※本ページ内の情報は2024年7月時点のものです。

2009年に創業した株式会社エージェント・スミス。エンジニアがクライアントの情報システム部門の一員となってIT企画やシステムの要件定義といった上流からシステムの設計・構築・運用、PMやIT企画、アーキテクト代行といった人材支援まで、情報システム業務をトータルでサポートしている。

創業から右肩上がりの成長を続け、近年は昨対比120%の成長率を継続している同社。代表取締役の山菅利彦氏に、その理由と今後の展望を聞いた。

大手Slerに在籍して感じたクライアントとベンダーの考え方のギャップ

ーーもともとIT業界に興味があったのですか?

山菅利彦:
IT業界に特別興味があったわけではありませんでした。私が大学生くらいの頃は情報工学とかコンピューターといった言葉はありましたが、現在のように一般的ではありませんでした。ただ、IT業界は変化が著しく、伸びしろがある分野だと思い、大手のSlerに就職しました。

ーーそこから起業に至った経緯を教えてください。

山菅利彦:
34歳で取締役になり経営の一端を担うようになったとき、日本の企業はIT投資効率が良くないと感じました。SIという仕組みは、クライアントが何十億、何百億というお金を支払ってシステムのスコープを決めて、設計から構築、完了まで一貫してメーカーやベンダーに依頼しますが、メーカーやベンダーは依頼を手早く効率的にこなすほど利益は大きくなり、クライアントは沢山の機能を搭載した方が得をするわけです。

「クライアントはいいものをつくってほしい、ベンダーは少ないワークロードで完結させたい」という双方の相反する思いがあり、クライアントとメーカー・ベンダーは、利害が完全に相反する関係にあります。

設計から納品まで一括で発注するSIという手法が1980年代に生まれて、そのスキームが継続してきました。その結果、日本の市場では「システム構築はお金を払ってベンダーに任せればいい」という考えが定着してしまったことがひとつの要因かと思います。

欧米では自分たちが中心となって開発構築プロジェクトを推進し、手が足りないところをベンダーに任せるというやり方が主流ですが、日本ではスコープを決めたら全てベンダーに丸投げというスタイルが横行していました。そうした状況を変えたいと思って起業しました。

クライアントの一員として、情報システム業務をトータル支援

ーーエージェント・スミスはどのような会社ですか?

山菅利彦:
簡単に言えば「情報システム部門のお手伝い」です。システムの構築や運用はもちろんのこと、企画や要件定義、更には、運用に関わる日々の業務や細かい作業もお手伝いしています。外部のベンダーではなく、お客さまの情報システム部門の一員として、「情報システムにまつわる仕事を全部やります」というスタンスで動いていますね。

設立当初、お客様からは「本当にそこまでやってくれるの?」という反応でしたが、実際にサービスを提供し始めると「便利だね」とか「楽になった」というお声をいただきました。更には、「あと何人か来てほしい」というご要望等もいただき、最初は1人~2人で支援をスタートした現場が、数十人といった規模に拡大する現場も多々あります。

ーー社長から社員に伝えているメッセージはありますか?

山菅利彦:
「Professional Statements(顧客思考・提案・成果・期待値・価値)」を念頭において、日々の仕事に取り組むよう指導しています。

加えて、大切なのは「柔軟な発想」ですね。「お客様が何に困っているのか、お客様の職場がどのような状況に陥っているのか常に洞察しながら情報収集し、お客様に刺さる提案は何かを常に考えてほしい」と、言っています。

また、若手社員には「なるべく上司や先輩とコミュニケーションを取りなさい」と伝えています。しっかり話をすることでお互いの考えが伝わるのです。社員同士が本音で話してくれることで、定着率が高まっていると感じています。

志ある仲間と、自由な環境でさらなる事業展開を

ーー今後どのような会社にしていきたいと考えていますか?

山菅利彦:
設立から右肩上がりの成長を続けており、お客さまとは継続した取引関係が続いていますが、今後は、更に多くのお客さまに弊社のサービスを享受していただきたい、弊社の良さを堪能していただきたいと思っています。

また、メーカーやベンダーに丸投げするのではなく、お客さま自身で考えてシステムの企画や要件定義をし、必要な局面でメーカーやベンダーに依頼するというスキームが本来のあるべき姿です。そのお手伝いをするのが弊社の役割だと思っています。

ーー貴社が求める人物像を教えてください。

山菅利彦:
弊社の考え方に共感できる人、頭のストレッチができる柔軟性のある人、お客さまと一緒に喜びを感じられる人を増やしていきたいと思っています。そのために人事制度も改善していますし、働きやすい職場環境の構築もしています。

弊社のビジネスモデルは案件が完了したら終わりではなく、継続していくことが強みです。お客さまと一緒に考えて、改善して、喜びを感じられるというところに大変やりがいが感じられると思っています。「自社の製品しか提案できない」といったしばりもなく、自由に仕事ができるのも弊社で働くメリットですね。

おかげさまで弊社の認知度も上がり規模も拡大してきています。本当にお客さまのためになる仕事がしたい、最高の提案をしたい、日本企業の情報システム部門のリテラシー向上に貢献したいという志を持った仲間と仕事をしたいと思っています。

編集後記

クライアントとベンダーとの間に大きな利益相反が生じているという日本のIT業界。多くの人がそうした実情にあることを薄々気づいてはいるものの、それを改善しようという動きはこれまでなかなか見られなかった。エージェント・スミスが今後IT業界を変革していくことを期待したい。

山菅利彦/1963年、栃木県生まれ。文教大学情報学部卒業。大手Sler企業に入社、34歳で最年少役員に就任し11年間役員を務めた後、2009年に株式会社エージェント・スミスを設立。現在は同社を含む5社の代表取締役社長を兼任。その他、2社の取締役および一般社団法人地域デジタル化推進協議会の代表理事も兼任している。