアアップを図れる、そうした視座で成長できる人材を多く集めて育成していくことが必要になります。

さらに、インベストメント・バンキング(IB)構想を持っています。M&Aの支援に留まらず、有望な企業への投資や、資金調達の支援といった領域まで守備範囲を広げたいと思っています。それにより、中小企業のダイナミックな成長を、より広範に支援できるような企業体になっていくというのが将来的な展望です。

編集後記

単純な企業同士のマッチングではなく、常に高い水準のクオリティを求め、信頼を得てきた株式会社オンデック。経済と道徳のバランスを重視し、揺るぎない信用を獲得する企業であることを目指して、努力し続ける久保社長。

競合企業の増加が予測されるM&A業界で、さらなる挑戦を続ける株式会社オンデックに今後も注目していきたい。

久保良介(くぼ・りょうすけ)/大阪府出身。関西大学卒業。2005年7月、オンデックを創業。2007年12月、株式会社化し代表取締役社長に就任(現任)。「事業引継ぎガイドライン2014」「中小M&Aガイドライン2020」検討委員を務める(ともに中小企業庁)。2021年創設の一般社団法人M&A仲介協会へは理事として参画。