Google社のプラットフォームGoogle Workspaceを基盤に、煩わしい仕事をラクにするクラウド型拡張ツール「rakumo」を作り出し、ITを活用した生産性向上支援を行っている。
働くことを「オモシロい」に変えるサービスを提供し続ける御手洗社長に事業を思いついたきっかけから、会社の強み、今後の展望などについて話を聞いた。
複数の会社を起業し続けてきた20代
ーー起業までのきっかけやエピソードを教えてください。
御手洗大祐:
NTTで働いていた時に、アメリカのベンチャー企業に対して出資をする部署で仕事をしていたのですが、お金を投資するのはこちら側なのに、向こうの自由な態度や振る舞いに疑問を感じました。「結局モノをつくる会社のほうが自分には合っている」と感じ、投資するより何かをつくるほうが楽しいことに気づいたんです。
当時、アメリカにいた上司からも「このまま会社に居続けるのはもったいない」と言われ、悩んだ末に退職を決意しました。退職の挨拶に回っている時に、実業家である伊藤禳一さんから「一緒に事業をやろう」とお話をいただいたことがきっかけで、起業を決意しました。
その後、20代から複数の会社を起業し、どの会社も3年ほどで売却や退任していたのですが、当時は「35歳でキャリアは打ち止めになる」とよく言われていました。
32歳でrakumo株式会社を創業する際、今回が最後の起業になるかもしれない、ならば「引退するまで長くできる仕事をしたい」と考えました。新しいことをやり続ける会社であれば、生涯通して働けると思ったのです。
ーー貴社の事業を思いついたきっかけを教えてください。
御手洗大祐:
日本人は欧米の人と比べて、不合理なことに対する耐性がとても強いと感じます。
しかし、人がやらなくていい業務はITを活用してできるだけ機械化すれば、働く人たちを楽にし、QOLの高い社会をつくることができるはずです。
そんな会社を目指して進んできました。
ーー貴社の事業の名前の由来について教えてください。
御手洗大祐:
当初は、日本の技術をもっと世界に広めたい、その際にやはりインターフェースを含めたデザインって大事だなと考えました。
そこで、最初は「技術」と「芸術」からとって「日本技芸」と名づけました。その後、仕事を「ラク」にする「クラウド(雲)サービス」という弊社の製品サービス名に合わせて、現在の社名「rakumo」に変更しました。
退職後すぐに事業を開始
ーー起業後のエピソードを教えてください。
御手洗大祐:
最初の会社の設立後まもなく、アメリカのメディア企業であるCNET Networksから、メディアとしての技術を持っている日本の会社を買収したいという話がありました。
自分としても、当時ブラックボックスだった広告ビジネスを、内側から理解できるチャンスではないかと思い、売却を決意しました。その後は、シーネットワークスジャパン株式会社として、同社の日本語版ウェブサイトを運営しました。
さまざまな困難に立ち向かい、つくり上げてきた事業。世の中の流れが味方になった
ーー貴社の事業の強みを教えてください。
御手洗大祐:
rakumoはGoogle Workspaceと連携して、業務効率化をサポートするクラウド拡張ツールです。すでにGoogle Workspaceを利用している企業であれば「簡単に導入でき、安心して使えて、トラブルがなく」利用できる点が強みです。
Google Workspaceは世界的に認知度も利用度も高いサービスなので、それをより便利に、シームレスに使えるようにする「rakumo」は、企業規模や業種を問わず幅広く活用でき、教育機関や公共団体でもご利用いただいています。
ーー今後の事業展開について教えてください。
御手洗大祐:
業界のシェアを上げていくのは大切ですが、Googleのプラットフォームだけにこだわっているわけではありません。
新しい事業については構想はありますが、まだ確定していないこともあり、詳しくお伝えできません。rakumoがもっと多くの人に広まってきたら、改めて新たな事業の方針を考え、まとめていくつもりです。
ーーどんな人材を求めているか教えてください。
御手洗大祐:
「自分たちがこれからの時代をつくる」という気概を持ち、新しいことをやっていきたい気持ちに溢れている方が来てくれると嬉しいです。
自分たちの将来は自分たちで考えてつくるというポリシーがあり、人に共感してもらえるものを一緒に作っていきたいという方であれば、プロダクト開発未経験でもウェルカムです。
上場して3年経ちましたが、オペレーション化してくることも多いので、新しい風を吹かせて大きな変化を起こしてくれる人材に期待しています。
編集後記
若手時代からチャレンジを続け、数々の事業を手掛けてきた御手洗社長。「仕事をラクに。オモシロく。」の企業ビジョンを実現するため、今後さらなるサービスを構想中だと言う。rakumoの新事業が私たちの働き方をよりラクに、楽しくしてくれることに期待したい。
御手洗大祐(みたらい・だいすけ)/1972年愛知県生まれ。横浜国立大学卒業。1996年日本電信電話株式会社(NTT)に入社し、3年後に起業し、バックテクノロジーズ株式会社を設立。同社売却によりCNET Networks日本法人の代表に就任。2004年に株式会社日本技芸を設立。その後、rakumo株式会社に社名変更。他に株式会社アイスタイル社外取締役、長野県本人確認情報保護審議会審議委員などを歴任。