※本ページ内の情報は2024年3月時点のものです。

2022年、1人の女性が一生で産む子供の数の指標となる合計特殊出生率が7年連続で前の年を下回り、1.26になった。

この少子化問題を、事業を通して解決したいというビジョンを持っているのが株式会社カラダノートだ。

今回は代表取締役の佐藤竜也氏にヘルスケア業界と社会課題の解決について話をうかがった。

インターンとして参加した会社が創業のきっかけに

ーー創業のきっかけと経緯を教えてください。

佐藤竜也:
2004年の初めくらいにベンチャーが注目され、新しいことに挑戦するのも面白そうだと思い、ベンチャー業界を目指したことがきっかけです。

大学在籍中にインターンとして、モバイル関連事業を行う会社に参画。卒業後は同社に入社し、事業部長に就任しました。何年か会社勤めをして経験を積むうちに、SEO(検索エンジン最適化)が世に出てきたタイミングで、ガラケーでもSEOが可能なのではないかと思い、実際に自分で調べて営業を始めました。

当時、ガラケーでは「健康」をキーワードに入れて検索する方が多く、健康に対して問題や不安を抱えている方が多いということに気づきました。その問題を解決する事業を自分で始めることにしたのです。

ーー創業後に手がけたプロジェクトを教えてください。

佐藤竜也:
最初にガラケー用の禁煙支援サイトを制作しました。ドイツの製薬会社がたばこ病(慢性閉塞性肺疾患)の疾患啓発に力を入れているということを知ったからです。「咳が出る・痰が出る」といったタバコ病の症状に関するキーワードを検索すると、該当ページが上位に出るようにSEO対策を施したページを作成しました。

実績づくりということで始めたプロジェクトでしたが、これをきっかけに別の製薬会社を紹介していただいたり、他の啓発関連の仕事をいただいたりと次の事業につながるプロジェクトになりました。

1つのプロジェクトが大きな財産に

ーー手がけたプロジェクトの中で印象深いものを教えてください。

佐藤竜也:
2010年代からスマートフォンが普及し始めたため、スマホ用のアプリをいくつか開発しました。

中でも「禁煙なう」というアプリは2010年にたばこ増税があったこともあり、テレビにも取り上げられて話題になりました。「禁煙してから◯週◯日なう」とアプリ上でつぶやくだけなので、誰でも簡単に始められます。話題性があり利用者数も増えました。

そこで、同じように「◯週◯日」の仕組みを他にも転用できないかと考え、始めたのが「妊娠なう」(現「ママびより」)というアプリです。妊娠期間を記録するシンプルなものですがとても人気でした。

そもそもヘルスケアやメディカルに関するアプリが少ないことに気がつき、慢性疾患で潜在患者数が多い順に頭痛・血圧・糖尿病・生理痛などの記録系アプリを開発していきました。。

中でも血圧数値を記録管理する「血圧ノート」はオムロンの当時ヘルスケアの経営戦略部長の方から、「うちの血圧計と提携しよう」とお誘いいただいて、業務提携を行い完成させたものです。10数名程度のベンチャー企業のために、本社のある京都から東京までわざわざ足を運んでいただいたので、とても印象に残っています。

ーー少子化についてどのように考えているか教えてください。

佐藤竜也:
結婚しない理由を若い方々に聞くと、多くの方が「経済的理由」と答えます。しかし、結婚すると住む家は1つで済み、共働きの場合は2人で働くということになるので、経済的な面でも余裕が出てくるでしょう。

もちろん、中には実際に「経済的理由」で結婚しない方がいるとはいえ、本当の理由は経済的な問題ではなく、「なんとなく結婚は大変そう」という社会の雰囲気ではないかと私は考えています。

独自の視線で社会課題解消を目指す

ーー今後の展望を教えてください。

佐藤竜也:
私たちが妊娠期や子育てを支える家族向けアプリを提供し始めた10年前よりも子育てDXは進みましたが、少子化改善の兆しがなく社会を変えないことには少子化の課題解決には至らないと思います。

事業会社向けのDX推進サービスである「家族パートナーシップ事業」では、中部電力様、あいおいニッセイ同和損保様など、その他パートナー企業様とともに社会問題の解決を目指した複数の実証事業を行っています。

結婚や子育てが楽しく魅力的だと感じられるように、社会の雰囲気をつくっていくことが少子化解決の本質だと思っています。そのために、まずは子育てを讃え、応援する環境をつくることに力を入れているのです。

ーー貴社が求める人材を教えてください。

佐藤竜也:
私たちは事業を通して本気で社会課題を解決しようと思っています。

二宮尊徳(金次郎)は「道徳なき経済は犯罪であり経済なき道徳は寝言である」という名言を残していますし、渋沢栄一は『論語と算盤』という著書の中で、道徳と経済のバランスが重要だと論じています。その言葉にならい、収益と想いの両面を追求して社会に変化を起こしていきたいと思っています。その両面を一緒に見たいと思ってもらえる方と共に働きたいですね。

編集後記

家族の笑顔をふやすためにさまざまな角度からアプローチし、社会課題解決のための努力をし続ける佐藤社長。

社員にも浸透したそのビジョンをもとに、少子化問題に歯止めをかけてもらいたい。

家族と社会をつないでくれる株式会社カラダノートの今後に期待したい。

佐藤竜也(さとう・たつや)/1984年茨城県つくば市生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。2004年2月株式会社フラクタリスト(現株式会社ユナイテッド)にインターンとして参画。2007年4月同社入社。2008年12月株式会社プラスアール(現株式会社カラダノート)設立、代表取締役就任。