※本ページ内の情報は2024年4月時点のものです。

GSアライアンス株式会社は、脱炭素、カーボンニュートラル社会の構築に向けて、環境・エネルギー分野の最先端技術や、材料の研究・開発をしている化学メーカーだ。

従来の石油原料ではなく、天然由来成分100%の素材を使った生分解性プラスチックをはじめ、独自の加工手法による再生型リチウムイオン電池やリチウム硫黄電池などの次世代型二次電池、白金の使用量を減らした燃料電池、量子ドット、金属有機構造体、人工光合成など最先端の材料、技術を開発している。

今回は代表取締役の森良平氏に、起業までの経緯やカーボンニュートラルについての考え方、新たな取り組みや海外展開などについて、話をうかがった。

環境ビジネスの壁:苦労を乗り越え新しい分野に事業拡大

ーー代表取締役に就任した経緯をお聞かせください。

森良平:
家業の冨士色素株式会社は石油化学会社で、私が20代の頃は日本の景気も良かったので会社も安泰でした。そのため人生の選択肢も多く、会社を継ぐという考えもなく、大学院を卒業した後は海外で働いていました。しかしその後、私が会社を継がないと、会社が買収されてしまうという可能性も高まり、家業を存続させるという責任感から、4代目として会社を継ぐことを決めました。

その後、「いずれカーボンニュートラルの時代がくる」と感じ、環境に配慮した事業を行うGSアライアンスの起業を決意しました。

ーー事業に関して、苦労したエピソードはありますか。

森良平:
脱炭素・カーボンニュートラルは環境に配慮した素晴らしい事業だと思っていますが、売上をつくることに今でも苦労しています。

特に、日本は高性能のものを安価で求める企業が多いため、なかなか国内で売ることが難しいのです。まだまだ少ない売り上げではありますが、それでも実際に、弊社の製品は海外での方が多く売れています。

一方で、2020年に国連の支援するスタートアップ企業として幸いにも採択されてから(UNOPS S3i Innovation Centre Japan)、マスコミなどにも取り上げられ始め、少しずつ知名度が上がっています。

環境に配慮した生分解性プラスチックをマニキュアに応用

ーー今後はどのようなことに注力していく予定ですか?

森良平:
BtoCの事業に注力したいと思っています。弊社では生分解性プラスチックの樹脂ペレットを、国内外の大手メーカーなどに原料として出荷する一方、成型の技術を活かした製品の製造も行っています。

多くの製品の中で特にネイルチップやマニキュアなどのコスメ製品に力を入れています。

去年は、世界初の天然由来成分を100%配合した生分解性のネイル「Re:soil(リソイル)」という新ブランドを発売しました。

水が主成分ながら、持ちが良く、発色が美しいことを特徴としており、加えて豊富なカラーバリエーションをそろえ、しかも購入しやすい販売価格であるため、国内のみならず、今後は海外に向けても販路を拡大していきたいと考えています。他にも、植物由来成分のネイルチップ、ネイルポリッシュ、UVジェルネイル、そして、マニキュア瓶のフタや、ジェルネイルの容器なども、植物由来の樹脂で作っています。化粧品の中身も容器も全て、植物、天然由来から作るコスメのブランド、と言うことにこだわっています。

世界初!独自の再生型リチウムイオン電池の技術を世界へ

ーー新たに取り組んでいることがあれば教えてください。

森良平:
再生型のリチウムイオン電池の開発に成功しました。これはリチウムイオン電池から取り出されるブラックマスと呼ばれるリサイクル材料を用いたリチウムイオン電池です。

他の企業は一度コバルトやニッケルなどの金属を抽出して電池を再生する手法でこれをつくるのですが、弊社は独自の加工手法により、直接、再生型のリチウムイオン電池をつくることに成功しました。

金属を溶かすという従来の生産工程を省けるので、大幅なコストダウンやプライスダウンが可能になります。

この手法は私自身が考え出したものですが、これについて現在論文を書いており、今後は学会などで世界に向けて独自技術をアピールしていくつもりです。

安価で再生型のリチウムイオン電池というのは世界にほとんどないので、その希少性や魅力を伝え、弊社のブランド力の向上にもつなげていきたいと考えています。電池に関しては、このブラックマスを用いた電池以外にも、リチウム硫黄電池、アルミニウム系電池などの次世代型二次電池、他にも、白金を使用しない燃料電池など最先端の電池を作る研究開発を行っています。

ーー新技術を世界に広めるため、どんな取り組みを進めていますか?

森良平:
日本で生産したものを海外に送ると、運賃・輸出申告料などの膨大な費用がかかるため、アメリカとスイスにオフィスをつくり、そこで生産できる体制を整えています。

今後は、日本・アメリカ・スイスの3拠点での生産を進めていくつもりですが、将来的にはさらに海外拠点を拡大したいと思っています。

編集後記

先見の明でカーボンニュートラルの時代がくることを早期に察知し、GSアライアンス株式会社の設立に至った森社長。天然由来成分100%の素材からなるコスメや再生型リチウムイオン電池など、環境に配慮した製品を提供し続けている。新技術の海外展開も視野に入れ、さらなる挑戦と努力によって飛躍し続けるだろう。

森良平/1973年、兵庫県生まれ。兵庫県立猪名川高校時代に米国オレゴン州McNary高校へ留学。京都工芸繊維大学卒業、修士課程から京都大学大学院に進学して、京都大学博士(工学)を取得。ハーバード・ビジネス・スクールGMPプログラムを修了。日本写真印刷株式会社(現・NISSHA株式会社)の欧州駐在員として勤務後、冨士色素株式会社へ入社。2017年に代表取締役となる。2010年にGSアライアンス株式会社を設立し、同社の代表取締役を兼務。