※本ページ内の情報は2024年2月時点のものです。

カーテンは生活に必要不可欠なインテリア商品でありながら、同時に、購入頻度が低い商品でもある。

カーテン専門店として業界を牽引する株式会社くれないでは、ブランディングやターゲティングを徹底的に重要視するという。その理由を、代表取締役社長である津田善朗氏にうかがった。

家業とは無縁だった不動産業界を選択した理由

ーー異業界である不動産業界から家業を継ぐことになった経緯を教えてください。

津田善朗:
もともと家業を継ぐ予定はありませんでした。私の学生時代にバブルが崩壊して景気が落ち込んだことで、町の商店街自体も活気がなくなり、その近くにあった弊社を第三者的に見て、継ごうとは思えなかったからです。

大学卒業後は、不動産や住宅の知識と営業の力を身につけたいと思い、就職先に不動産業界を選択しました。固定給の90%が歩合制という厳しい世界だったため、1年目は死に物狂いで営業成績を上げ、その結果、1年目も2年目も営業成績でトップをとることができました。

しかし、次年度から営業課長という営業を見るポジションを任されるようになり、会社の資金面のことを考えなくてはならなくなったことで、仕事に対して楽しさを感じられなくなりました。

いったん仕事を離れて実家に帰ったとき、2000年から弊社が始めていたインターネット通販が好評で、忙しく働いている家族の姿を見て、恩返しをしたいと思ったのが家業を継ごうと思ったきっかけです。

ーー代表取締役社長に就任後の取り組みを教えてください。

津田善朗:
伊丹市にある縫製工場を子会社化しました。人材不足が嘆かれる昨今において、近隣に住んでいるスタッフのみで常時30名近くが働く工場も貴重ですし、弊社オリジナルの商品を展開していくにあたり、製造拠点の必要性を感じました。

不動産営業の知識が生かされ強みに

ーー代表取締役社長になるまでの取り組みの中で印象的なものを教えてください。

津田善朗:
ブランディングとターゲティングです。

1つ目のブランディングでは、自社商品のネーミングにこだわりました。しっかりとした意味を持って商品名をつける、商品の特徴を表すような名前にするなど、ブランドコンセプトをしっかりつくることを真面目に行いました。

ブランドコンセプトをつくる際に注視したのがターゲティングです。カーテンという広いカテゴリーの中で、1人暮らしをする20代後半から30代半ばの女性というターゲットに絞れば、競合他社の中で1番になれるのではないかということで、そのターゲットのニーズに応える商品をつくりました。

とにかく、目隠し効果の高いレースカーテンで昼夜関係なく部屋の中の様子がわからず、なおかつUV効果のある商品など、ターゲットに特化した商品開発に力を入れたのです。

ただやみくもにカーテンをつくるのではなく、ターゲットのニーズを捉えているかどうかを考慮し、今日まで商品を展開してきました。

最近では「K-wave」という商品シリーズに力を入れています。このシリーズの商品は、全てに防炎性能を施しており、洗うことができる上、日本の縫製工場でつくっていることが特徴です。原料にペットボトルからつくられたリサイクル糸を100%使用し、環境に配慮したものもあります。

ーー貴社の強みを教えてください。

津田善朗:
他のEC業者とは違い、カーテン専門店として実店舗を持っていることは強みだと思います。直接お客様の声を聞くことができるので、たとえば「生地の使用感がわからない」という方がいた場合は、すぐに解決動画をECサイト上に掲載することが可能です。

商品販売では、お客様を安心させる、満足させる、不安を解消する、この3点が大切です。そのため、お客様主体で何事も考えるようにしています。

商品を売るのではなく買ってもらう。買ってもらうためには選んでもらう。選んでもらうためには情報提供を適切にするということで、第三者機関に委託をし、試験を行った数値を忠実に表記したり、試験証や合格証のコピーを送付できる状態にしたり、正確な数字をエビデンスに基づいて掲載したりすることを大事にしています。

カーテンという商品自体、家族を持つ、1人暮らしをするなどの転機が訪れないと購入する機会があまりない商品なので、数字だけではなく商品の見せ方から測り方など、あらゆる手を尽くして、お客様にわかりやすい情報を提供するよう意識しています。

自身の経験が社風にも反映

ーー若い方へ向けてメッセージをお願いします。

津田善朗:
私が新入社員と面接時に話すのは「まず人生があって、人生を豊かにするために仕事がある」ということです。生活するにしても趣味をするにしてもお金は必要で、人生を充実させるために仕事はあります。間違っても「仕事をするために人生がある」というわけではないので、人生を豊かにするために、いかに仕事を充実させて楽しいものにするかということを弊社は大切にしています。

たとえば、弊社では残業がほとんどありません。18時15分が定時なので、18時30分ごろにはほとんどの社員が退社しています。その時間であれば、次の日仕事があったとしても2〜3時間遊んで帰宅することができますよね。そうすると自然と心に余裕が生まれて、新しい企画を思いついたりお客様に対しても楽しく接客できたりするので、社員の心を常に充実させる環境を整えることができます。あくまで人生を楽しむために仕事をする、その代わり仕事も楽しまないと人生も楽しめないということを伝えています。

また、PDCAサイクルを回しましょうと日頃から伝えています。プランばかり考えていても数字も何も出ません。とにかくなんでもやってみて、そのあとにどのように修正行動を起こすかが重要だということを若手へ伝えたいですね。

ーー貴社で働いている方にはどのような特徴があるか教えてください。

津田善朗:
何か1つでも自信を持ってできることがある方を採用するようにしています。それは「自分1人くらいいなくてもなんとかなる」と思ってほしくないからです。

海外サイトのページ作成・広告の数字のデータ化・ややこしい在庫の管理など、自分しかできない仕事を自信を持ってやり抜いてほしいという願いがあります。面接の際には弊社で活躍する姿を描けた人を採用しています。

編集後記

従業員の心を充実させる環境づくりを忘れない津田社長。そのような環境下で働く従業員が企画開発する商品は、社内全員が自信を持って販売できる商品だろう。

今後もユーザーの期待に応える株式会社くれないに期待したい。

津田善朗(つだ・よしろう)/1980年大阪府出身。2002年に大学を卒業後約3年間、不動産業界に携わり2005年に株式会社くれないに入社。クリエイティブディレクター、ジェネラルマネージャーを経て、2020年10月、代表取締役社長に就任。