※本ページ内の情報は2024年1月時点のものです。

経済産業省によると、2022年のゴム製品の国内出荷額は2兆2,997億円で、前年比5.1%アップ。コロナ禍による落ち込みはあったものの、2018年の2兆3,330億円と比較しても差のない水準まで回復している。
主力セクターのタイヤとベルトが健闘して全体を押し上げるなど、ここ数年のゴム業界は再浮上をにらみながらの推移となっている。

大正時代に産業ゴム輸入を始めた株式会社平泉洋行(へいせんようこう/1950年設立、東京都台東区)は、全国の主要都市に営業所を展開しながら業績を拡大してきたゴム関連製品の専門商社。

近年の業績の好調さは目を見張るものがあり、現在120億円の売上高は3年後には150億円まで拡大する計画を掲げている。

直近では経営企画室を設置してSDGs事業にも本格的に参入。海洋プラスチックの回収事業を立ち上げ、そのための採用枠も増やしたという同社。
2023年に代表取締役社長に就任した高濱明氏の人物像と経営理念に迫るため、インタビューを行った。

リーダーシップの片鱗は中学生時代からあった

ーー社長に就任するまでの経験や経緯をお聞かせください。

高濱明:
大学を出て同業のゴムメーカーに就職し、開発の仕事を担当していました。日産自動車系の請負が中心で窓枠のゴムなどを製造していましたが、やがて日産自体が不景気と大規模リストラの時代に突入しました。

これに伴って徐々に業績が悪化。早期退職を募っていたので10年ほど在籍したところで退職を選択しました。

弊社に転職して営業部の配属になりましたが、職種が変わっても苦にはなりませんでした。営業をしているとやりにくい人や怖い人を避けようとしがちですが、私は拒むことなく積極的に関わっていくタイプです。

オーナー社長から食事に誘われても尻込みせずに、「上の人といろんな話ができるチャンスだ」と思い、必ず行っていましたね。人見知りしない性格ですから、人とやりとりする仕事は向いていたと思います。


ーー社長に就任して心境に変化はありましたか?

高濱明:
いいえ、変化はあまり感じませんね。管理職の時代からずっと社長のような覚悟を持ってやってきたつもりです。たとえば自分の部署の業績が悪ければ「ボーナスはいらない。その代わり部下が一生懸命やってくれたら、自分のボーナスを回してほしい」という姿勢で仕事をしてきました。

ボーナスが欲しいから数字を絶対に上げる、何がなんでもという気持ちでいましたから、社長になったからといって姿勢や志はそれほど変わらないですね。

中学時代に生徒会長をしていた頃、プレッシャーを受けながらもクラスのみんなをまとめ上げる面白さや楽しさを感じていました。いま思うとこの頃にイニシアティブをとる意識が芽生えた気がしますね。

マンパワーこそ営業力の源

ーー他社との差別化ポイントはどんなところでしょうか?

高濱明:
商社ですから営業力で勝たないといけないと思っています。逆に、業績が伸びなかった時代は商品ファーストの方針でした。

現在では商品の差はそれほどなくなっていますので、営業力の強化を何よりも優先します。
まずは営業スタッフが相手の立場で親身になること。そして、いいものをどう高く売るか、お客様のニーズを汲み取ってどれだけスピーディーに適切な提案ができるか、これに注力するべきです。

そのためには古いと言われるかもしれませんが、精神論も重要です。自分が売ろうと強く思わなければ相手は買わないし、いい営業をしようと思えばいっそう努力しないといけません。
つまり気持ちを入れて取り組む姿勢を各自がコントロールする必要があるということです。

弊社スタッフの場合、こうした心がけを持って営業活動を行っていることが強みであり、業績にも表れていると思います。


ーー海外事業に力を入れるとお聞きしました。

高濱明:
国内ではフィギュアや食品サンプルの原料など、ニッチな用途向けのウレタンを販売していますが、人口減少の問題を抱えた日本市場の伸びは限定的でしょう。このまま黙っていても仕方がないので、輸出や拠点化を進めながらグローバルに展開していく方針です。

実際、支店を置いている中国では順調に売り上げを伸ばしています。今後はアメリカやインドなどにも支店を新設し、世界各地の販路拡大に向けて動いているところです。

会社の規模を拡大すると同時に人材面を強化

ーー人材の採用状況についておうかがいします。 

高濱明:
現状は新卒ではなく、社会人経験のある中途採用がほとんどです。語学を要する仕事ですので、現在活躍している人は短期や1年間海外留学したという人が多いですね。
コンパクトな会社ですが、毎年2人は新入社員が欲しいと思っています。

業績は前期に売上高120億円を記録し、3年後には150億円を計画。直近は勢いよく伸びています。社員のモチベーションも上昇しています。業績の上昇に伴って今後は給料も賞与も水準を上げていきたいと考えています。

まだまだ会社の成長は伸びしろがあります。組織自体をさらに大きくするために、業界の内外問わず優秀な人材を積極的に採用し、人事面の取り組みを強化していく方針です。

編集後記

高濱社長は人材の成長について「自分が成長し、伸びている実感があれば楽しいんですよ。しかし何年やっても成長が止まって進化しなくなると、面白くなくなって辞めてしまいます。だから常に進化を追い求める必要があるわけです」とスポーツを例にして話していた。
精神論について触れていたが、マインドコントロールを大切にする理念がとても印象的だった。同業界でこれほど業績を伸ばす企業も珍しく、今後の進展に興味が増す貴重なインタビューとなった。

高濱明(たかはま・あきら)/1968年生まれ、千葉工業大学卒。1992年に鬼怒川ゴム工業株式会社に入社し、ゴムに関する幅広い知識を得る。2002年、株式会社平泉洋行に入社。2023年、同社代表取締役社長に就任。趣味のウインドサーフィンにも力を注いでいる。