
九州エリアを中心に、3PL(荷主企業の物流業務の代行)事業を展開する株式会社シーエル。同社はM&Aに積極的で、関東にも子会社を設立し、関東エリアでの事業拡大に注力している。
今回、自らも現場で作業に携わるなど、現場力を重要視している代表取締役の二宮慎吾氏に成長が止まらない同社の裏側を聞いた。
より良い物流システムを実現するために重視しているのは「現場力」
ーー代表に就任するまでの経緯をお聞かせください。
二宮慎吾:
人材派遣系のベンチャー企業に2年ほど勤めてから、3PL企業のSBSに転職し、3年ほど勤めました。同社へ転職したのは、父が経営するシーエルを将来継ぐため、他社で物流業務を経験し学びたいと思ったからです。ここでドライバーや物流センター業務、営業など、さまざまな経験をしてから、弊社に入社しました。
SBSという大手の3PL企業から当時従業員30人ほどの弊社に来て感じたのは、弊社には職人的な考え方を持つ従業員が多く、ビジネスマンとして利益を求める視点が足りていないということです。その一方で、多品種少量の荷物を捌くノウハウがあり、生産性が高く、人件費を抑えやすい点が強みであると感じました。
入社後、特に力を入れて取り組んだのが、会社で働く人たちについて知ることです。会社にとって人材は非常に大切な財産ですから、3〜4年かけて社員全員と一緒に仕事し、それから業務部長、営業部長を経て、2023年に代表取締役に就任しました。
ーー貴社の業績が成長している理由について、どのように考えていますか。
二宮慎吾:
この12年間、毎年会社の業績は成長し、売上高は4倍になりました。このような結果を出せているのは、現場への徹底したこだわりが背景にあると考えています。
私自身、現場で社員たちと連携しながら、常に物流の改善に努め、新たな取り組みも積極的に進めてきました。たとえば、メーカーごとに表記方法が違う賞味期限の文字を正しく読み取れるように、最新のカメラを導入しました。
荷物が出荷されてから「思っていたサービスと違う」といったようなクレームを荷主からもらったことはなく、顧客からの信頼は厚い自負があります。
明瞭な評価制度により、若手も管理職として活躍できる環境を構築

ーー貴社の強みはどういった点にありますか。
二宮慎吾:
弊社の強みは、特定の商材に依存せず、アパレル商品や雑貨、化粧品、健康食品、飲料・食品、家具、家電など多様な商品を柔軟に取り扱える多品種少量の物流を実現している点にあります。昨今、ECの発達により多品種少量の物流の需要は高まっており、活躍の場は非常に増えています。
ーー代表としてどのような考え方を大切にしていますか。
二宮慎吾:
中小企業の成長は代表に営業力があるかどうかにかかっており、「社長はトップセールスであるべき」という考え方を今まで大切にしてきました。
また、私たちはお客様から「ありがとうの気持ちの対価」としてお金をもらっているのであって、ただ働けばお金をもらえるというものではありません。このことについても、社員たちにはよく伝えています。
実際、感謝の気持ちを忘れないために、全物流センターで企業理念の唱和を毎週行う取り組みを続けています。
ーー会社の特徴や制度について教えてください。
二宮慎吾:
弊社は、社員の年齢が同業種と比べて若い世代が多いのが特徴です。会社の成長とともに管理職のポストもどんどん必要になってきており、若手でも活躍できる環境が整っています。
努力すれば早い段階で管理職のポストにつくことができますし、努力する人を正当に評価する人事評価システムを導入しています。評価を点数化して目に見えるようにするなど、非常に細かい評価制度は、社員からも好評です。
公正な評価制度が現場にあるため、上を目指して積極的に仕事に取り組みたい人にとって、弊社は合っていると思います。
営業力の強化と自社物流センターの新設で、利益率の向上を目指す

ーー今後の注力テーマ、そして最後にメッセージをお願いします。
二宮慎吾:
注力しているのは、会社を今後も毎年120%成長させるために人事を見直し、営業力を強化することです。営業部に7〜10人社員を増やせば、私1人が獲得する契約額と同じくらいを獲得できるようになると考えています。
また再来年、筑紫野に3,000坪の物流センターが完成する予定です。開発にあたり、厳しい倍率を潜り抜けて国からの投資を得ることができました。これが完成すれば、ゆきだるま式に利益が増えるはずですし、さらなる売上拡大のためにも営業力の強化とセンターの運営が必要不可欠です。
現在、物流費の削減などに目を向ける企業が昔と比べてとても増えていますし、3PLの需要も高まっています。センター長として部下を持ちたい人、物流ビジネスの領域で活躍したい人は、ぜひ弊社に来てもらえると嬉しいです。
編集後記
シーエルは物流システムの研究開発事業も手がけている。より良い物流システムの構築に妥協しない姿勢こそが、毎年120%の成長率という結果を出しているのだと感じた。独自の「多品種少量の物流」で顧客から信頼される同社。ECの普及などで今後はさらに需要が高まり、世の中で必要不可欠な企業となる日も近いだろう。

二宮慎吾/1983年生まれ。九州情報大学卒業。新卒で人材会社に2年勤めた後、SBSロジコム株式会社に入社。2012年シーエルに入社し、センター長・立上げ責任者・営業として業務に従事。2023年代表取締役に就任。