2024年4月1日から、ドライバーの労働時間に上限が課される。ドライバーたちの労働環境の改善が期待される一方、勤務時間が短くなることで給与が下がる、長距離の輸送が難しくなるといった諸問題「2024年問題」が不安視されている。
株式会社池田自動車運輸は、運送会社が直面する諸問題に今、立ち向かおうとしている企業の1つだ。同社は2024年に創業100年目を迎える老舗の企業で、グループ会社のアイケー物流株式会社とともに輸送サービスや倉庫業務を行っている。
運送業界を引っ張ってきた老舗企業は、業界が抱える問題をどのように捉えているのか。同社の代表取締役、池田和彦氏に業界の動向や同社の人材への考え方などを聞いた。
運送業界が直面する2024年問題と省力化の必要性
――貴社の業務について教えてください。
池田和彦:
弊社は輸送業務や倉庫業務、事務業務、賃貸事業を手がけており、後発で航空貨物の輸送業務も行っています。航空貨物の輸送に関してはもっと早くに取り組んでいれば良かったと思いますが、昔は航空貨物に関する知識を今ほど持っていませんでしたから。
――最近は運送業界で2024年問題が不安視されていますが、業界の動向についてはいかがお考えでしょうか。
池田和彦:
ドライバーの長時間労働が問題視されていますが、これは荷物を積むときに時間がかかること、そして卸地に到着してから待たされてしまうことが大きな原因です。
ドライバーの長時間労働をなくそうと思っても、これは荷主の協力が必要なことですから、そう簡単に短縮できるものでもありません。
2024年問題を乗り越えるためには荷主の協力を得ることのほかに、業務を効率化することが重要ですし、弊社としても現場をどうやって省力化するか今考えているところです。
グループ会社の請負サービスを通して顧客のニーズを満たす
――グループ会社のアイケー物流と貴社では、どのように業務を分けていますか。
池田和彦:
アイケー物流では、荷役作業や事務作業の請負サービスを手がけています。弊社の請負サービスを利用するお客様のメリットとして、派遣と比べて人材の採用の手間がすくないこと、コスト面での融通が利きやすいことが挙げられます。
たとえば派遣の場合、荷役作業を任せる人材と事務作業を任せる人材をそれぞれ別で雇う必要があるため、人選する手間が発生します。
一方、請負の場合はお客様の仕事を弊社が丸ごと請け負って、その中で弊社が荷役作業ができる人材には荷役作業、事務作業ができる人材には事務作業を任せることになるので、お客様が自分でわざわざ人材を雇う手間が省けます。
また、請負の場合は弊社が窓口となり、「通常は10人の人員が必要な作業でも、アイケー物流なら5人でできますよ」といった感じで融通を利かせた提案ができるので、コストを抑えたいお客様にとってもメリットがあります。
それぞれの従業員の性格や能力を理解して仕事を振る
――貴社にはどのような社員が在籍しているのか、人材や社風についてお聞かせください。
池田和彦:
性格や能力はさまざまですが、自分のペースでしっかりと働ける人が多いです。従業員によって性格や能力、得意なことは違うので、それぞれの従業員の特性を理解して仕事を与えることが大切だと思っています。
弊社の仕事の中には、誰でもできるわけではない難しい仕事もあります。従業員全員が同じ能力で同じ考え方を持っていれば仕事の割り振りに困ることはありませんが、実際はそうではありません。そのため、何の仕事を誰に振るのかをよく考えています。
合わない仕事を無理に任せて退職する人が増えても困りますし、そのさじ加減は非常に難しいポイントだと思っています。
とにかく人に会って話を聞くことがより良い経験になる
――若手人材が意識したほうが良いことなどはありますか。
池田和彦:
さまざまな人に直接会い、対面で話し合うことは有益な経験になると思います。いろいろな人の話を聞いて、その話を自分の考え方とリンクさせ、自分の血肉にすることが大切です。
私の今までの人生にも、時間を浪費してしまうような出会いも多々ありました。しかし、その時間も、相手を理解するためには必要な時間だったと今では思います。
いろいろな人と話すことは決してマイナスになりませんし、他人の話を聞き、新しい考え方や知見は必ず自分のためになると思っています。
編集後記
23歳のときに池田自動車運輸へ入社し、70歳を過ぎた現在に至るまで3代目社長として同社を守ってきた池田社長。同社はドライバー不足やコロナ禍などさまざまな問題に直面しながらも、100年近く運送業界を牽引し続けている。
2024年問題など運送業界は今、大きな転換期にあるが、高品質なサービスを提供する努力をやめない同社なら、100年目以降もこの業界を引っ張っていってくれるだろうと感じた。
池田和彦(いけだ・かずひこ)/23歳で株式会社池田自動車運輸に入社し、現在は3代目社長として経営を担う。2022年、一般社団法人千葉県トラック協会の会長に就任し、トラック運送業界の進歩に対して重要な貢献を行っている。地域からもお客様からも、働く従業員からも愛される企業を目指し、運送業務、倉庫・事務業務、賃貸事業を展開。2024年には、池田グループとして創業100周年を迎える。