※本ページ内の情報は2024年2月時点のものです。

2024年4月1日から、建設業に時間外労働の上限規制が適用される。月45時間、年360時間が上限となり、長時間労働問題の解消に向けて期待が寄せられている。

短納期や人手不足から長時間労働が問題視されている建設業だが、森本組の代表取締役社長、横尾徹氏は、この問題の解決に早くから取り組んできた。

同社に入社してから支店長、役員、そして社長へと着実にキャリアを積んできた同氏に、社員時代から意識していることや、社長として取り組んでいきたいことを聞いた。

ご要望に合わせて複雑な工事にも幅広く対応できることが強み

――貴社の事業について詳しく教えてください。

横尾徹:
弊社は総合建設事業を行うゼネコンです。土木事業が55%、建築事業が45%という割合で展開しています。

1890年に奈良で創業した森本組をルーツとし、2003年の民事再生申請を経て翌年、営業譲渡により大豊建設のグループ会社となりました。再スタートから今年で20年、通算すると133年目になります。

――数々の総合建設業者がある中で133年続いてきた、貴社ならではの強みはどういった点にあると思いますか。

横尾徹:
弊社は、狭い空間で深い穴を縦に掘るアーバンリング工法や、工場排水を浄化して汚泥の発生を削減するオイルバクターシステムなど、多くの技術を持っています。

また、インフラ整備を主とする官庁工事、マンション・物流などの建築民間工事、鉄道や環境関連工事なども手がけており、品質にこだわった仕事を提供できます。

高い技術力を活かして他社が敬遠しがちな仕事もできること、規模の小さい会社ながらも対応の幅が広いことが弊社の強みですね。

昭和の働き方を変えるべく社内の環境改善に努める

――横尾社長は2023年6月に社長になられたばかりですが、そもそもどうしてゼネコンに入社されたのでしょうか。建設業に興味を持った理由や、入社後の取り組みについてお聞きしたいです。

横尾徹:
子どもの頃、建設の仕事をしている親戚の姿を見ていたのが建設業に興味を持ったきっかけです。そこからものづくりへの憧れを持つようになり、大学で土木工学を学びました。

弊社に入社して取り組んだことの1つが、環境改善です。会社での立場が上になるにつれて、社内の環境を良くしたいと思うようになりました。

入社当時は、週休2日制の導入が始まったばかり。土曜日は当たり前に、日曜日も隔週で仕事があり、宿舎の狭い部屋に2~3人で共同生活をするなど、今では考えられない環境でした。

この状況をどうにか良くしたいと思い、福利厚生を拡充したり、社員との交流会を実施したりしながら、現在に至るまで環境改善を行ってきました。

――社長に就任することになったターニングポイントは何だと思われますか。

横尾徹:
やはり、ターニングポイントは民事再生でした。民事再生をすることになり会社を辞める人もいましたが、森本組を継続し良い会社にしたいと思い続けたから今社長に就任しているのだと思います。

「Quality Always」を信念に品質向上を目指す

――支店長から役員、そして社長になるまで、いろいろな壁にぶつかってきたのではないかと思います。ここまで、どのように壁を乗り越えてこられましたか。

横尾徹:
現場第一主義を忘れないことです。支店長時代は現場によく通って施工の課題を聞くなど、職員とよくコミュニケーションをとるようにしました。自分の知らないことをできるだけなくし、相談役になれるよう努めてきました。

――実際に今年社長になられて、今後はどういうことをより強く意識し、挑戦していきたいと思われますか。

横尾徹:
弊社では、品質へのこだわりを大切にする「Quality Always」を信念に掲げています。品質トラブルをなくすためには、現場のために一丸となることが大切です。

全員がものづくりに関わることで新たな気づきを得られ、組織全体の強化が進むと考えています。

これからも福利厚生や教育面で社員のキャリアを支えたい

――福利厚生や教育システムの強化にも注力しているとお聞きしました。

横尾徹:
弊社の福利厚生は、大手ゼネコン並みの待遇を備えていると思います。仕事と家庭の両立支援にも取り組み、育児休業をとりやすい環境ですし、実際に男性の育児休業も年々増えています。また、住宅補助などの手当も充実させています。

教育面でいえば、年次や役職に合わせた研修を実施したり、資格取得のサポートをしたりしています。通信教育でも学習できますし、外国人の技能実習生には日本語能力試験合格を目指したサポートをしています。

――建設系学科卒などの学生がメインでご入社されていますか。

横尾徹:
必ずしもそうではありません。弊社では、ここ5年ほど文系出身の学生も技術職として採用しています。そのための取り組みとして、入社後の研修や入社前のインターンシップで現場業務を経験してもらうなど、いろいろな場所でものづくりを体験できるようにしています。

建設を通じて社会に貢献したいというものづくりに興味がある文系出身者の方は、積極的に採用していきたいですね。

編集後記

横尾社長は同社に入社してほしい人材について、「自分を改善できる人、積極的に向上できる人」と話した。

民事再生などの大変な時期にも諦めず、着実に努力を続けた横尾社長だからこそ、長年にわたり多くの顧客から愛される今の森本組があるのだろうと感じた。

横尾徹(よこお・とおる)/1959年生まれ、大分県日田市出身。1982年に千葉工業大学工学部土木工学科卒業後、森本組に入社。2017年に執行役員東京支店長、2018年に取締役執行役員土木本部長、2022年に取締役執行役員副社長・土木本部長などを経て2023年6月に代表取締役社長就任。