※本ページ内の情報は2024年2月時点のものです。

京都・伏見区に本社を置く「株式会社ABC」は、銅・アルミ・ステンレスといった非鉄金属を中心に金属資源のリサイクル業を行っている。事業を拡大し続けている企業の代表取締役・大住明弘氏に、これまでの歩みをうかがった。

土木作業員から起業家への道のり

ーー社長のこれまでの歩みをおうかがいしたいと思います。

大住明弘:
中学卒業後、20歳になるまで土木業界で修行を積み、独立して土木事業を立ち上げました。仕事は順調でしたが、後輩が事故にあったことを機に6年ほどで土木業界から離れました。

その後、父が経営していたリサイクルショップから商品を仕入れ、中古厨房器具専門店を開業しました。新品、中古の厨房器具の販売を通して、店舗のデザイン、設計施工も行い、商売は順調でしたが、リユース業界に限界を感じていました。

そんな中、鉄・非鉄金属などの輸出を行っている東洋トレーディング会長と出会い、リサイクル業界の可能性を感じました。株式会社ABCを設立したのは34歳のことです。

リユース業界からリサイクル業界へ――事業戦略を学ぶ

ーー事業が成功するまでの道のりをお聞かせください。

大住明弘:
前職のリサイクルショップの営業権を譲渡したのち、知り合いにマンションの1階を貸していただきました。その方のおかげで、少額の運転資金で事業をスタートできました。もちろん、すぐに軌道に乗ったわけではありません。

中国向け金属の性質から、日本の業者は取り扱いを嫌がる傾向にあり、リーマンショック前は、大半が中国系の貿易業者が取り扱っていました。

株式会社東洋トレーディングの、中国人の会長とのご縁があり、中国式のビジネスについて学びました。事業を確立できたのは、中国と日本のやり方を混ぜたことが功を奏したのです。

株式会社東洋トレーディングの会長には、ビジネスだけでは無く、沢山の事を学ばせて頂いています。

時代を先読み、品質にこだわる企業の強み

ーー利益が順調に伸びた理由や秘訣はありますか。

大住明弘:
ミックスメタルから始まった会社ではありますが、需要が減少したときのことを危惧していました。当時は、中国への輸出が増えミックスメタルが好調でしたが、いずれはミックスメタルに代わる素材も扱う必要が出てくると予測して、銅やアルミニウムなどの非鉄金属を集めるようになったのです。

さらに弊社は、量や売上よりも「質の高さ」を追求しています。不純物をしっかり取り除き、「ABCの製品なら安心だ」と感じていただけたことで大手企業様との取引が始まりました。

信用がない企業の製品を念入りにチェックする際には、余計なコストがかかりますよね。チェックが不要であるほどの信用を得ることで、価格以上の価値を生み出せるのです。

ーー人材の育成方法もおうかがいできればと思います。

大住明弘:
社員には「何事も準備を怠るな」と教えています。整理整頓もいつも通りにしていれば大掃除は不要ですし、普段からしっかりと管理をしていれば、いつ誰が監査にきても問題ありません。

同じものを同じように出荷するにしても「安心」を添えることが大切です。「ABCブランド」と呼べるような、商材に対するプライドを誰もが持っていることが弊社の強みです。

これからのABC――大手への開拓とホールディングス化の展望

ーー今後の展望をお聞かせください。

大住明弘:
社長としての目標は叶えつつあり、難しいとされていた愛知や京都の土地を購入して、大きな新工場を建てられました。鉄を二次加工する切断機を導入し、今後の事業展開のレールも敷けたと思います。これからは大手ゼネコン、メーカーさんなどに積極的に提案し、新規販路を開拓したいです。

将来的にはホールディングス化を計り、管理していく予定です。

「非上場企業をホールディングス化する意味はあまりないのでは」という方もいますが、そこで働く者達のモチベーション維持のためにも必要なスキームであり、そのように人を育てていくことも経営の面白さの1つだと思っています。私が退職するまでは仕事を全うして、後継者に会社を譲るというのが理想ですね。

編集後記

わずか20歳で独立し、30代のうちに株式会社ABCを設立した大住社長。スクラップ業者からスタートしたABCは、「リデュース・リユース・リサイクル」という概念のもと、地域の社会貢献を超えて地球規模の環境問題に取り組んでいる。

大住社長の中にはまだまだ会社を通して実現したいことのアイデアが湧き続けているように感じたインタビューとなった。

大住明弘(おおすみ・あきひろ)/1974年、京都府生まれ。中学卒業後、20歳まで下水・土木の工事事業に従事。20歳で独立、土木事業で工事事業会社を設立。27歳でリサイクルショップを立ち上げ(中古家電品・中古厨房器具専門店)、34歳で株式会社ABCを設立。