株式会社アビストは、「デジタルソリューション企業」を目指し、機械設計・システム・ソフトウェア開発を行う会社だ。具体的には「機械設計開発」「システム・ソフトウェア開発」「電気・電子回路設計」の3つの分野で、メーカーの開発業務を請け負い、部品やシステム、回路の工業設計技術サービスを行っている。
今回は進顕氏に、社長就任までの経緯や苦労したエピソード、事業の強み、今後の展望などについて話をうかがった。
異業種から機械設計・システム・ソフトウェア開発会社の社長に就任
ーー社長に就任するまでの経緯を教えてください。
進顕:
大学卒業後、1993年に酒類や飲料を扱う商社である株式会社明治屋へ入社しました。その後、2011年10月に三菱食品株式会社へ転籍し、2012年10月に新規事業開発担当部長として弊社に入社しました。
その前後に東日本大震災があり、生きていく上で水が重要であることを再認識したことをきっかけに、2013年には水の販売会社として、子会社の株式会社アビストH&Fを創業者である父、勝博氏とともに設立し、社長に就任しました。
その後、アビスト本社の新規事業担当や専務などを経て、2022年10月に弊社の社長に就任しました。2023年2月にアビストH&Fも合併してひとつの会社となりました。
トップダウンからボトムアップへと社内改革を進めた
ーー社長に就任したときはどのような心境でしたか?
進顕:
アビストの初代社長は私の父なので、社員が私を受け入れてくれるか危惧していました。またアビストH&Fでも、畑違いの会社で20年勤めてきた私が水素水事業に取り組むことになったので、最初はわからないことばかりで、不安も大きかったですね。
しかしその中でもAIソリューションを担当するなど、アビストで実績を残してきたので、社員にも少しずつ認めてもらえるようになったと思っています。
ーー就任後の苦労したエピソードを教えてください。
進顕:
先代の父はカリスマ性が強く、社員は強烈なリーダーシップに引っ張ってもらうというようなトップダウンの体制でした。
しかし100年に1度と言われている自動車業界の変革期やコロナ禍などにより、環境が大きく変化し、このままのやり方を続けていても、これまで通りの成長が見込めないのではないかという危機感を覚えました。
そこでトップダウンからボトムアップの企業にすることが必要だと考え、社員皆で一緒に考えられるような、風通しのいい環境をつくることにしました。
今もその環境づくりの途中ではありますが、以前よりも意見や相談がしやすい環境になったのではないかと感じています。
派遣・請負企業からデジタルソリューション企業への進化を目指す
ーー貴社の事業内容や強みを教えてください。
進顕:
機械設計とソフトウェア開発という2本柱を持っており、この2つの事業が売上のほとんどを占めています。
弊社は主に請負業務や技術者の派遣サービスを提供していますが、創業期には3次元CADを扱える技術者を多く育成し、そのスキルを必要とする業界でのシェアを広げていきました。
そして拡大期には、CADのオペレーションに留まらず、お客様と一緒になって機械設計の開発段階から関わるようになりました。それができるのは、お客様の仕事のやり方や仕組みを、CADを通して深く知っているからであり、それこそが弊社の強みだと思っています。
ーー現在取り組んでいる改革について教えてください。
進顕:
派遣・請負企業からデジタルソリューション企業へ変わっていけるよう、改革を進めています。派遣・請負事業はお客様から仕事をいただくことになりますが、これだけだとお客様の状況に大きく左右されることがあります。
また、お客様からの要望も高度化しています。既存の事業を引き続き拡大していくにしても、私たちから新しいソリューションサービスを提供していく必要があると感じました。
AIやDXに関する専門家はたくさんいますが、業界や会社ごとの困りごとや改善したいことは私たちが一番理解しているのではないかと感じます。今まで培ってきた弊社の強みを活かしてお客様が気付いている部分はもちろんのこと、気付いていない改善点にも焦点を当ててデジタル技術を使ったサービスを提供しようと思っています。
ーー新製品開発で取り組んでいることはありますか?
進顕:
AR技術を活用した表示プログラム「DiffAR」を開発しました。これはARの技術を活用して、iPadで実物製品と3D-CADモデルとの差異を表示する、差分検知システムです。
ズレが生じている部分や変更した部分がリアルタイムで色分け表示されるので、iPad一つで手間を省いて効率的に確認することができます。今、最も力を入れている分野なので、今後も伸ばしていけるよう、取り組んでいきたいと考えています。
お客様の悩みを解決し、技術者が働きやすい企業を目指す
ーー仕事をする上で大切にしていることを教えてください。
進顕:
信頼関係です。これは弊社の大切な企業文化としていて、社員もお客様に寄り添って仕事に取り組んでいます。そのような先輩たちを見た後輩たちが同じように信頼関係を大切にしていくという好循環が生まれ、それが継承されています。
ーー貴社が求める人物像を教えてください。
進顕:
前向きな姿勢を持った方と一緒に働きたいですね。どんな仕事をするにしても、チャレンジ精神を持って前向きに取り組める方が弊社にマッチしていると思います。
ーー最後に学生や若手人材に向けてメッセージをお願いします。
進顕:
デジタル技術を活用し、顧客の潜在ニーズに応えるソリューション提案型企業「デジタルソリューション企業」になることを目標に、現在事業を進めています。
また創業の精神「設計技術者が自らのために、ともに働き合う設計技術者集団の確立」にあるように、技術者が夢や希望を持ち、いきいきと働ける環境を提供することでサスティナブルな社会の実現を目指していきたいと思っています。
どちらもまだ道半ばではありますが、必ず目標を達成し、持続的に発展していけるように努めていきます。
編集後記
就任当初は先代のカリスマ社長によるトップダウンの体制に悩みながらも、そこから社員全員が自由に意見を発信し、尊重されるようなボトムアップの体制に変えるという社内改革を進めた進社長。
派遣・請負企業からデジタルソリューション企業へと進化していけるよう、事業拡大や社内強化に取り組む株式会社アビストに、これからも注目していきたい。
進顕/1970年東京都生まれ。大学卒業後、株式会社明治屋に入社。2012年、株式会社アビストに入社。新規事業開発担当部長、株式会社アビストH&F代表取締役社長、株式会社アビスト常務取締役社長付新規事業担当、代表取締役専務を経て、2022年、代表取締役社長に就任。