私たちの生活に必要なエネルギーをつくる太陽光や風力の発電所。
株式会社スマートエナジーは、そんな再生可能エネルギー発電所の運営・保守を行う企業だ。太陽光O&M(運用・保守)サービスでは業界トップシェアを誇り、全国展開している。
同社の代表取締役社長である大串卓矢氏に、社長に就任するまでの経緯や事業内容、採用・育成状況、今後の展望などについて、話をうかがった。
業界最大手企業の社長に就任するまで
ーー貴社の社長に就任するまでの経緯を教えてください。
大串卓矢:
幼少期から周りの空気や水などに敏感な子どもで、環境というものに興味を持っていました。
高校生の頃は、砂漠化や森林伐採といった環境問題が話題になってきたことがきっかけで関心度がさらに高まり、「将来は環境に関わるキャリアに進みたい」と思うようになりました。
大学では環境学を学び、就職の時期を迎えた頃に、ちょうど入社をしたいと考えていたコンサルティング会社が環境サービスを始めたことを知りました。そこに入るために有利な資格となる会計士の勉強をし、念願だったPwCへの入社を果たすことができました。
最初は会計士として働いていましたが、6年ほど経った頃に新たに立ち上げられた環境サービスの部署へ異動することになりました。そして経験を積んだ後、36歳の時に弊社を起業することにしたのです。
ーー貴社の事業内容について教えてください。
大串卓矢:
弊社は環境問題を解決する会社として、「太陽光と風力のO&M」「発電所仲介」「新電力」「アセットマネジメント」「環境経営コンサルティング」の5つの事業を行っています。
その中でも1番売上が大きいのは、発電所の点検や管理といった運用保守を行うO&M事業です。
今は日本でトップクラスの実績を持っていますが、将来的には世界でトップとなれるよう今後も成長させていきたいと思っています。
ーー貴社が軌道に乗ったターニングポイントはいつ頃でしたか?
大串卓矢:
創業してから5年間で、「環境に価値をつける」という目標を立て、経済産業省と協力して排出量取引制度を導入したことが軌道に乗ったきっかけでした。
これは、温室効果ガスの削減をより容易にするために、国や企業が定めた温室効果ガスの排出枠を超過する企業と下回る企業との間で取引する制度です。
この制度が順調に伸びていき、海外に子会社をつくることもできたので、排出量取引制度は弊社の成長や拡大への大きなターニングポイントだったと感じています。
新しい人材の採用と人材育成環境を強化する
ーー貴社の採用や育成環境について教えてください。
大串卓矢:
スキルの高い方を採用することも大事ですが、弊社に入社した後にスキルを磨き続けることも重要ですので、環境づくりにも力を入れています。
60歳を定年としている企業が多い中で、弊社の定年は65歳と長いですが、その結果、ベテランの技術者の方が中途入社しやすく、活躍しやすい社風となっています。
頼れるベテラン社員が多く働いており、電気主任技術者の資格を持つ社員の数も多いため、若手の方が安心して経験を積みスキルアップしていける環境が整っていると思います。
ーー営業を採用する上で求める人物像があれば教えてください。
大串卓矢:
大きく分けて2つあります。
1つ目は、弊社のサービスの対象となる太陽光や風力についての知識を持っている方です。
そして2つ目は、知的好奇心があり、いろいろなことを学習していく姿勢を持っている方です。
弊社は今後、発電所が壊れてからメンテナンスをするのではなく、「壊れる前の予防として提案を行う」という提案型の事業展開をしていきたいと考えています。
そのためには、お客様の質問や要望に応えるための知識をしっかり身につけて、技術にも詳しい営業となれる方に入社してほしいと思っています。
AI監視システムで業界内の問題解決に貢献する
ーー新しい取り組みがあれば教えてください。
大串卓矢:
11月中旬に、太陽光発電所向けのAI監視システムをリリースしました。
近年、「太陽光発電で使われている銅線が高く売れる」という理由で盗難が増加しています。
人の動きを正確に検知するAI技術であれば24時間監視をし続けられるので、そのシステムを使って「業界内の問題解決に貢献していきたい」と思っています。
世界ナンバーワンのグローバル企業を目指す
ーー今後の展望について教えてください。
大串卓矢:
弊社は世界ランキングでトップのグローバル企業となることを目指しています。
海外展開を推進するべく、現在、同じくO&M事業を展開する他社を積極的に買収して事業規模を拡大しています。
それに合わせて、外国籍人材の採用も積極的に行い、同時に適切な人員配置を実施できる体制も整えています。
編集後記
トップシェアを誇るO&M事業という強みを持ちながら、AI監視システムという新たなサービスもリリースし、業界内の問題解決に貢献する株式会社スマートエナジー。
世界でナンバーワンの企業となることを目指し、事業強化や体制強化にも力を入れている。
さらなる発展と成長に向けて努力と挑戦を続ける株式会社スマートエナジーに期待だ。
大串卓矢(おおぐし・たくや)/大学にて環境学を専攻、公認会計士資格を取得し、PwCに入所。排出権取引関連事業を立ち上げ、PwC気候変動チームリーダーを務める。2007年株式会社スマートエナジーを設立。経済産業省国内Jクレジット制度発起委員会事務局長、公認会計士協会排出量取引専門部会長を歴任するなど、CO2クレジット制度(温室効果ガスの排出削減量や吸収量を「クレジット」として国が認証する制度)の立ち上げに寄与した。気候変動問題の解決に技術・金融・ITの知力を使い、ビジネスで解決する手法を探求している。