※本ページ内の情報は2024年3月時点のものです。

日本のテニス競技人口は減少傾向にあり、2018年の調査では全成人のうち、年1回以上テニスをプレーした人の割合はわずか2.5%にとどまっている。そんな中、テニス界を盛り上げようと奮闘しているのが、スポーツ用品販売や、スクールやテニス施設の運営事業を行っているKPI株式会社だ。

同社はテニス用品を取り扱うオンラインショップを運営しており、2023年の7月にはテニスプレイヤー育成と、世界で活躍できる人材育成を目的にテニスコートのほかフットサルコート計22面を整備したKPI PARKをオープンしている。自身もテニスプレイヤーとして活躍した経験があり、日頃からテニスを楽しむ人を増やしたいと次々と新たな挑戦を続ける薮田社長の思いを聞いた。

大学時代にテニスにのめり込みスクールの運営やテニス用品を取り扱う会社を設立

ーーまず貴社が運営されている施設についてご紹介いただけますか。

薮田恵士:
神奈川県の藤沢市や大和市、兵庫県にあるテニス施設のほか、今年の7月には横浜市戸塚区にテニスコートやフットサルコートが入ったKPI PARKをオープンしました。また、千葉県流山市にKPI PREMIUM LOGISTICSという物流センターを所有しています。

ーー薮田社長が会社を創業されるまでの経緯についてお教えください。

薮田恵士:
私は幼少期からテニスに興味があったのですが、習い事ができる環境ではなかったので、実際に始めたのは大学に入ってからのことでした。それまできちんとコーチに付いたこともなかったので、壁打ちから始め自己流でテニスをしていました。そんなとき当時テニスブームだったこともあり、テニススクールの方が「コーチとして教えに来てくれないか」と素人の私に声をかけてくださり、テニスコーチのアルバイトをすることになったのです。

そこでレッスンを受けた方が上達していく姿を見てテニスを教える面白さを感じ、頑張っている人たちを応援したいという思いも芽生え、テニスに関わる仕事がしたいと思うようになります。

それからアルバイトの延長でテニススクールに就職した後に独立し、テニススクールの運営と他のスクールへテニス関連商品を提供する事業を行うKTS(Kei tennis school)を創業しました。その10年後の1992年にこのKPI(ケイ・プロジェクトインターナショナル)を起業し、2015年に本社を大阪から渋谷に移転しました。

とにかく目の前のことを一生懸命やってきたことが今につながっているといった感じですね。

KPI株式会社の強みについて

ーー貴社ではオンラインショップも運営されていらっしゃいますが、EC事業を始められたきっかけは何だったのでしょうか。

薮田恵士:
もともと兵庫県の淡路島でテニス関連の商品を販売していたのですが、人口減少により経営が厳しくなり、どうにか手を打たなければと思っていました。

そんなときアメリカで開催されたテニスの試合に出場した際、インターネットというものがあると知り、ネット販売をしようと思いついたのです。

当時は楽天ができたばかりの頃で、インターネットという言葉を説明するのが難しかった時代でしたが、Amazonなどの通販サイトでものを買うのがまだ当たり前ではなかったので、オークションでテニス用品やテニスに関する書籍を出品したのが始まりです。

ーー貴社はさまざまな事業を展開されていますが、オンライン販売の売り上げは全体のうちどのくらいの構成比を占めるのでしょうか。

薮田恵士:
全体のおよそ9割を占めています。他社よりも早いタイミングでオンライン販売を始めたことが大きな理由だと思います。

ーー他にも他社にはない貴社ならではの強みはございますか。

薮田恵士:
テニスに関する商品知識とテニスプレイヤーとしての専門性があることと、システム・受注・Webデザイナーなどの優秀なスタッフがいることですね。

KPI PARKではスポーツメーカーさんとのコラボイベントを開催し、バーチャルでストア体験ができるKPI Metaverse Storeではさまざまなブランドとのコラボ商品を販売するなど、パートナーシップを強化しております。あるいは広告塔としてインフルエンサーの方に商品をアピールしていただき、情報発信にも力を入れているため、商品が店舗に並ぶ前に多くのご予約をいただいています。

2023年7月にオープンしたKPI PARKについて

ーー2023年にオープンされたKPI PARKについて詳しくお聞かせいただけますか。

薮田恵士:
KPI PARKはテニス界において世界で活躍できる選手の育成を目的に立ち上げた施設です。

私の経験を活かし、アメリカ・ヨーロッパなどのアカデミーと連携をし、グローバル人材を育てることと、セカンドキャリアの社会課題にも取り組みます。

また、さまざまなスポーツメーカーさんがイベントを開催する場を提供することで、日頃からご協力いただいている企業の方々に恩返しができればと思っております。

ーーテニスプレーヤーの選手育成のためにこの施設を作られたということですが、テニスコートだけでなくサッカーグラウンドも整備されているのですね。

薮田恵士:
もともとはすべてテニスコートにする予定だったのですが、せっかくなら多くの方に利用してもらおうとサッカーグラウンドも作りました。横浜FCさんのエリートプログラムやサッカー教室で使っていただいております。

現在は日本代表チームトレーナーの監修のもと、トレーニングジムも建設中で、テニス以外のスポーツに従事されている方も楽しめる施設を作ろうと計画しています。さらに今後はランニングステーションをはじめ、各種スポーツ施設も開設できればと思っています。

国内のテニス人口を増やす取り組みについて

ーー日本では日頃からテニスをプレーする方が減少していますが、薮田社長はこの状況をどう受け止めていらっしゃいますか。

薮田恵士:
おっしゃる通り日本のテニス人口は年々減少しています。屋外のスポーツは夏は暑くて冬は寒いため、卓球やバトミントンなど屋内のスポーツを選ぶ学生さんが増えていますね。昔で言うと上皇后の美智子様がテニスをされていたことからテニスブームが起き、近年では錦織圭選手や大坂なおみ選手が活躍した時期は注目されましたが、次の世代のテニスプレイヤーを期待している状況です。

ただ、テニスを日常的に行うことで健康寿命が伸びるという評判が広まり、ヨーロッパやアメリカ、東南アジアではテニス人口が増えています。海外ではテニスが生活の一部になっているように、日本でもテニスを日常的にプレーする方を増やしていきたいと思っています。

そのために世界で活躍できる選手を育て、日本の方にもう一度テニスに注目してもらうことが私の一番の目標です。選手の育成を目的としたKPI PARKを作ったのも、海外選手と肩を並べるような強い選手が出てくることが、テニス業界にとって一番インパクトがあると思ったからです。

私自身もコロナ禍の前は世界選手権やアジア選手権に毎年出場し、各国の選手たちとの交流を深めてきましたが、今後は新たなスタンスで取り組みたいと思っています。

ーー貴社ではスクールの月額費用を協賛会社が負担するスカラシップ制度を取り入れてらっしゃいますね。

薮田恵士:
KPI ACADEMYのプロフェッショナルクラスのレッスン料は月額約12万円(※回数やコースによって異なる)と決して安い金額ではないので、才能はあるけれどレッスンを受けるのに余裕がないという子どもたちもいます。

そんな子どもたちを支援するため、私たちの思いに賛同してくださる企業様にご協力いただくスカラシップ制度を始めました。人数制限もあるのですが、レッスン費の負担が軽減されることで全国から優秀な人材を集められればと思っています。

ーー最後にこの記事を読まれている10代・20代の方々に向けてメッセージをお願いします。

薮田恵士:
若い方々には自分がやりたいことをやってもらいたいと思います。自分がやりたいと思ったことをやるのがその人にとっても一番良いですし、その熱量が世の中も良い方向に引っぱっていくと思っています。

編集後記

大学生の頃にテニスの魅力を知り、これまでテニスに関わる仕事に携わってきた薮田社長。インタビューからも薮田社長のテニスへの情熱が伝わってきた。世界で活躍できる選手の育成をはじめ、新たな挑戦を続けるKPIの努力は必ず実を結び、テニス界を盛り上げてくれることだろう。

薮田恵士(やぶた・けいし)/1961年兵庫県生まれ、1992年ケイ・プロジェクトインターナショナル株式会社を設立。”頑張っているプレーヤーを全力で応援し続ける”というミッションのもと、さまざまな事業を展開。楽天・Yahooなどのショップ・オブ・ザ・イヤーなどを数多く受賞している。2023年7月9日には、横浜にテニスコート、フットサルコート計22面を有した「KPI PARK」をオープンした。