※本ページ内の情報は2024年3月時点のものです。

2022年の日本の即席麺の市場規模は世界第5位となった。ラーメンは日本の国民食であり、多くの製造企業の中でも生ラーメンのシェアが北海道1位、全国では3位と高い人気を誇るのが株式会社菊水だ。

すでに大きな実績をあげている同社だが、代表取締役社長の春名公喜氏は、会社をさらに良くするための社内改革を実施した。創業75周年を迎えても菊水がなお愛され続ける理由とは何なのか、春名氏にその強さのわけを聞いた。

北海道の豊かな食を活かした製麺・調理麺で全国展開

ーー貴社の事業内容や強みについて教えてください。

春名公喜:
主な事業は製麺事業と調理麺事業で、麺の生産から販売まで手がけています。弊社の強みは麺そのものにこだわる「おいしい麺づくり」、そしてその麺を最大限活かし、おいしく味わってもらうための「メニューづくり」です。

日本一の小麦粉とそば粉の生産量を誇り、豊かな食文化がある北海道で麺やスープをつくれることは弊社の強みです。また、北海道はブランド力があり、海外の人からの認知度が高いのも大きなポイントですね。

さらに、弊社が所属している伊藤ハム米久グループは末端の消費者への到達力が高く、グループの力を活かして北海道から沖縄まで商品を提供できることも強みです。チルド麺業界で全国を網羅できているのは、弊社を含めて日本に2社だけなんですよ。

新部署の創設や社員全員との面談などの組織改革を実施

ーー貴社のターニングポイントはいつ頃でしたか。

春名公喜:
ターニングポイントは、1995年に伊藤ハムグループに入ったことです。グループに入り、全国で販売するための物流や商流を手に入れたことが、今の安定と成長につながっています。

やはり、問屋を介さずに売れるのは強いですね。伊藤ハムグループは信頼性もありますし、全国へのネットワークと信頼性の両方が手に入ったのは大きいと思います。

私は1984年に伊藤ハムに入社後、営業、マーケティング、事業戦略などの仕事を経験してから2023年に菊水へ顧問として入社し、同年6月に社長へ就任しました。

ーー社長に就任してからまず取り組んだことは何ですか。

春名公喜:
就任後に取り組んだことは、「言える化と聴ける化」です。弊社は良くも悪くも歴史の長い会社なので、社歴の長い人に意見をいいにくい雰囲気がありました。

たとえば過去に「生活者視点で物事を見ていくべきだ」と気づいていた方がいましたが、そのことをいえずにいたのです。意見や議論ができる風土を改めてつくる必要性を感じ、組織改革を実施しました。

ーー組織改革をしたときの話を詳しく教えていただけますか。

春名公喜:
組織改革のひとつとして、マーケティングと開発を一緒にした部署をつくりました。今まで弊社にはマーケティングの発想が根付いていなかったのですが、私自身伊藤ハム時代にマーケティングの仕事に15年間携わり、生活者と向き合う重要性を理解していたからです。

また、品質保証の部署もなかったので、2023年2月に創設しました。そのほか、従来は3つの階に従業員が分散していましたが、今はワンフロアに集結させ、意見をいいやすい環境づくりを心がけています。従業員に向き合うことは何より大切ですし、今の時代に求められていることだと感じています。

環境整備には徹底的に取り組み、社員全員との面談を実施するなど、初めの半年ほどをそのために充てました。ありがたいことに、このような新しい取り組みを始めたことについて、会長は否定せず、応援してくれています。私にとっては最大の応援団ですね。

今後は北海道から海外への展開を目指したい

ーー今後の注力テーマを教えてください。

春名公喜:
最優先ですべきことは、競争力のある商品をつくるための生産改革を行い、従業員の労働環境を良くすることです。実際に今年1月から生産改革プロジェクトを立ち上げ、30代を中心とした若手メンバーに任せています。

あとは、北海道での生産事業の規模拡大はもちろん、「札幌ラーメン」を海外でも売りたいと思っています。チルド麺市場の中でも、特に北海道外での成長余地はまだ非常に大きいのです。ただ、設備投資にはそれなりに時間がかかるので、現在はOEM生産も活用していきます。

ーー人材の採用についてはどのようにお考えですか。

春名公喜:
新卒者の採用は継続したいし、キャリア採用も増やすべきだと考えています。今後は北海道外での営業が大きなテーマなので、採用を加速度的に進めていきたいなと。東北から九州までの幅広い地域から、ぜひいろいろな方に入社してもらいたいですね。

編集後記

取材の最後、自身の好きな言葉は「夢を持てば夢は実現できる、夢を持たなければ夢は実現できない」だと教えてくれた春名社長。

北海道の豊かな食文化の中でつくられた麺と、社員を何よりも大切にする風土を持つ菊水なら、海外進出へのチャレンジもきっと上手くいくだろう。

春名公喜/1984年、兵庫県立神戸商科大学(現・兵庫県立大学)卒業、伊藤ハム株式会社入社。2016年、同社執行役員、加工食品事業本部フードサービス営業本部長に就任。2017年、同社執行役員、加工食品事業本部事業戦略統括部長兼マーケティング部長に就任。2018年、伊藤ハム米久ホールディングス株式会社執行役員に就任。2022年、同社執行役員、加工食品事業本部事業戦略統括部長に就任。2023年4月、株式会社菊水に顧問として入社、6月、代表取締役社長に就任。