※本ページ内の情報は2024年4月時点のものです。

前身の企業を含め、1965年からの歴史を持つビッグテクノス株式会社。粘着剤・接着剤の製造販売というニッチ産業において、すでに独自のポジションを築きながら新製品開発にも積極的だ。特殊技術を生かした製品が評価され、2024年3月25日に大阪万博に出展することが正式に発表された。そんな同社の代表取締役社長である駒元氏に、会社の歩みや今後の戦略をうかがった。

ビッグテクノス設立と社長就任までの経緯

ーー駒元社長のご経歴をお話しいただけますか。

駒元和樹:
大学を卒業後、父が経営する印刷インキ会社に4年間勤めていました。その間、ビッグテクノスの前身である三協化学工業株式会社が設立され、創業者の方と私の姉が結婚したのです。三協化学の新工場を建てる際に、父が土地を提供するといったご縁もありました。

私は三協化学へ移り15年ほど勤めたのち、1988年4月に、三協化学の関連会社であるサン・アート株式会社を立ち上げ、代表に就任しました。

ーー貴社が設立され、社長に就任された経緯をお聞かせください。

駒元和樹:
三協化学の製造部門は、プラスチック着色剤、粘着剤、塗料の3つがメインでした。1992年に粘着剤はリキダイン、塗料はサンプラスと事業が分社化され、1999年に再び3社が合併してビッグテクノス株式会社が設立されたのです。

義理の兄である三協化学の創業者が2008年に体調を崩したため、私は副社長の名目で実質的な社長業を始めました。正式な社長就任は2016年ですが、先代の考え方や会社の流れをそれなりに引き継いでいるという自負があります。

バッテリーのリサイクルに欠かせない粘着シートが強み

ーー貴社の事業内容についてご説明ください。

駒元和樹:
粘着剤・接着剤メーカーとして、原材料の調達から製造まで行っています。特に粘着剤の比率が高く、三重県にある子会社で粘着テープ・シートを製造し、市場に出すというのが基本の流れです。「粘着性能を上げてほしい」「粘着が離れるようにしてほしい」といったご要望に沿って、お客様に最適な設計を提案しています。

ーー現在開発中の製品があるとうかがいましたが、どのような製品なのでしょうか?

駒元和樹:
新しい粘着テープの開発を始めてから7〜8年経ち、ようやく日の目を見られそうな状況です。テープは粘着力が重要ですが、リサイクルする際は剥がれやすさが求められます。弊社は、粘着力はありながら電気を通すと接着がゼロになる製品を開発しました。

ーーどのような製品に使用される予定でしょうか?

駒元和樹:
自動車やスマートフォン、家電など、バッテリーを固定しているすべての電気製品です。バッテリーはテープで固定されています。スイッチを押すと電気が流れ、簡単にバッテリーが外れるようになれば、個人でも交換やリサイクルが容易となるでしょう。

リサイクル法が施行されたことで、各企業はバッテリーの交換方法について研究を進めています。弊社の新技術についても、多数の大手電子機器メーカー様に興味を持っていただいています。用途は他にもあるはずですし、巨大市場になると予想しています。

戦略的な事業変革と社長の役割

ーー今後の展望を教えてください。

駒元和樹:
新製品を本格的に生産することになれば、機械の導入だけで十数億円はかかります。なかなか手痛い出費ですが、下請け業務を徐々に減らすことにもつながります。設備投資によって高付加価値のものを商品化していけば、ますますいい会社になれるでしょう。

ニッチな分野を得意とする企業ですから、その強みを伸ばしていければと思います。利益を上げるためには良い方向への好循環が必要で、分岐点を越えると企業は一気に良くなると考えています。

ーー社長業についての思いをお聞かせください。

駒元和樹:
月の初めには全社員を集めて朝礼を行っています。私の思考や会社の将来に関する話をはじめ、月次の決算数字もほぼオープンにしています。

社員の士気を上げるためでもありますが、社長として不信に思われるようなことは絶対にしたくないのです。お互いに信頼感を抱くことができ、社員が気持ちよく働ける雰囲気と環境づくりをすることが私の仕事です。

編集後記

粘着剤・粘着製品の設計・開発・製造において、50年以上にわたり技術を積み上げてきたビッグテクノス。顧客のニーズに合わせた、自由自在な対応力が何よりの強みだ。

今後の情報機器やEVの発展を支えるために不可欠な、同社の製品の展開に注目していきたい。

駒元和樹(こまもと・かずき)/1947年8月30日、大阪府生まれ。龍谷大学経済学部を卒業後、家業である印刷インキ製造所に4年間在籍。26歳でビッグテクノス株式会社の前身、三協化学工業株式会社へ入社。1988年、関連会社のサン・アート株式会社を設立し、代表取締役社長に就任。2016年、ビッグテクノスおよびビッグコーティング株式会社の代表取締役社長に就任。