株式会社ウエダ本社は、働く環境を整える総合商社として、リノベーション事業や空間プロデュース事業、コーポレートデザイン事業など、オフィスや働き方をサポートする事業を展開している。
代表取締役社長の岡村充泰氏は、本業の傍らで「京都流議定書」というイベントを主催し、人々の繋がりによって新たな価値を生み出している。
今回は岡村充泰氏から、事業の強みや主催されているイベントのエピソード、今後の展望などについて話をうかがった。
代表取締役としての約20年間を振り返って
ーー代表取締役に就任して現在までを振り返ってみて、今の心境はいかがですか?
岡村充泰:
今年で60歳を迎え、代表取締役としての任期が迫ってくる中で、まだやり残したことがあるのではないかという焦りを感じ始めています。
現在に至るまで、売上重視ではなく「この会社があってよかった」と思われる会社になることを目指して、長期的な視点を持って事業に取り組んできました。この取り組み方は正しかったと思っているのですが、世の中にインパクトを残せたかを考えてみると、新しくやれることがまだあるのではないかと感じています。
京都の魅力を発信し、世の中にインパクトを残したい
ーー「京都流議定書」はどのようなきっかけで始められましたか。
岡村充泰:
京都流議定書は、数値にできない価値を多く持つ京都を研究・発信し、京都の価値再発見と新しい価値創出を目指すイベントです。
京都には、事業の規模の大きさではなく、歴史的な価値といった貴重さ・特別さを重要視するという、独自の経営視点が存在しています。このような、数値化されない価値を大切にしている点を面白いと感じ、同時にそこが日本の強みでもあると思いました。
この京都を研究し、日本全国や世界に発信していくことが、弊社が世の中にインパクトを残すことにもつながると思い、京都流議定書というイベントを始めることを決めました。
ーー京都流議定書に取り組まれる中で、印象に残っているエピソードがあれば教えてください。
岡村充泰:
第1回目のイベントテーマを決めた時が印象に残っています。第1回目のイベントでは、門川京都市長にも出席していただくことになり、どのようなテーマにするかを相談していました。
その時、市長から「国際会議のCOP3で京都に来られたドイツのメルケル首相が、スピーチで、『環境に良いことをしているか?』という意味で『DO YOU KYOTO?』と言い、『KYOTO』を動詞として使っていた」という話をうかがいました。
国際会議という場で、日本の京都という言葉がとてもいい意味で使われていたことに感動しました。しかし、残念ながら当時、マスコミだけでなく京都府内でもこのことを話題に取り上げませんでした。
そのことを実にもったいないと思い、京都流議定書のイベントテーマに活用することにし、「Do you Kyoto? Do you Kyotostyle?」というテーマに決まりました。
人を活かし価値を生み出す事業
ーー貴社の事業内容について教えてください。
岡村充泰:
リノベーション事業や空間プロデュース事業、コーポレートデザイン事業、ICTシステムデザイン事業などを手がけています。弊社は働く環境の総合商社なので、人を活かし、地域やイベントなどさまざまなものを混じり合わせて価値を生み出すことを目的として、事業を展開しています。
私たちの事業内容は一見理解しにくく、何を行う会社なのかを多くの人に理解してもらうのは難しいというデメリットがあります。しかし、その分、他社が容易には模倣できない独自の事業を展開できており、これは大きな独自性を保つメリットとなっていると考えています。
何よりも他者へ配慮できる人を重視
ーー貴社の求める人材像を教えてください。
岡村充泰:
弊社は「自律性」「成長意欲」「他者への配慮」の3つの要素をもった人材を求めています。特に、他者への配慮ができるかといった点は大切にしており、自律していて成長意欲があっても、他者への配慮ができない人は一切評価しないという評価制度で運用しております。
最終的な評価は、各チームで自己評価と他者評価を元にディスカッション形式で進めて決めておりますので、定性的な要素も含めて上手く評価できるよう工夫して行っております。
グループ経営で大きいインパクトを
ーー今後の展望について教えてください。
岡村充泰:
今後は、グループ会社をつくりたいと思っています。弊社が世の中に価値を提供していくことも大切ですが、同時に、社員が増えた時にそれぞれの適正ややりたいことに合わせて会社をつくっていけるような環境を整えたいと思っています。
ウエダ本社単体で規模の成長を目指すのではなく、それぞれのやりたいことをグループ化して大きなインパクトを生み出していくために、経営幹部の育成や採用強化といったことにも積極的に取り組んでおります。
働きやすさ以外の働きがいを見つけてほしい
ーー最後に、読者である若手の皆さんへメッセージをお願いします。
岡村充泰:
今しかできない経験や挑戦をたくさんしてほしいです。働き方改革が訴えられている現在では、「働きがい」と聞くと「働きやすさ」を連想する方が多いと思います。
働きやすさはもちろん大切ですが、若い時だからこそできる挑戦や苦労があり、それによって成長できることがたくさんあります。「働きやすさ以外の働きがいは何か」ということを考え、見つけてほしいと思っています。
編集後記
人と人とのつながりを大切にし、どのような組み合わせで価値が生まれるか探索することを目的として努力を続ける岡村充泰氏。
会社の成長だけでなく、グループ会社展開も視野に入れ、さらなる挑戦と発展を続ける株式会社ウエダ本社から、今後も目が離せない。
岡村充泰(おかむら・みつやす)/1963年京都市生まれ 京都産業大学卒。瀧定株式会社に入社し、1994年に独立創業。1999年ビジネスで出入りした家業であるウエダ本社が倒産の危機に陥ったためその立て直しに関わり、2002年ウエダ本社代表取締役に就任。その後、6年で無借金状態に転換したのを機に立ち上げた京都流議定書イベントは、ソーシャルイノベーターの登竜門といわれる。