※本ページ内の情報は2024年3月時点のものです。

2021年、「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」が施行された。不動産業界の健全化を目的とした法律で、不動産管理会社がそれぞれの物件を適切に管理することを定めている。

不動産管理会社に高い信頼性と責任が求められる昨今。1980年の創業から、人々に信頼される事業運営を行っているのが株式会社長栄だ。経営に苦戦する同業も多い中、同社は2021年に東証スタンダード市場に上場するなど、安定した成長を続けている。

なぜ40年以上安定した経営を続けられるのか、同社の代表取締役、長田修氏に経営者としての考え方を聞いた。

不動産管理業の将来性に気づいて会社を設立

ーー貴社を創業されるまでの経歴について教えてください。

長田修:
高校を卒業後、松下電器産業株式会社へ入社しました。松下電器での営業経験は、私にとって勉強になることが多くありました。

その後は不動産会社へ転職し、不動産の法律について勉強しました。そのころ不動産管理会社はまだ数が少なく、将来性があることに気づいたのです。もともと30歳で独立したいと思っていたこともあり、自分で不動産管理の会社を始めることを決意しました。

ーー同業で株式を公開されている会社は少ないと思います。貴社が業界内で実績を出せるのは、どういった強みがあるからだとお考えですか。

長田修:
弊社は管理費が安い依頼はお断りしていますが、その代わりに家賃の回収率が99.8%と高水準を誇っています。家賃の集金や撤去サービスなど、幅広い業務に対応しているのも弊社の特徴です。管理戸数も徐々に増え、現在は26,299戸を管理しています(2023年9月末時点)。

法律や災害時に関する知識の習得により一層力を入れたい

ーー不動産管理業を行ううえで、大切なことは何でしょうか。また、貴社が課題に感じていることはありますか。

長田修:
当社では社内弁護士が2名在籍しております。大切なことは、法律の勉強をすることです。法律の問題に遭遇したときにスムーズに解決できるよう、弊社では法律の研修にもっと力を入れたいと考えています。また法律だけでなく、社員にはメンテナンスの知識ももっと身につけてもらいたいと思っています。

ーーそのほかに、何か力を入れていきたい点はありますか。

長田修:
最近は新しい建築資材がたくさん登場していますし、3Dプリンター住宅なども注目を集めています。こういった新しいものに対して、どのように取り組んでいくかもよく考えていく必要があります。

あとは、災害時にどのような対処をすれば怪我人が出なくてすむかなど、災害時の対応についても学んでいきたいです。入居者の体を守るのも管理業者の仕事ですから。

どちらの道を選ぶか迷ったときは「険しい道」を選ぶこと

ーー長田社長が考える、優秀な人材像について教えてください。

長田修:
1つは、自分を後回しにしても他人のために動ける、利他の精神を持っている人ではないでしょうか。助けてほしいと人にお願いするだけでなく、まずは自分から相手を助けること。そして、自分がしたことに対して、見返りを求めないことが大切だと思います。ただ、見返りを求めなくても、自分がしたことは必ずどこかで返ってくるということは伝えたいですね。

ーー会社を経営するうえで、どういった考え方を大切にされていますか。

長田修:
困難な状況に直面しても、それを厳しいと捉えないことを心がけています。たとえつらいことがあったとしても、これもひとつの経験なのだと思えばきっと耐えることができます。良い方向に考えることで、きっと上手くいくと思っています。

また、重要な選択を迫られたときには、困難な道を選ぶようにしています。たとえ道が険しくても、ここで根性を出せば、多少のことは乗り越えられるようになりますから。

編集後記

「自分が幸せでもないのに、人の幸せなんか考えられない。まずは、自分が幸せになりなさい」と語る長田社長。「住」を通して人々に幸せを提供している長栄だが、社員たちの幸せを第一に考える長田社長の価値観が伝わってきた。

不動産業界の発展と人々の住環境の向上に向けて、邁進する長栄の今後に注目したい。

長田修(おさだ・おさむ)/京都府立桂高等学校を卒業後、松下電器産業株式会社に就職。不動産会社勤務を経て1980年に京都市伏見区にて長栄を創業。当初は父の所有する賃貸物件の管理が目的であった。しかし当時はマンションの建築は増加しているものの不動産管理業界は未成熟であり、将来性がある事業だと確信し、改めて1988年に株式会社長栄を設立。不動産関連団体の役員を長年に渡って兼務し、不動産管理業界の発展と地位向上に努めている。