※本ページ内の情報は2024年4月時点のものです。

岸田文雄首相が掲げる経済政策「スタートアップ育成5か年計画」が2023年から本格的に始動したことで、起業家の増加に追い風が吹いている。

資金調達の難しい起業家を支援するべく、日本初の株式投資型クラウドファンディングに乗り出したのが株式会社FUNDINNOだ。個人投資家の圧倒的な登録数を誇る同社の累計契約額は100億円を超え、国内シェアNo.1※に輝いている。

同社代表取締役CEOの柴原氏に、創業までの経緯と新たなビジネスに参入するに至った理由、今後の展望などを聞いた。
※日本証券業協会HPより

孫正義さんに憧れ、起業の道を目指しはじめた高校時代

――起業しようと思われたきっかけは何ですか?

柴原祐喜:
私が17歳の頃、ソフトバンクの孫正義さんが華々しくご活躍されているのを目の当たりにし、1人の人間が社会を大きく前進させることに憧れを感じたところから始まりました。

サッカーを通して、チームで何かを成し遂げる面白さを体感していたので、社会に出たらチームをつくり、社会の変革を担う仕事がしたいと思い、起業を志したのです。

――高校卒業後は留学されていますが、留学から会社設立までの経緯をお聞かせください。

柴原祐喜:
起業を目指すためには、シリコンバレーを見るべきと考え留学を決めました。

当時は、大学に行くという意欲よりも単純に世界をみたいと考えていました。当然、米国には学生ビザで入国をしているので働くことはできません。そのため、大学に進学しようと決めました。無事に合格をしましたが、勉強をしてこなかったためか、勉強の面白さにのめり込んでしまい、気付けば大学院まで進学をしていました。

目的を見失い「このままではまずい」と感じ、改めて起業するためには何をするべきか考えました。起業を決意し、2012年にシステム開発・経営コンサルティング会社を設立しました。

英米に注目して発掘した日本初のサービス

――日本初である「株式投資型クラウドファンディング」にはいつから目を付けていたのですか?

柴原祐喜:
弊社は「フェアに挑戦できる未来を創る」というビジョンを掲げています。日本での起業が難しい理由として、起業したい人にリスクマネーが供給されないという課題があると感じていました。

そこで海外に目を向けてみると、2014年頃のアメリカやイギリスでは、スタートアップ企業に個人が直接投資できるサービスとして「株式投資型クラウドファンディング」という現在のビジネスモデルとなったサービスが出始めていました。

日本のベンチャー企業による資金調達のむずかしさを解決する手段の1つとして、このサービスが活用できるのではないかと思い、参入を決意したのです。


――創業時の印象的なエピソードがあればお聞かせください。

柴原祐喜:
創業当初、日本での金融商品取引業としての登録にとても苦労した覚えがあります。新しくできたばかりの法令のため、事例が1つもなく、自分たちで法令の根拠や基準を整理して登録する必要があったため、さすがに骨が折れましたね。

すぐに取得できるかと思いきや、結局準備を開始して1年半〜2年程かけて登録が完了しました。その間、もちろんビジネスを進めることはできないのですが、投資家の方に登録していただくためには、金融知識を有する人材を社内に配置しておかねばなりません。

そのため、キャッシュアウトがどんどん続き「このまま金融商品取引への登録もできないまま会社が潰れてしまうのでは」と肝を冷やしました。

無事に登録が済み、ローンチした瞬間は非常に嬉しかったですね。当然スタート地点に立っただけですので、そこからまた大変なことが次々起こり、解決したところでまた次の課題…と繰り返すのですが、1つ乗り越えるたびに難易度が上がり世界が広がっていくので、次に進む瞬間というのはやはり楽しいものです。

テレビCMをきっかけに急拡大、3つの事業でさらなる飛躍へ

――全く新しいサービスをスタートさせるにあたって、市場からの風当たりが厳しかったのではありませんか。

柴原祐喜:
業界に参入した際は、スタートアップへの投資というところで競合として見られてしまい、受け入れてもらうまでに時間がかかりました。今でもすべての方々に納得してもらえているとは思えませんが、しっかりと成果を出すことで「競合」ではなく「協業」できるような関係を積極的につくっていくことが弊社の課題です。

――業界に受け入れてもらえたターニングポイントはありましたか?

柴原祐喜:
現在執行役員の向井が入社した頃が、会社として大きく伸びたタイミングでした。

彼の経験や人脈をもとに、広告宣伝費を大幅に上げてテレビCMなどの大規模マーケティングを展開したことで、投資家様の数が急増しました。その後もトラックレコードを更新し続けたことで、市場に受け入れられるきっかけとなったのかなと思います。

――今後の展望についてお聞かせください。

柴原祐喜:
創業当初から打ち出している「フェアに挑戦できる未来を創る」というビジョンにしっかりとコミットしていきたいと思っています。

起業家が挑戦しやすい環境を追求していくための手段として、現在3つの事業を推進しています。

1つ目は投資家様目線として、スタートアップ株の購入・管理・売却機能を実装したプラットフォームの展開。

2つ目に事業者様目線では、資金調達の手段としてご利用いただいています。

最後に「FUNDINNO MARKET【ファンディーノマーケット」という、未上場企業の株式取引ができる株主コミュニティの運営です。

しかし、これではまだインパクトのあるリスクマネーの供給に至っていないと考えており、今後もさまざまな手段を使いながら3事業の推進とともにビジネスを展開していきます。

編集後記

国内での株式投資型クラウドファンディングのパイオニアとして、注目の的となっている株式会社FUNDINNO。今後の採用について話を聞くと、エンジニアの募集に力を入れていくという。

「金融業界は比較的自由度が低いため、多くのエンジニアが避ける傾向にありますが、日本で初めての事業に取り組んでいる、我が社のシステムの面白さをぜひ知ってほしい」と熱意を込めて話した。「フェアに挑戦できる未来を創る」というビジョンを掲げる同社の挑戦はこれからも続く。

柴原祐喜(しばはら・ゆうき)/2009年、カリフォルニア大学卒業。2012年、明治大学大学院グローバルビジネス研究科修了。研究テーマは「未上場企業の価値算出」。2012年、システム開発会社を設立。未上場企業の環境を盛り上げていきたいとの思いで、現COOの大浦学とともに、2015年、株式会社日本クラウドキャピタルを設立。代表取締役CEOに就任。日本初の第一種少額電子募集取扱業者として、株式投資型クラウドファンディング「FUNDINNO」を開始する。