※本ページ内の情報は2025年6月時点のものです。

作業台やツールワゴンなど、工場備品の専門メーカーとして1961年に設立した株式会社サカエ。現在では全国45ヶ所に営業拠点と大阪、愛知に6工場を構える一大メーカーとして地位を確立している。60年以上にわたって成長し続けてきた背景には何があるのか。代表取締役社長の安川智晴氏に、同社の強みについて聞いた。

新卒で入社して長年実感してきた「働きやすさ」

ーー貴社に入社した経緯と理由を教えてください。

安川智晴:
私は第2次ベビーブーム世代で、就職氷河期と重なり就職活動がとても厳しい時期でした。大学の就職課で見つけた求人票に弊社の案内が目に留まり、会社名は初めて目にするところでしたが、工場備品の専門メーカーということで関心を持ち、説明会に参加しました。

面接まで進むと面接官の話がとても心地よく、第一印象で会社の雰囲気が良いと思いました。自社商品を持つメーカーとしての安定感、販売アイテムの豊富さ、全国に拠点を持つ営業力の強さに魅力を感じ、入社を決めました。

ーー実際に入社してどんな感想を持ちましたか?

安川智晴:
最初に福岡営業所に配属されたのですが、面接時の印象そのままで、社内の雰囲気は良かったですね。先輩との距離が近く、密着して指導を受けられる環境でしたから、働きやすかったのです。

担当エリアに70〜80社の取引先がある中、商品を売る前にまず顔を覚えてもらうことからスタートしました。最初は「サカエさん」と会社名で呼ばれたのが、仕事をする中で仲良くなり、「安川さん」と名前で呼ばれるようになり、継続した取引ができるようになったことはとてもうれしかったです。

全国ネットワークの営業拠点と豊富なオリジナル商品が強み

ーー貴社の強みはどんなところでしょうか。

安川智晴:
全国に45カ所の営業所を配置しているため、地域密着型の営業を展開できる点が大きな強みです。さまざまな業種のユーザーや販売店がある中で、なにかあれば迅速なレスポンスでフォローできます。

また、取り扱い商品の多彩さも魅力です。自社商品だけでも約1万2000アイテムあり、仕入れ商品も合わせると、カタログに載せているだけで約3万4000アイテムを数えます。

自社製品は開発から設計、製造まで一貫した生産体制があり、営業180名の販売力があります。工場備品というニッチな市場ですが、「作業をする」「運ぶ」「保管する」に欠かせない作業台、ツールワゴン、保管庫、運搬台車など現場で欠かせない製品を1式で持っていることは、弊社の強みと言えます。

ーー安川社長にとって会社の好きなところを教えてください。

安川智晴:
まずは社内の雰囲気、人間関係がいいことが第一です。営業部隊や間接部署など多くの担当者がいますが、闊達に意見交換ができる風土があります。これに加えて約1万6000社の取引先様を通じて、日本のモノづくり企業や研究施設、学校、店舗など、多様な業界のエンドユーザー様と仕事ができ、お役に立てる点です。

たとえば新しく工場を建てるという際、製品選択をまるごと委ねられるケースが多くあります。そこが営業スタッフの腕の見せどころです。お客様の課題とご要望をお聞きして、最適なご提案で工場内の生産性を向上させ、信頼を築いていく達成感は他では経験できないものです。

顧客寄りの商品開発につなげる「落ち穂拾い」の精神

ーー研修制度など教育方針についてお聞かせください。

安川智晴:
弊社は販売店様やユーザー様とのつながりを大切にしていますので、視野を広く周りのことに関心を持ち、主体性を持って行動できる人材を育てて行きたいですね。

1つのステップとして商品の理解を高めるためにスキルアップ研修を行っています。自社商品の研修のほか、新商品リリース時の発表会での研修も欠かしません。

また顧客ニーズを把握するために、実際に当社製品をご使用頂いているお客様への訪問や製品事例などのトレンドの情報共有を行っています。商品知識を得るだけでなく、なにより多くの現場を訪問することで、実際の製品の使用状況やお客様の生の声をお聞きし、実践的な営業スキルを身につけられるように、定期的に上司、先輩社員との同行営業を行います。

ーー経営するうえで大切にしていることと、今後の目標をお聞かせください。

安川智晴:
弊社は「落ち穂拾い」の精神を大切にしています。日頃の小さな案件や、ユーザーの些細な言葉にもしっかり対応すること。それが、次の大きな案件にもつながってくるはずです。些細なものを積み上げてしっかりフォローしていく姿勢を念頭に置いています。

現在、約1万2000アイテムほどあるオリジナル商品のシェアを伸ばし売り上げを拡大していきたいですね。販売店様、メーカー様との協業。まだ弊社が入り込めていない市場の開拓など弊社製品で多くの現場を支えていきたいですね。

今後も、自社の都合で商品をつくるのではなく、お客様の生の声を聞いてユーザー目線に立って商品化することに注力していきます。そして、製品に対する信頼を揺るぎないものとし、購入した企業にとって使いやすく働きやすい環境にすることに取り組んでいきます。

編集後記

安川社長は株式会社サカエで働くことについて「アイテムが豊富なので2年目、3年目と商品知識は年を追うごとに向上します。提案できる引き出しも増え、自分自身で成長を実感できるでしょう」と、長く働くメリットを語っている。

このことは安川社長自身が一般社員から29年間在籍してトップに就任したことで、ある意味証明している。同社には長い時間軸で成長できるような働きやすい環境があり、それが膨大なオリジナルブランド品を開発する組織力と無関係ではない気がした。

安川智晴/1972年、福岡県生まれ。1996年、株式会社サカエに入社し、福岡営業所に赴任。2000年に福岡営業所所長に就任。2003年東京ブロック東京南営業所所長、2005年東京ブロック地区長、2007年副ブロック長に就任。2009年関西ブロック大阪営業所所長、2010年関西ブロック長に就任。2013年に西日本統括、2016年に執行役員に就任。2019年取締役、2022年常務取締役、2024年取締役副社長を経て代表取締役社長に就任。