
2022年1月、岸田元総理が「スタートアップ創出元年」を宣言。スタートアップ企業が日本の成長を握る鍵であるという考えのもと、同年11月、スタートアップへの投資額を今後5年間で10倍にする計画がとりまとめられた。
スタートアップ企業の投資への注目が集まっている今、スタートアップと大企業をつなぐ事業でイノベーションを起こしているのが、ソーシング・ブラザーズ株式会社だ。代表取締役の小澤壮太氏と渡邊祥太郎氏に、同社の事業の狙いや今後の構想を聞いた。
同じタイミングで起業を考えていたことを知り、共同創業の道へ
ーー起業の経緯を教えてください。
渡邊祥太郎:
父方も母方も経営者の家系で、もともと起業が夢だったことが大きな理由です。本格的に起業しようと思ったタイミングで、小澤も起業したいと考えていることを知り、一緒に会社を始めることを決めました。
小澤壮太:
私の場合は、経営者の家系で育った渡邊とは反対に、安定を良しとする両親のもとで育ちました。父親からは「公務員になれ」と言われていましたが、そんな両親とは異なる道に進みたいと思っていたのも、起業を志していた1つの理由です。また、いろいろな経営者から「起業後は、自分の右腕になる人材を採用するのが大変」という話を聞いていたので、最初から渡邊と組めるのは大きなチャンスだと感じました。
スタートアップと大企業を連携させる3つの事業のサイクルで日本を活性化

ーー事業内容について聞かせてください。
渡邊祥太郎:
CVC(※)運営支援、スタートアップ採用支援、スタートアップM&A(企業の合併・買収)支援の3つの軸で未上場企業やスタートアップ企業を中心に支援をしています。
CVC運営支援「CVC Consulting」の主な顧客は大企業で、彼らがスタートアップ企業に投資する際のコンサルティングを手がけるという事業です。大企業が投資したスタートアップ企業にはしっかりと成長してもらいたいので、スタートアップ採用支援「HR Consulting」では成長に必要な人材採用を支援しています。
また、多くのスタートアップ企業は上場することを出口戦略としていますが、スタートアップM&A支援「M&A Consulting」では、上場だけでなく、M&Aも選択肢に入れてもらうためのサポートもしています。
それぞれの事業を個別に手がけている企業はほかにもありますが、3つ全てを行っている会社はありません。3つの事業を通してイノベーションを多く生み出す「イノベーションエコシステム」を構築しているのは日本で弊社だけですし、それが競合優位性になっています。
小澤壮太:
私たちが危惧するのは「スタートアップ企業をたくさん育成しなければ日本は弱くなっていく」ということです。この問題に対して危機感を覚えている優秀な若者が弊社に集まり、メンバー一丸となって日本を活性化させようと日々取り組んでいます。
(※)CVC(コーポレートベンチャーキャピタル):企業資金を外部のスタートアップ企業に直接投資すること。
ーー貴社ではどのような人物を求めていますか。
渡邊祥太郎:
主体性があり、素直で知的好奇心がある人を求めています。実際に弊社では、自分で考えて行動できる人が活躍していますし、そういった人に積極的にチャンスを与えています。私たちも現場へ出ることがありますので、メンバーと一緒に働くことを大切にしています。また、最近は新卒採用にも力を入れているところです。新卒・中途問わず、挑戦したい気持ちが強い方に来てほしいと思っています。
挑戦したい人をより増やすために自分たちが上場を達成したい

ーー今後の注力テーマについても聞かせてください。
渡邊祥太郎:
最近は、海外のスタートアップ企業について調べてほしいという大企業からの依頼が増えています。このような需要に応えるために、社内にグローバルインベストメントチームを立ち上げました。弊社の取引対象となるスタートアップ企業は国内企業だけではありませんので、これからは海外のスタートアップ企業との取引も増やしていきたいです。
小澤壮太:
M&Aというと、大企業がスタートアップ企業を買収するイメージがあるかもしれません。ただ、私たちはスタートアップ企業がスタートアップ企業を買収するケースが、今後は急増すると考えています。より大きな市場で戦うために、スタートアップ企業同士が組んで会社を急成長させようとする。このような動きが増えることを想定し、事業を展開していきたいと思っています。
ーー最後に、会社としての目標をお願いします。
渡邊祥太郎:
目標は2つあり、1つ目は先ほどお伝えした「イノベーションエコシステム」を通して、日本にイノベーションを起こしたい人、挑戦したい人をどんどん増やすことです。そして、この事業分野で日本のトップ企業になりたいと思っています。2つ目は、弊社も上場を果たすことです。挑戦したい人が日本で最も集まる会社を目指します。
私たちはすでに多くのスタートアップ企業とビジネスを行っており、大企業の新規事業に関わらせてもらうことも多いです。そのため、どのような社会課題があり、今後どのような技術が必要とされるのかを第一線の場で聞いています。この経験を活かして、私たち自身が社会にイノベーションを提供できるような会社になることが大切だと考えています。
編集後記
先行き不透明感が高まっている日本経済。この状況を打破するソリューションの1つが、スタートアップ企業の活躍だ。平成生まれの若き優秀な人材が集まる同社なら、スタートアップ企業の支援を通して日本をきっと底上げしてくれるだろうと頼もしく感じた。

小澤壮太/大塚商会にて製造業向けDXコンサルティングを経験したのち、M&AキャピタルパートナーズにてM&Aアドバイザリーに従事。2019年にソーシング・ブラザーズを共同創業。
渡邊祥太郎/大和証券にて資産運用コンサルティング業務を経験したのち、M&AキャピタルパートナーズにてM&Aアドバイザリーに従事。2019年にソーシング・ブラザーズを共同創業。