
昨今、サイバー攻撃に関するニュースを耳にする機会が増え、国内のサイバーセキュリティ対策は急務となっている。そんな中、優秀なホワイトハッカーの技術力で、こうした脅威に対抗しているのが、GMOサイバーセキュリティ byイエラエ株式会社だ。
疑似攻撃でセキュリティの穴を見つける独自の技術や、相次ぐサイバー攻撃への対応策などについて、代表取締役の牧田誠氏にうかがった。
セキュリティ領域に関心を持ったきっかけ。事業の礎を築いた前職での経験
ーーまず牧田社長のご経歴についてお聞かせください。
牧田誠:
サイバーセキュリティに興味を持ったきっかけは、高校生のときに自分のパソコンがハッキングされたことからでした。海外の人とチャットをしていた際、突然「君のパソコンに侵入した。今からCDドライブを開ける」とメッセージが来ました。
すると本当に、目の前のCDドライブが開いたのです。そのときはまるで魔法のようだと感心してしまい、そこからセキュリティ分野に興味を持ち始めました。
また、父親から「ソースコードレベルでセキュリティを理解している人はほとんどいない」という話を聞きます。そこでさらに関心が強まり、大学に進学して情報セキュリティの研究に取り組みました。
ーーその後のキャリアについて教えていただけますか。
牧田誠:
セキュリティに関する知見を得られ、経営についても学べる環境を求め、ソフトバンクに入社しました。この会社を選んだ理由は、2004年に大規模な情報漏えい事件があり、本格的にセキュリティ対策に取り組もうとしていたからです。
また、いずれ起業したいと思っていたため、一から事業を立ち上げ、世界的企業に成長させた孫社長のスピリットを学びたいと思い、入社を決めました。
入社2年目には、ウェブサイトのセキュリティチームの立ち上げに携わります。当時はウェブサイトのセキュリティ自体が無く、世界でも先駆けでしたね。それから気付くと5年の月日が経っていましたが、起業するにはまだ経験が足りないと感じていました。
そこでよりユーザーに近い環境で経験を積むため、サイバーエージェントに転職し、セキュリティチームを一から構築しました。
優秀なホワイトハッカーが活躍できる場をつくり、企業のセキュリティ課題を解消するため起業
ーー起業の経緯をお聞かせください。
牧田誠:
チームを立ち上げてから2年ほどが経ち、優秀すぎるメンバーに恵まれたこともあって、自分がいなくてもよい状態になっていました。そして東日本大震災やほかの要因も重なり、ずっと夢だった会社をつくることを決心しました。
起業して解決しようと思った課題は2つあり、天才ハッカーの待遇改善とお客様への適正な価格でのサービス提供です。
疑似攻撃で演習を繰り返し、鉄壁のセキュリティを保持

ーー改めて貴社の事業内容について教えてください。
牧田誠:
弊社はオフェンシブセキュリティー、いわゆる攻撃的防御の観点でサービスを提供しています。一般的なセキュリティ対策と大きく異なるのが、攻撃者の視点に立ち、保護する対象に対して擬似的な攻撃を行うことで、脆弱性の有無をチェックすることです。
弊社にはハッキングコンテストで世界1位を獲得した天才ハッカーたちが在籍しているため、高難度なセキュリティ対策を立てることが可能です。
ーー貴社が求める人物像をお聞かせください。
牧田誠:
「人に貢献したい」「人を助けたい」など、利他の精神を持っている方を求めています。そして人助けをするには、まず自分が強くなければいけないので、一定のスキルを持っていることが必須ですね。
特に弊社では、すべての分野で一定の実力を発揮できるジェネラリストではなく、卓越したスキルを持っている方を求めています。完璧な人間などいないので、欠けている部分があっても構いません。とにかくなにかに突出している方を歓迎します。
セキュリティ対策の自動化を進め、相次ぐサイバー攻撃に対処していきたい
ーーこれから改善していきたい課題についてお教えいただけますか。
牧田誠:
ここ最近、航空システムや銀行のネットワークがサイバー攻撃を受け、旅客機の運航や送金ができなくなったニュースが報道されています。しかし、これはごく一部で、他にも多くの企業などが被害を受けているのです。
総務省が運営する大規模サイバー攻撃観測網が2022年に観測したサイバー攻撃関連通信数は約5,226億パケットといわれており、これらをすべて人の手だけで対応するには限度があります。そのため、私たちがこれまで培ってきたノウハウをAIなどを駆使してプロダクトに落とし込み、人力に頼らない体制構築を進めています。
ただ、ハッカーたちの持つノウハウを、プロダクトに反映し切れていないのが実情です。そのため今後は、プロダクトの性能を優秀なハッカーレベルに引き上げるため、ソフトウェアをつくるエンジニアの採用にも注力していきたいですね。
ーー最後に今後の展望をお聞かせください。
牧田誠:
今後2〜3年は、国内のサイバーセキュリティ支援に注力していきたいですね。その後は海外展開、特に非英語圏のアジア市場から展開していく予定です。そしてゆくゆくは、世界全体のセキュリティを支える企業になることが目標です。これからもハッキングの脅威から人々を守り、安全なデジタル社会の実現に貢献していきます。
編集後記
優秀なホワイトハッカーが正当に評価されず、セキュリティ対策をしたい企業が適切なサービスを受けられない状況を変えるため、起業を決意した牧田社長。自身は「私の方が助けられている」と謙遜するが、多くの人が救われてきたに違いない。GMOサイバーセキュリティ byイエラエ株式会社はこれからも技術の向上に努め、サイバー攻撃の脅威から人々を守っていく。

牧田誠/群馬大学工学部卒業。新卒でソフトバンク株式会社に入社し、5年後に株式会社サイバーエージェントへ転職。2011年に株式会社イエラエセキュリティを創業し、代表取締役に就任。2022年にGMOインターネット株式会社(現:GMOインターネットグループ株式会社)の子会社となり、4月に社名をGMOサイバーセキュリティ byイエラエ株式会社へ変更。