※本ページ内の情報は2024年3月時点のものです。

アップコン株式会社は、地震や地盤沈下による建物構造物のコンクリート床の傾きの修正、段差解消等の施工の他、ウレタン樹脂の新規用途開発を行う研究開発や新規市場開拓に取り組んでいる会社だ。

ウレタン樹脂の発泡圧力を活用し、短工期で沈下を修正する「アップコン工法」による施工で、全国の工場・倉庫・店舗や住宅、道路などの工事を行っている。

今回は代表取締役社長の松藤展和氏に、起業するまでの経緯や創業期の苦労、事業の強み、今後の展望、求める人物像などについて話をうかがった。

起業のきっかけとなった海外経験

ーー貴社を起業するまでの経緯を教えてください。

松藤展和:
大学は武蔵工業大学(現:東京都市大学)に入学し、建築学を専攻していました。卒業後はニューヨークにあるプラット・インスティテュート大学院へ行き、インテリアデザインを勉強しました。

大学院の卒業後はオーストラリアの設計事務所に就職して9年間働いていたのですが、設計と施工が分離されている海外で「両方を手がける会社をつくりたい」と思い、起業1社目となる設計施工一貫請負の会社をオーストラリアで設立しました。

そこで働いている時に地盤沈下修正の技術を知り、その技術を用いた日本法人の設立を経て、2003年に弊社を設立しました。

ーー起業したいという気持ちはいつ頃から持っていましたか?

松藤展和:
社会人の初期の頃からですね。会社の社員として働く中で他の社員の仕事に対して「自分ならもっとうまくやれる」という思いを絶えず持っていたので、それなら「自分で会社を設立した方がさらにうまくいくのではないか」と考えていました。

そのため、起業に対する不安はあまり大きくありませんでした。

「沈下で困っている人を助ける」という思いを胸に、トラブルに立ち向かった創業期

ーー創業期に苦労したエピソードがあれば教えてください。

松藤展和:
主に2つあります。

1つ目は、最初の施工案件での出来事です。アメリカで造ってもらった施工の機械を日本で試運転すると、スイッチを入れた段階で機械が燃えてしまいました。

初施工で使用する機械だったので焦りを通り越して放心状態でしたが、周りの協力もあって施工の日を1週間後にずらし、機械も直して、無事に施工日を迎えることができました。

2つ目は、施工当日に社員が辞めてしまったことです。今でも正確に日にちを覚えているのですが、2004年5月31日の出来事です。当時は従業員が私を含めて8名で、私も施工を担当していました。夜間施工の予定が入っていたのですが、その日の朝に5名から辞表を出されてしまいました。

残った社員だけでは施工を行うことができなかったので、急いで派遣会社からスタッフを紹介してもらい、なんとか乗り越えることができました。その後も欠員募集として採用活動を行ったのですが、昼間は面接して夜は施工を行うといった働きづめの毎日だったので、とても大変だったのを覚えています。

ーーそのような大変な状況でくじけずに乗り越えられたのはなぜですか?

松藤展和:
弊社の技術によって沈下修正で困っている人に喜んでもらい、感動してもらえることがずっとモチベーションとなっていました。

私たちは沈下修正でしかお役に立てませんが、時には涙を流すほど感激してくださるお客様もいるので、沈下に悩む方を助けることはとても社会貢献度の高いことだと実感しました。

そして、「沈下で困っている人を助けることが弊社のミッションである」と改めて認識しました。

お客様の業務を止めずにスピーディな施工を行えることが強み

ーー事業の強みを教えてください。

松藤展和:
短工期でお客様の業務を止めずに施工できることが弊社の1番の強みです。

たとえばスーパーマーケットであれば、従来のコンクリート打ち換え工法ではお店の棚も全て空にしてコンクリートを打ち直していくという大工事になるため、お店の業務を止める必要があり、時間もかかります。

しかし、弊社ではお店が営業を行う中で施工ができ早く対応できるので、ここは他社にはない強みだと思っています。

独自の「アップコン工法」の認知度を高めていきたい

ーー今後の展望について教えてください。

松藤展和:
お客様の業務を止めずに短工期で施工できる弊社の「アップコン工法」の認知度を上げていきたいと思っています。

弊社は2022年12月に名証ネクストに上場しましたが、その目的の1つはアップコン工法の認知度を上げるためです。

アップコン工法を知らないがゆえに、沈下の問題を抱え続けているところはまだまだ多いので、拾い切れていないマーケットに対しても支援していきたいと思っています。

「沈下に悩む人を助けたい」という思いを持つ誠実な方と一緒に働きたい

ーー今後の採用計画について教えてください。

松藤展和:
新卒採用を中心に、年間で3〜5名をコンスタントに採用したいと思っています。

技術職の採用がメインですが、営業職の採用も行っており、経験を積んでキャリアチェンジすることも可能な環境です。

ーー貴社が求める人物像を教えてください。

松藤展和:
誠実で失敗を恐れずに努力していける方と一緒に働きたいですね。

たとえば、失敗したときは「正直に謝る」「解決のために行動する」「今後の対策を考える」ということを当たり前にできる社員であってほしいと思います。

実際に今、働いている社員は皆そういった行動がとれる人達で、そのおかげで社内の雰囲気もとても良好です。

働きやすい環境が整っていますので、そのような会社で「沈下で困っている人を助けるために一緒に一生懸命働きたい」と思う方がいれば、ぜひ弊社に応募してほしいと思います。

編集後記

オーストラリアの設計事務所で勤務しているときにウレタン樹脂を使用した沈下修正工法を知り、アップコン株式会社を設立した松藤社長。

創業期は施工日が迫る中、機械の故障が発生したり、施工当日に社員が辞めるなど数々のトラブルに直面しながらも、「沈下で困っている人を助けたい」という思いを胸に多くの方の支援を行ってきた。

今後は「アップコン工法」という独自の施工技術の認知度を高め、社員を増やして体制強化に努めるという。日本の社会に貢献したいという強い意志が伝わってきた。

松藤展和(まつどう・のぶかず)/1985年武蔵工業大学(現:東京都市大学)建築学科を卒業、1988年ニューヨークのプラット・インスティテュート大学院インテリアデザイン学科を卒業。1989年、シドニーの大手建築設計事務所にて新規事業開拓に従事。1998年、設計施工一貫請負の会社をシドニーに設立し、特殊樹脂を使用する地盤沈下修正工法を知る。2001年、同工法を用いた日本法人を設立し、研究を重ね、新工法「アップコン工法」を開発。2003年アップコン有限会社(現:アップコン株式会社)を設立。代表取締役社長に就任。