エスディーテック株式会社は、顧客企業からのプロダクトやサービスのデザインに関するオーダーに応え、製品やソフトウェア、機械学習システムに関するデザインと開発を展開するソフトウェアベンダーだ。
また、「TRITO」という自社ブランドを持ち、顧客の製品開発を強力にサポートする製品が揃う。たとえば、機械学習を活用したシステム構築のためのツールキットである「TRITO Comperio」や、VRで車内空間などを再現してHMI(ディスプレイなど人間と機械の接点となるヒューマンマシンインターフェイスのこと)の検証・評価ができるシステム「TRITO VR」が代表的だ。
同社の代表取締役社長である川端一生氏に、起業のきっかけや事業の強み、今後のビジョンなどについて話をきいた。
海外有名企業にも対抗できる会社を立ち上げようと起業
ーー1社目は大手電機メーカーにソフトウェアエンジニアとして入社されていますが、もともとITの道に進もうと決めていたのですか?
川端一生:
舞鶴工業高等専門学校では電気工学科を専攻し、学ぶ中で「ソフトウェア開発をしたい」という思いを抱くようになりました。
そして、自宅から通勤しやすくて転勤がないという働きやすい環境を重視して大手電機メーカーの子会社へ入社を決めました。
ーー起業することを決めたのはいつ頃ですか?
川端一生:
27歳の頃に、株式会社エイチアイという会社を起業しました。
1社目の大手電機メーカーのときからシステム開発・運用の業務を担当する中で、UI(ユーザーインターフェース)の開発に興味を持つようになりました。日本には多くのデザイン会社がありますが、エンジニアが少なくてテクノロジーに弱い会社がほとんどです。
しかし、海外にはテクノロジーにも強く、世界でトップレベルのデザインコンサルティングを手掛けるIDEOという会社があります。もともと、この「IDEOに対抗する会社をつくりたい」という思いを持っていました。
そして、エイチアイが上場して数年後、エイチアイを離れることになったタイミングで「より人にフォーカスしたデザイン・UX(ユーザーエクスペリエンス)の開発を手掛ける会社を起業しよう」と決めました。
デバイス寄りのデザインエンジニア会社であることが強み
ーー他社と異なる貴社の特徴や強みを教えてください。
川端一生:
デザインエンジニアリングの会社という点が強みです。デザインエンジニアリングの会社は最近でこそ増えてきましたが、その多くがスマホアプリやウェブの分野を扱っています。
しかし、弊社はスマホアプリやウェブアプリはもちろん自動車や製造業の組込機器、カラオケのリモコン端末など、スマホアプリではないデバイス寄りの分野まで守備範囲を広く持っているのが特徴です。
協業して利益を生み出す循環体制をつくりたい
ーー貴社の将来のビジョンを教えてください。
川端一生:
他の会社と協力して利益を生み出す事業パターンを増やしていく予定です。弊社のデザイン力と開発力を、他の企業の力と組み合わせてユーザーに喜ばれるものをつくり、継続的に利益が発生する循環につなげていこうと動いている最中です。
また、デザインの重要性を日本でもっと広めたいと思っています。デザインとは本来、企画や提案などの上流工程も含めたものであり、ソフトウェアを開発する上でその重要性はとても高いのです。
この重要性に共感していただける企業があれば、3〜5年後のリリースを目指したプロダクト開発を一緒に進めていきたいと思っています。
ーーその将来のビジョンのために今後注力したいことがあれば教えてください。
川端一生:
1つ目は、新規取引先の開拓です。弊社のサービスに喜んでくださるお客様は他にもたくさんいると思っていますが、まだその全てにアプローチできていません。
そして、そのために必要な営業力やマーケティング力が弊社にはまだ足りていないと感じているため、ここを強化して新規取引先の獲得につなげていこうと思います。
2つ目は、製品力のさらなる向上です。デザイン力の強化はもちろんですが、その基盤となるシステムの品質向上にも力を入れていきます。
どれだけデザインが優れていても、ネットワークが切れたり品質が悪いとデザインの良さが伝わらないので、デザインとシステム両方の品質を向上させ、リリース後の製品に対するサポートやメンテナンスのレベルも上げていきたいと思っています。
ロボットや生成AIなどの最先端分野の支援にも携わりたい
ーー将来的にはどのような分野に参入したいと考えていますか?
川端一生:
ロボットの分野で弊社が役に立つ機会があると思っています。
今までのユーザーインターフェースは人が操作して動かすものがほとんどでしたが、ロボットの分野では自立的に動くシステムとコミュニケートすることで動かしていきます。ここが今までと大きく変わる点なので、そのUIUXに関して弊社の力が活かせる領域は広いと思っています。
最近では生成AIも登場して、今後はそれを活かすためのUIUXも出てくるでしょうから、そのために何ができるのかを考えると将来がとても楽しみです。
ユーザー視点を大切にする多様性に溢れた職場環境
ーー最後に読者である学生や若手に向けてメッセージをお願いします。
川端一生:
弊社はユーザー視点を大切にしている会社です。「自分がユーザーであれ」という言葉をモットーに、社員にもユーザーの意識を持って世の中や業務を見るように促し、プロ意識を持って取り組むように伝えています。
また、外国籍の社員も活躍できる、多様性に満ちたグローバルな環境であることや、育休復帰率が100%で女性社員が働きやすい点も魅力だと思います。
弊社は一緒に働いていただける社員を通年採用しています。少しでも興味を持った方がいらっしゃれば、ぜひ積極的に応募してください。
編集後記
エンジニア経験の中でもUIに興味を持ち、人にフォーカスしたUIUX事業で多くの企業を支援してきた川端社長。
現状に甘んじず新規取引先の開拓や製品の品質向上などにも取り組み、さらにはロボットや生成AIの領域でも支援を行えるよう準備を進めている。
さらなる事業の発展を見据えて努力と挑戦を続けるエスディーテック株式会社の活躍が楽しみだ。
川端一生(かわばた・かずお)/1962年滋賀県出身、舞鶴工業高等専門学校卒業。大手電機メーカーにソフトウェアエンジニアとして入社。業務でUI開発を担当したことをきっかけに、UIが人の心理に与える影響に興味を持ち、UIとUX重視の開発を行い、携帯向け3Dエンジンの開発などを手掛けた。2015年にエスディーテック株式会社を設立。