※本ページ内の情報は2024年3月時点のものです。

金属加工業界は、常に技術革新という課題に直面している。この挑戦的な環境の中で、モリテックスチール株式会社の代表取締役社長、門高司氏は独自のビジネスモデルを構築し、業界に新たな価値を提供する。

「鋼材のプロとしての専門商社」と「金属加工のプロであるメーカー」の2つの顔を持つ同社は、商社機能とメーカー機能を融合させることで、材料の特長を活かした部品の提案や、用途に応じた鋼材の提供を迅速におこなうことができる。

門社長は「金属業界には、日常生活に不可欠な製品を提供する魅力がある」と語る。今回のインタビューでは、新しい人材の採用に向けた積極的な取り組みから、「人を大切にして、共に成長する会社つくり」を目指す経営方針まで、話をうかがった。

2つの顔を合わせ持つ企業ならではの強み

ーーまずは、事業内容について教えていただけますか?

門高司:
弊社は、金属製品の加工と販売を主軸にしている会社です。商社部門と製造部門、この2つを合わせ持つことが最大の特徴です。主に鉄材を扱い、さまざまな業界の顧客に提供しています。自動車や家電、刃物など、用途は多岐にわたります。一言で説明するのは難しいのですが、商社機能と製造機能を融合させたビジネスモデルを持っていると言えるでしょう。

ーー若い頃のご経験について教えてください。

門高司:
正直なところ、非常に過酷な労働環境でした。仕事の量が多く、家に帰って寝るだけの日々で、辞めたいと考える暇もありませんでした。父には私が営業に向いていないと言われ、技術系への進路を勧められました。しかし、私は研究よりも実践的に動ける営業を選びました。

最初はルートセールスが主で、与えられた仕事をこなすことに集中していました。もともと人と話すのが苦手でしたが、聞き手としてのスキルを磨くことで、徐々に自分の立場を確立していきました。次第に人と話す楽しさを知り、コミュニケーションの大切さを学んでいきましたね。

ーー加工から販売まで業務が多岐にわたる貴社において、活躍できる人材の特徴を教えてください。

門高司:
新入社員であれ中途であれ、経験の有無にかかわらず、私たちが特に重視するのはコミュニケーション能力と自主性です。新入社員の場合は経験がない分、これらの能力がさらに重要といえます。弊社の業務は多岐にわたるため、自分から積極的にコミュニケーションをとり、仕事を進めていく姿勢が必要です。この点をクリアできる方と一緒に働きたいと常々思っています。非常にシンプルですが、実際にはこの基準を満たすのが難しいと感じる方も多いかもしれません。

ーー社長が考える業界の面白さはどこにありますか?

門高司:
この業界の魅力は、私たちの製品が日常生活のあらゆる場面で使用されている点にあります。たとえば、自動車や家電製品、さらには炊飯器のコードリールやノコギリの材料など、私たちが提供する鉄製品は生活を支える多くのアイテムに不可欠な存在です。

特に、炊飯器のコードリールとノコギリの材料では日本のシェアの約6割を占め、大手メーカーにも私たちの製品が広く利用されています。これらの事実を知ると、この仕事がどれだけ多くの人々の生活に密接に関わっているか実感できます。製品がなければサービスも成り立たないわけですから、その重要性とやりがいを日々感じています。

インターンシップを活用して学生と接点を増やす

ーー採用強化に向けて、具体的にどのような取り組みをしていますか?

門高司:
現在、私たちはインターンシップを中心として、学生との接点を増やす取り組みを進めています。特に夏から秋にかけては、多くの学生が参加できる社内イベントを企画して、弊社の活動や業界について知ってもらう機会を設けたいと考えています。まだ具体的な計画はこれからですが、2026年に向けて積極的に進めていく予定です。

さらに、大学生だけでなく、専門学生や高校生を含む幅広い層の学生に対しても、インターンシップの機会を提供しようと考えています。たとえば、自社製品のデザインを手掛ける機会をデザイン専門学校の学生に提供するなど、チャレンジングなプロジェクトを通じて、弊社と学生との間に新たな関係を築いていきたいですね。

さまざまな学生が弊社を知り、興味を持ってもらえるような接点を増やしていくことで、多様な人材の採用につなげていきたいと思います。私たちは、これらの取り組みを通じて、学生に弊社を深く知ってもらい、将来的に一緒に働きたいと思ってもらえるような機会を積極的につくっていくつもりです。

重要視しているのは「従業員同士が互いに助け合う文化」

ーー貴社の経営方針は「人を大切にして、共に成長する会社つくり」です。若手人材に向けてメッセージをお願いします。

門高司:
自分たちが充実していなければ、顧客に最高のサービスを提供することはできません。会社として従業員が充実できるようにサポートするので、まずは自分自身の充実に努め、それを顧客へのサービスに活かしてください。そのような姿勢が顧客への良いサービスにつながると確信しています。

また、目標管理制度を導入し、従業員同士が互いに助け合う文化を重視しています。自分の業務だけでなく、他の人をサポートすることで生じるプラスの影響も評価の対象としてとり入れています。他人を助けることを積極的に評価し、助け合いながら成長できる環境を大切にしています。

ーー最後に、未来の会社像についてお聞かせください。

門高司:
私たちが目指すのは、すべての従業員が笑顔で働ける会社です。笑顔で働いているということは、従業員が給与面でも幸せで、仕事にも充実感を感じている証拠だと考えています。

従業員一人ひとりが満足していれば、そのポジティブな影響は自然と仕事の質や成果にも反映され、結果として会社全体が良い方向に進むと信じています。

編集後記

門社長の経営哲学には、従業員が安心して働くことができる職場づくりが根底にある。社長自身の過去の経験から、厳しい現場作業の中で学んだコミュニケーションの重要性や、チーム内での助け合いの精神を今日の経営に活かしている。社長の従業員を思う心こそが、金属業界屈指の最高の製品を生み出す原点となっているのだろう。

門高司(かど・たかし)/1961年生まれ。1984年に近畿大学卒業後、森ゼンマイ鋼業株式会社(現:モリテックスチール株式会社)に入社し、鋼材事業営業職に従事。北海道、東京、名古屋の各営業所長を経験し、2017年にマザー工場である三重大山田工場の工場長に就任。2019年6月より現職。「従業員がワクワクする職場つくり」の実現を目指し「変わる・変える・変えていく」を合言葉とした風土改革“Kプロジェクト”を推進中。2040年に向け3つの成長ステージを掲げ、次世代のモリテックスチールを創造している。