※本ページ内の情報は2026年3月時点のものです。

開発・設計工程で使用されるシミュレーションソフトウェアの販売や、技術サービスを提供するサイバネットシステム株式会社。同社は世界中から優れたソフトウェアを発掘し、顧客の課題解決に貢献する高い技術力で、業界内で確固たる地位を築いている。2024年に代表取締役社長執行役員に就任した白石善治氏は、親会社である富士ソフトでトップセールスとして活躍した経験を持つ。個人プレーではなく、チームで動くことの重要性に気づいたという同氏に、社員一人ひとりが挑戦し続けられる組織づくりと、日本のものづくりDXを牽引する今後の展望について話を聞いた。

チームの重要性に目覚めたキャリアの原点

ーー社長のキャリアの原点についてお聞かせください。

白石善治:
私のキャリアは、弊社の親会社である富士ソフト株式会社に新卒で入社したことから始まります。当初は技術職として採用されましたが、会社の「営業力を強化したい」という方針を受けて、営業職に異動することになりました。その後は金融事業などを担当し、ものづくりそのものよりも、サービス業を中心としたキャリアを歩んできました。

ーー営業時代に得た学びで、特に印象に残っていることは何ですか。

白石善治:
若い頃は「個人の力」を強く信じており、自分の考えを軸に行動することでトップセールスになることもできました。しかし、自分中心の視点ではどうしても視野が狭くなります。その結果、「もっと大きなビジネスを仕掛けたい」と思っても個人の力だけでは成し遂げられないという壁に直面したのです。

個人プレーはスピード感こそありますが、長続きしません。自分の能力やペースを基準に周囲へ無理をさせてしまうと、事業を継続的に成長させることはできないと気づきました。この経験から、チームで動くことの重要性を強く意識するようになりました。そのための環境をつくることも大切です。当時の学びが、現在の経営の基本となっています。

責任・権限・報酬の一致を目指す人事制度の改革

ーー貴社の代表取締役に就任された経緯について教えてください。

白石善治:
親会社である富士ソフトから「事業成長をさらに加速させてほしい」という命を受け、2021年に弊社の副社長に就任しました。その後、2024年に代表取締役に就任し、現在は経営の舵取りを担っています。

富士ソフト時代はサービス業を中心とした活動をしてきましたが、弊社は創業当初から取り組むCAE(※)をはじめ、ものづくりに特化した専門性の高い会社です。外部から来たからこそ感じる技術力や特徴を活かしながら、さらなる成長を目指しています。

(※)CAE(Computer Aided Engineering):試作品によるテストや実験の代わりにコンピュータ上で設計したモデルを用いてさまざまな物理現象をシミュレーションし、分析する技術。

ーー社長に就任後、どのような取り組みに力を入れていますか。

白石善治:
大きく分けて「人事制度の改革」と「働きやすい環境づくり」という二つの点に取り組んでいます。

まず人事制度については、明確な戦略のもと、組織と個人の責任・権限・報酬が一致するように制度を整えています。役割に応じて、個人の頑張りと成果が正当に評価される仕組みを目指しています。あわせて、社員が最大限のパフォーマンスを発揮できる環境づくりも進めているところです。具体的には、出社とリモートワークを組み合わせたハイブリッドな働き方を可能にしています。子育てや家族の事情、あるいは趣味といった、一人ひとりのライフステージや価値観に合わせた柔軟な働き方を支援しています。

また、失敗を恐れずにチャレンジできる心理的に安全な環境をつくること。これも経営者として特に心がけていることです。お客様も気づいていないような課題に踏み込むとき、失敗はつきものです。だからこそ、社員には「心配しないでチャレンジして。最後は私たちがいるから」と常に伝えています。

さらに、管理職との個別面談を通じて現場の課題を直接ヒアリングし、経営に直結させてスピード感を持って解決することを心がけています。

製造プロセス全体を支える二つの戦略の柱

ーー貴社の事業の強みについて、どのようにお考えでしょうか。

白石善治:
もともと営業力の強い会社というイメージを持っていましたが、入社して実感したのは、技術力が非常に高いということです。単なるITスキルだけでなく、数学や物理学といった科学技術の知見を持つ社員が多く在籍していますし、さらに欧米には開発専門のグループ会社も有しています。こうした専門性の高い技術者集団がいるからこそ、お客様の課題の本質を捉えたソリューションが提供できるのです。また、お客様の製造プロセスを深く理解している営業と技術の両輪があることが、弊社の最大の強みだと考えています。

ーー現在、特に注力されている事業戦略について教えてください。

白石善治:
現在の事業戦略は「デジタルエンジニアリング」と、それを支える「デジタルスレッド」という二つの軸を柱に据えています。「デジタルエンジニアリング」とは、シミュレーション技術を核として、企画から設計、製造、運用に至るものづくりの全プロセスをデジタル化し、高度化・効率化を目指す取り組みです。そして「デジタルスレッド」は、設計開発・製造・品質管理などの各工程でバラバラに管理されているデータを一元化し、活用することで、開発のスピードと品質を飛躍的に向上させます。

この二つを柱に据える戦略には、お客様がものづくりのデジタル化を強く進めているという背景があります。これらに注力することで、お客様のものづくりDXを支援していきます。

ーー事業戦略を支える技術は、どのように選定しているのですか。

白石善治:
弊社には、特定の製品を調査する専門の部門はありません。現場の社員が常に世界中の論文や最新の技術動向にアンテナを張っており、お客様の課題解決に最も適した技術やソリューションを探しています。

こうした体制の強みの一つとして、世界中の最新技術を導入するスピード感が挙げられます。たとえば、ヨーロッパの小さな研究所から生まれたスタートアップ企業に、現場の社員が直接連絡を取ります。そして、半年後には日本でその技術を提供する、といったスピード感で動いています。これは、現場主導だからこそ可能な取り組みです。

不安を取り除く情報のオープン化と可視化

ーー経営改革を推進するうえで、大切にされていることは何でしょうか。

白石善治:
「情報の透明性」と「可視化」です。会社の方向性や私が今何を考えているのかを、全社ミーティングなどの場で包み隠さず話すようにしています。また、広報チームには社内報で各部署の活動を積極的に発信してもらい、組織の可視化を進めています。

改革には不安がつきものですが、目指す方向を明確に共有することで、社員の不安をできる限り取り除き、チームとしての一体感を醸成したいと考えています。

ーー若手社員にはどのようなマインドで仕事に取り組んでほしいとお考えですか。

白石善治:
弊社に来てくれる皆さんは、大学で物理学やシミュレーション技術をはじめとした、さまざまな専門知識を身につけています。その知識や経験を過小評価せず、もっと自信を持ってほしいです。若手だからこそ、主体的に表現し、積極的に行動することを期待しています。

また、経験を積み重ねることを重視してほしいです。ChatGPTのようなツールで簡単に終わらせるのではなく、嫌なことも含めて、一つひとつの経験をしっかり積み上げていただきたいと考えています。

ーー今後、どのような方と一緒に働きたいとお考えですか。

白石善治:
「思い」と「行動」、そして「言葉」が一致している方です。そして、自分の軸をしっかりと持っている方に来ていただきたいです。弊社には、先輩やチームが手厚くフォローする文化があり、自己研鑽に励みながらのびのびと成長できる環境があります。ものづくりを通して成し遂げたいことがある、という力強い意志を持った方々と一緒に、未来を創っていきたいと考えています。

編集後記

トップセールスという個人の成功を収めながらも、その経験からチームで成果を最大化する重要性を見出した白石氏。その確固たる理念は、社員の挑戦を後押しする心理的安全性や、風通しの良い組織文化として組織に深く浸透している。また、世界中の最新技術を現場の力で取り込み、顧客の課題解決にどこまでも寄り添う姿勢は強みだ。強固な組織力と現場力は、顧客企業の製造プロセス全体を支援することで、日本のものづくり産業の未来を切り拓こうという、同社のビジョンの土台となっている。同社はこれからもリーディングカンパニーとしての役割をさらに強化していくことだろう。

白石善治/1971年福岡県生まれ。1992年に富士ソフト株式会社に入社し、2012年執行役員、2015年常務執行役員、2018年取締役執行役員に就任。2021年サイバネットシステム株式会社 取締役副社長執行役員、2024年代表取締役 社長執行役員(現任)。