※本ページ内の情報は2024年2月時点のものです。

インターネットに接続して使用する家電や自動車など、暮らしのすみずみにIT技術が浸透した昨今、ソフトウェア開発事業の需要が高まっている。

今回は、組込みソフトウェアに特化したコンサルティング事業を行う株式会社エクスモーションに注目した。

代表取締役社長である渡辺博之氏に、創業の経緯から今後の展望、ソフトウェアの将来まで幅広く話を聞いた。

営業職から技術職へーー異色の転職歴

ーー創業のきっかけを教えてください。

渡辺博之:
営業として機械の専門商社に入社しましたが、技術をしっかりと理解していないと良さが伝えられないと思い、ベンチャー企業へ転職してエンジニアとして9年間働きました。

そこでは主に製品開発を行っていました。しかし、製品を開発そのものよりも開発の進め方を探求する方が自分には向いているのではないかと思い、そのころ声をかけていただいた株式会社オージス総研へ転職しました。

そこで12年勤務し70名ほどのチームを任せてもらいましたが、チームメンバーの中でも優秀なコンサルタントは、どんな課題も適切に解決に導くのでどの企業も欲しがります。

優秀な人材ほど仕事に見合った報酬がないと、他社へ移る傾向にあるため、私の目指した「開発の進め方のコンサルティング」という1番難しい仕事をやり切るためのチームをつくることができませんでした。

そこで、自らコンサルティングに特化した会社を立ち上げようと思ったのが、創業のきっかけです。

ーー創業後の苦労を教えてください。

渡辺博之:
創業後まもなくリーマン・ショックが起こり、予定していたクライアントとの取り引きがほとんどなくなったため、売上がなかなか伸びず苦労しました。

そこで、技術に特化した当社なりのPR方法として、当社が提供する技術をわかりやすく説明した冊子を展示会などで配布し、反響営業を狙いました。

当時、自動車業界をメインのターゲットにしていましたが、国内の自動車系の会社ではソフトウェアが得意な人材が不足していたので、タイミングよく顧客を獲得することができました。

優秀な人材を獲得するために、コンサルティングに特化した事業ということで、報酬も相場より高めに設定していました。

私が他社で勤務していた際に、いくら自分が成果を上げても、成果を上げていない人にまで報酬が流れてしまう現実に不満を感じていました。だからこそ、当社はフェアな経営をすると決め、コンサルティングをしっかりと行う優秀な人材にはそれに見合った報酬をお支払いし、優秀な人材が会社に定着するよう工夫しました。その結果、人材に関しての苦労はありませんでした。

製造業にとって必要不可欠な企業へ

ーー貴社の強みを教えてください。

渡辺博之:
製造業におけるソフトウェア開発の課題解決にフォーカスしていることです。当社のような事業を行う企業が少ないところが強みだと思います。

また、一般的なコンサルティングだと、プロセスを決める、または、レポートをまとめたり戦略の提案をするまでで終わってしまいます。

すると、クライアントは自力で課題を解決しなければならず、改善できなかったり助言が上手く活かされなかったり、という状況に陥りがちです。

その点、当社は専任のコンサルタントがクライアントと一緒に、最初から最後まで手を動かして課題を見つけて解決しているので、企業にとっては無駄な時間も余分な人員も発生しません。その点が他のコンサルティング会社と異なるところだと思います。

ーー製造業におけるソフトウェアの将来について教えてください。

渡辺博之:
将来はソフトウェアの活用を主軸に開発が進む動きになると思います。このような考えをソフトウェア・ファーストといいます。製造業もソフトウェア主軸に動いていくとなると、絶えず最新へのアップデートが必要になりますので、ソフトウェア事業の需要がより高まると考えられます。

同時に、販売後もデータを分析し、新しい機能を開発し続けることが必要になりますので、分析から開発までのサイクルがどんどん早くなり、外部のソフトウェア事業に委託していては間に合わなくなります。

そこで、製造業を担う企業内にソフトウェア開発の人材が必要になるので、専門性の高いコンサルタントがいる当社の需要がより高まると思います。

時代の流れに沿ったサービスを提供するために

ーー現在力を入れている事業を教えてください。

渡辺博之:
ソフトウェア開発のコンサルティング事業は年々需要が高まっているため、当社のコンサルタントだけではコンサルタントの人数に制約があるので対応しきれないことも少なからずあります。そこで、当社独自の生成AIを開発してコンサルティングのノウハウをコンテンツで提供したり、コンサルタントの代わりになる生成AIを開発したりすることを考えています。

コンサルタントに近いものを人ではない形で提供する方法の開発に力を入れています。それにより、人が行うコンサルティングの相場より安価でサービスを提供できるようになります。コンサルティングの予算を確保している上場企業だけでなく、確保できない中小企業でも利用できるようにしたいと思っています。

ーー貴社の今後の展望を教えてください。

渡辺博之:
短期的な目標は、生成AIがまだ学習できていない、機密情報が絡む領域の付加情報を追加することです。これが実現すれば、生成AIだけでコンサルティングを支援できるようになります。

生成AIが今よりも普及すれば、課題解決は全て生成AIが担ってくれるようになるでしょう。

そうなると、人には「何を課題にするか・何を解決するか」という課題設定力が求められるようになります。そこで、中長期的な目標として、課題を設定する方法を定義し、課題解決よりも課題を設定をする方向へコンサルティングをシフトしたいと思っています。

ただ、人にしか解決できない難問もありますので、コンサルタントの技術も高めつつ、その知識を活かした生成AIを活用して、安く汎用的に私たちのノウハウを業界に提供していきたいと思います。

編集後記

製造業界など幅広い企業の課題解決に向けて、新たな技術の開発に取り組む株式会社エクスモーション。

社長の技術職での経験と知識は、従業員にとってもクライアントにとっても説得力があるものだろう。

ソフトウェア・ファーストの世の中で、エクスモーションの活躍に今後も期待が高まる。

渡辺博之(わたなべ・ひろゆき)/1996年株式会社オージス総研入社。2008年株式会社エクスモーション設立。2018年東証マザーズ(現:東証グロース)に上場を果たす。