※本ページ内の情報は2024年6月時点のものです。

2015年、「持続可能な開発目標(SDGs)」が国連総会で採択された。17ある目標の1つに「つくる責任、つかう責任」があり、そこには「化学物質やあらゆる廃棄物(ごみ)を環境に害を与えないように管理できるようにする」とある。

この目標を達成するため、期待されているのがリサイクル業界だ。さまざまな資源を無駄にしないため、リサイクル業界にできることはなにか。

今回は、国内のみならず海外へとマーケットを広げる株式会社東洋トレーディングの代表取締役である多比良勝平氏に、事業内容と今後の方針についてうかがった。

海外での経験がその後の人生に大きく影響

ーー海外の経験が豊富ですが、海外に目を向けたきっかけを教えてください。

多比良勝平:
音楽好きな同級生が次々と就職していき、彼らにはできないことを経験するために「ワーキングホリデーに行こう」と思ったのがきっかけです。英語が話せなかったので、海外へ出る勇気はなかなか出ませんでしたが、姉や兄が海外へよく旅行しており、「就職するとなかなか行けないから、今のうちに行きなさい」と背中を押してもらって実行しました。

ーー海外へ出た経験が生かされた場面はありますか?

多比良勝平:
日本にいた頃は頭もマインドも閉鎖的でした。オーストラリアへ1年間行ったことは、日本にいる5年分くらいの価値があったと思います。知らないことをたくさん知ることができて自分に自信がつき、外国人に対しても引け目を感じなくなりました。

ーー帰国後にリサイクル業界を選択した理由はなんでしょうか?

多比良勝平:
「英語を使える仕事はないか」とタウンワークで探していたときに、社名に「貿易」という文字が使われていたのが前職の会社でした。「貿易と書いてあるからには英語を使って仕事をするのだろう」と思っていたのですが、実際は全く違いました。入社当時はコンテナの積み込みがメインの業務でしたが、営業活動も行っていました。

人との縁をきっかけに事業が成長

ーー独立して創業するに至った経緯を教えてください。

多比良勝平:
先に独立して事業を始めていた方に誘われたことがきっかけです。当時は雑多物(解体した時に出てくるもの)をスクラップ金属として中国へ輸出していました。チャーターした船に積み込みをして戻ってくる商売を「一緒にやろう」と言われて共同出資に至りました。

勉強もできず、実力もない私ですが、出会いには恵まれていて、人との出会いで自分が形成されてきたと思っています。

ーー経営者になってからも大切にしていることはありますか?

多比良勝平:
父から言われたことですが、「謙虚に強か(したたか)に」という当たり前のことは大切にしています。常にどんなときでも、横柄にならないように心がけています。

ーー人とのつながりを大切にしてきた代表ですが、この人と出会って変わったという経験についてお聞かせください。

多比良勝平:
創業当時からお世話になっている方々とは、どこかでつながっていると感じました。人と人がつながることで別の業界との信頼関係を築くことができ、新しい事業に発展することがあります。人とのつながりを大切にしてきたからこそ、今の仕事ができていると思っています。

国内のみならず国外のマーケットを拡大

ーー貴社の事業内容と強みを具体的に教えてください。

多比良勝平:
スクラップ業者や解体業者から雑多物を集めて、鉄や銅などを選別する作業をメインに行っています。関西圏の銅のシェアにおいて、そこそこの量を扱っています。

競争率が激しいこの業界において弊社の強みとして挙げられるのは、支柱のマーケットのシェアをとるシステムを取り入れていることです。協力会社とスクラムを組み、私たちができない部分を各社に振り分けながら選別・解体を行っています。同業他社との違いは、協力会社の差だと思います。

また、国内外ともに強い販売先をもっていることも強みです。更に他社との差別化を図るため、あと1つ強みをつくりたいと思っています。

ーー今後の事業方針について考えていることはありますか?

多比良勝平:
金属に関しての商社になることを目指しています。解体や加工、仕入れ業務は協力会社に行ってもらい、弊社は今後、中東関係の輸入のシェアを増やしていく予定です。

働きやすい体制づくりも忘れない

ーー代表取締役自身が思う貴社のアピールポイントを教えてください。

多比良勝平:
良くも悪くもアットホームな職場であることがアピールポイントです。上司部下関係なく、全部がフラットな状態で業務を行うという社風です。今後は従業員の教育も含め、私が退いた後でも問題ないような仕組みをつくっていきます。

ーー社内の仕組みづくりですが、具体的にどのようなところから着手していきますか?

多比良勝平:
結局のところ、従業員が知らないところで私が担う業務があるので、それらを全てピックアップすることから始めています。貿易・総務・経理などの各部門をつくっている最中です。1人で行っていた業務を人に振り分けることを繰り返して、1人の人間が経験する業務を増やす体制をつくります。組織が大きくなると統制をとりにくくなるので、土台となる基礎部分をしっかり整えていきたいですね。

自身の経験から若手に伝えたいこと

ーー20代、30代の方々へ向けてメッセージをお願いします。

多比良勝平:
時間があるうちに海外へ出る経験をしてもらいたいと思います。年齢を重ねるにつれて、新しい経験をすることが億劫になるものです。就職してからでも行けないことはないのですが、自由に使える時間がある時に海外で、違う文化に触れてほしいですね。

編集後記

父からの教えを守りつつ、人との出会いを大切にしてきた多比良勝平代表取締役。常に謙虚な姿勢で人と向き合い、異業界との関係性も築いてきた。その裏表のない姿を信頼し、協力している企業も多いことだろう。

限りある資源を有効に活用するため、リサイクル業界に期待されることは多い。国内のみならず海外にも目を向けている、株式会社東洋トレーディングの今後の動向に注目したい。

多比良勝平/1981年大阪府生まれ。2022年まで音楽活動を行った後、オーストラリアへ1年間の旅に出る。帰国後にリサイクル業の会社で働いた後、株式会社東洋トレーディングを設立し、代表取締役に就任。