※本ページ内の情報は2025年3月時点のものです。

株式会社トップスは、1964年創業の洋菓子メーカーだ。長い歴史と実績を持ち、「チョコレートケーキ」は看板商品として知られている。2024年に創業60周年を迎えた同社に社員として入社し、各事業部を経験したのち、現在は代表取締役としてチャレンジを続ける箱崎英次氏に、これまでの経緯や今後の展望などについてお話をうかがった。

グループ各店での経験を活かして、洋菓子部門の営業責任者に

ーー株式会社トップスに入社した経緯を教えてください。

箱崎英次:
私は早くに結婚し、21歳の時にダブルワークできる仕事を探していました。時給が良く、午後から働ける職場を探したところ、偶然トップスの求人情報が目に入ったため、応募し、入社したという経緯です。トップスの店舗は池袋で見かけたことがあり「ケーキのお店があるな」と思っていた程度でした。

ーー入社後はどのようなことをされていたのでしょうか。

箱崎英次:
入社後、まずは日本料理店「ざくろ」で働き、その後、イタリア料理店「グラナータ」の立ち上げに携わりました。弊社とそのグループ会社が運営している飲食店を何店舗か経験したのちに、洋菓子部門の営業責任者に任命されました。

当時はバブル崩壊後で、飲食業界全体が厳しい状態でしたので、レストラン各店を経験した私に対し、「洋菓子部門でも経験を活かしてほしい」という当時の経営陣の期待があったように思います。

変わらず安心できる商品ラインナップの裏には、店舗立ち上げなどの新たなチャレンジも

ーートップスの洋菓子部門、営業責任者になってから、どのようなことに挑戦されたのでしょうか?

箱崎英次:
当時の経営陣と共に、新たなチャレンジをしてきました。たとえば、「羽田空港の土産物コーナーで、トップスのケーキを販売する」という試みでは、お客様からご好評いただきましたが、苦労したことを覚えています。

デリケートな生ケーキですので、機内での保冷・型崩れの観点から工夫が必要になり、試行錯誤したのです。現在は閉店していますが、課題を見つけ解決するという良い経験ができたと思います。

他にも「エキュート大宮店」を出店した際には、埼玉エリアに新たな商業施設ができるということで、当社店舗も非常に注目されましたが、誤算もありました。夕方になると首都圏から埼玉に帰宅する人の流れがあったため、想定以上にケーキが売れて足りなくなってしまったのです。補充するべく社員が新幹線で首都圏からケーキを運び、交通費が負担に……といった珍しい経験をさせてもらいました。

これらの店舗立ち上げや創意工夫が必要な状況などから学んだのは、「歴史あるブランドでも、新たなチャレンジができるんだ」ということです。

2014年の50周年の際には、弊社として初めてノベルティを製作しました。紙袋と同じデザインのトートバッグを作り、お客様に往復はがきで応募していただいたのです。今振り返ると古臭い手法だと思いますが、お客様から「いつもありがとう」といったコメントとともに応募が集まり、社員一同感激しました。その時にいただいたお手紙は今でもコピーして私の手元に置いてあります。

100年企業となるために積極的に新たなチャレンジをしていきたい

ーー歴史ある貴社ですが、今後取り組まなければならない課題はありますか?

箱崎英次:
さまざまなチャレンジを続けてきた私が思うのは、やはり「チョコレートケーキを販売するだけで良いのか?」ということです。

実は、弊社の商品ラインナップは創業当時からほとんど変わっていません。変わらないものへの安心感はあると思いますが、若いお客様からは「以前チョコレートケーキを購入して美味しかったから、また店舗に来たけれど、同じものしか置いていないじゃないか」といった声もいただいています。定番のチョコレートケーキはそのままに、新商品開発などにも力を入れていきたいと考えているところです。

ーー今後の事業展開について教えてください。

箱崎英次:
昭和に創業した弊社も、令和という今の時代に合わせて、変わるべきところは変わっていかなければなりません。先ほどの「新商品開発」もそうですし、店舗網としては「首都圏メインの体制のままで良いのか」といったところにも疑問を持ち続けなければならないと考えています。

現在、弊社の商品はすべて、目黒区にある工場で製造しています。40年以上もこの体制を続けてきましたが、地方への出店や発送などが難しいという問題が浮き彫りになっているのも事実です。そのため、安全面・衛生面に配慮した最新の工場を増設する計画が進行しています。

また、他社とのコラボにも引き続き力を入れたいですね。すでに他社と協働して、トップスのケーキを楽しめるカフェの運営や、トップスの味を手軽に楽しめるよう、コンビニエンスストアでのコラボ商品の販売なども行っています。現在は年間10種類ほどの商品がコラボ商品として世に出ていますが、これからもブランド力を高めて強化していきたいです。

ーー新商品開発、店舗や工場の拡大に必要なことは何でしょうか。

箱崎英次:
やはり、次世代を担う新たな人材の確保は必要不可欠です。「トップスは、こうでなければいけない」と考えるのではなく、柔軟な発想を持ち、アイデアを出してくれるような人材と共に働きたいと思います。たとえば、弊社ではお客様に試食のご提供をしていません。

しかし、必要であればそうしたことも始めていきたいと思っています。「トップスらしさ」と「事業拡大」を広い視野で捉えられる方に来ていただけると嬉しいです。また、弊社があまり出店できていない関西・九州エリアでも積極的に進出し、地域の特産品と弊社商品をかけ合わせた、インパクトのある新商品なども開発できると良いですね。

私は、「トップスはチョコレートケーキだけ売っていればいい」とは思っていません。今後100年続く企業となり、総合洋菓子メーカーに成長するためにも、新たな人材・新たなアイデアが必要です。「ケーキだけでいいのか?」「カフェだけでいいのか?」と常に考え、失敗を恐れずに前進し続けられる方を求めています。

ーー新たに「総合職採用」を始められましたが、これもトップスの今後を見据えた転換なのですね。

箱崎英次:
はい。2025年度に弊社は初めて「総合職」という職種で人材を採用いたします。店舗ごとに欠員が出たら採用するという従来の方法では、会社全体を見渡す横断的な視点を持ちづらく、チャレンジングな人材を採用するのが難しいと感じたからです。福利厚生制度もさらに整えているところです。長く働きたい・働けると思っていただける場所になれるよう、弊社は進化を続けています。

編集後記

60周年を迎えたトップスには、親子三代にわたるファンも多くいらっしゃるというお話をうかがった。しかし、社長が見据える未来は、過去の実績を大切にしながらも新たな顧客を開拓していく、積極的な姿勢に基づくものである。同社はこれからも箱崎社長のもと、美味しさを守りながらも誰もが驚くチャレンジを続け、拡大していくことだろう。

箱崎英次/1960年福島県生まれ。1981年株式会社トップスに入社。以降、グループ会社の日本料理店「ざくろ」やイタリア料理店「グラナータ」などのレストランを経験。1998年以降、株式会社トップスの営業責任者となり新規店舗開発などを担当。2013年同社代表取締役に就任、現在に至る。