株式会社アパレルウェブは、アパレル・ファッション業界に特化したWEBマーケティングを提供している会社だ。
蓄積されたノウハウと企画から構築・分析まで行うワンストップ対応を武器に、今まで多くの企業を支援してきた。近年ではカナダのECプラットフォーム「Shopify(ショッピファイ)」にも力を入れており、2022年には「Retail Partner of the Year 2022」を受賞している。
同社の代表取締役CEOである千金楽健司(ちぎらけんじ)氏に、起業のきっかけや苦労したエピソード、事業の強み、今後力を入れていくこと、求める人物像などについて話をきいた。
EC事業の難しさと事業を始めるタイミングの大切さを実感
ーー貴社を起業するまでの経緯を教えてください。
千金楽健司:
もともとファッションが好きだったこともあり、大学卒業後は下着類を扱うアパレル会社へ入社しました。とても良い会社だったので独立するつもりはありませんでしたが、世の中にYahoo!ショッピングが出てきたことが起業のきっかけとなりました。
当時、ヤフーの営業マンからYahoo!ショッピングの案内を受けて出店することになり、インターネットの可能性を強く感じました。
「これからはインターネットの時代がくる。それを使って大好きなファッション業界にイノベーションを起こせるのではないか」と思い、17年間勤めた会社を辞めて40歳で起業しました。
ーー起業後に苦労したエピソードがあれば教えてください。
千金楽健司:
2010年頃にシンガポールの人たちに日本のアパレルのECモールを知ってもらおうと思い、産業革新機構などから出資をいただいてシンガポールに子会社をつくりました。
店舗も開設し、年商規模が約2億3000万円になるまでに成長しましたが、当時のシンガポールでEC事業を行うのは早すぎたようです。店舗の売上は良かったのですが、EC事業の売上は伸びませんでした。
インターネットの世界は変化が激しく、新しいことには早く取り組んだ方が良いと思い込んでいましたが、「ビジネスを行うにはタイミングも大切である」ということを学びました。
EC事業にいち早く取り組み、ワンストップのソリューションを提供
ーー貴社がこれまで成長し続けてこられた要因は何だと思いますか?
千金楽健司:
1つ目は、ファッション業界に特化していることです。アメリカやヨーロッパでもECブームはファッション業界から始まっています。弊社は日本のファッション業界で最初にネットショップを取り扱うことでアドバンテージを得られ、ECのノウハウを早く手に入れることができました。
2つ目は、ワンストップのソリューションを提供できることです。弊社の事業はECのカートシステムやメール配信システムなど何か特定のカテゴリーに特化したものではなく、企画・改善・構築・運用・プロモーション分析などの全てに対応するものです。
おかげで解約も少なく、長くお付き合いできるクライアントが多い点が、厳しいIT業界で生き残ってこられた理由だと感じています。
ーー当時はEC事業を始めることへの反対意見はありましたか?
千金楽健司:
当時はまだネットで物を買うことが一般的ではなく、店舗のお客様をネットに取られてしまうという印象を持つ店長が多かったため、反対意見もたくさんありました。
しかし、アメリカの全米小売業大会の記事で「ネットショップで買ったお客様は店舗でも買うようになり、来店率が2〜3倍上がる」という情報を見かけました。
実際に日本でも検証したところ、まさにその通りだったため、全てのクライアントに説明して少しずつ理解を得ることができました。また、その頃には実店舗とネット通販を融合させる「オムニチャネル」という言葉が日本に定着するようにもなっていました。
「Shopify(ショッピファイ)」の活用で会社の新たな強みをつくる
ーー今後力を入れていくことがあれば教えてください。
千金楽健司:
コロナ禍前から「Shopify(ショッピファイ)」のソリューションを提供するサービスへと一気に舵を切りました。オムニチャネルも、今は「OMO(Online Merges with Offline)」という言葉に進化しています。また、Shopifyを使った「越境EC」や「BtoB」などサービスも広がっています。
このような新しいカテゴリーをお客様に便利に使っていただけるようにと思い、Shopifyに力を入れ始めました。
Shopifyのパートナー企業は日本だけで2,000社あり、そのうち上位パートナーである20社のうちの1社に弊社が選ばれています。(2024年2月時点)日本のShopifyにおけるソリューションサービスの中で弊社が先頭を走っている点も強みの1つだと思っています。
知識やスキルよりも好奇心とコミュニケーション能力が大事
ーー貴社が求める人物像を教えてください。
千金楽健司:
1つは、あらゆることに興味を持てる方です。業界知識やIT知識よりも、お客様に喜んでもらうことや、ITやECに関わるソリューションに対して興味を持っていることがとても大事だと思っています。
2つ目は、コミュニケーション力がある方です。弊社の仕事はあらゆる場面でコミュニケーションから始まるため、スキルの高さよりもコミュニケーション力があるかどうかが大切です。
「全員営業マンであれ」という指針を掲げ、お客様としっかりコミュニケーションをとり、感謝の気持ちを持って接するよう社員に伝えています。
働きやすく専門性を磨ける環境に魅力を感じた方はぜひ弊社へ
ーー最後に若者に向けてメッセージをお願いします。
千金楽健司:
弊社にはリモート会議用の部屋や社員同士がコミュニケーションをとりやすくするためのバーカウンター、商品撮影に使えるスタジオなどがあり、お客様にも便利に使っていただける居心地の良い環境が整っています。
また、リモートワークも取り入れており、自由な社風で働きやすいと思います。このような環境で、ECやウェブの最先端の知識やビジネススキルを学び、どこの会社に行っても通用する力を身につけることができます。
少しでも弊社に興味を持った方は、ぜひ応募してほしいと思います。
編集後記
「Yahoo!ショッピング」との出会いでインターネットの需要が加速することを早期に察知し、業界内でいち早くEC事業に参入した千金楽社長。
はじめはうまくいかず赤字にもなり苦労の連続だったが、ECのノウハウとワンストップのソリューションを武器に多くのクライアントを支援し続けてきた。
今後は「Shopify」も活用し、さらなる事業の成長・発展に向けて株式会社アパレルウェブの飽くなき挑戦は続いていく。
千金楽健司(ちぎら・けんじ)/1960年埼玉県生まれ、中央大学卒業。大学卒業後、インナーアパレル卸の株式会社東京ダンケ(現在は解散)に入社。1995年、同社の専務取締役に就任。2000年に株式会社アパレルウェブを設立、代表取締役に就任。