※本ページ内の情報は2024年4月時点のものです。

少子高齢化や自然災害の頻発、激甚化が問題となる中、人々の暮らしに寄り添ってきた保険会社には、環境の変化に応じたデジタル化の推進や顧客ニーズに合わせた商品開発など、持続可能なビジネスモデルの構築が求められている。

保険業界で確固たるビジネスモデルを確立し、成長し続ける株式会社NHS。今回は、代表取締役社長の樋口公裕氏に経営者に転向したきっかけや取り組み、今後の展望などをうかがった。

保険の売り方に疑問を感じ、経営者の道へ

ーー貴社の事業内容について教えてください。

樋口公裕:
複数の保険会社から委託を受け、乗合代理店として生命保険・損害保険・少額短期保険を取り扱っています。弊社では、テレマーケティングと対面の双方を併せ持つハイブリッド型、および通販による電話完結型のスキームを活用して保険のご提案や保障の見直しを行っています。

ーー今の事業につながったエピソードなどはありますか。

樋口公裕:
大学卒業後、千代田生命保険相互会社に就職しましたが、入社数年後にバブルが崩壊し会社の状況が悪化して、アリコジャパン(現メットライフ生命保険株式会社)に転職しました。

保険会社を2社経験する中で、今後、保険の販売方法が変わっていくだろうと感じました。当時はセールスレディが知り合いに保険を販売するのが主流でしたが、それとは違うアプローチの仕方やお客様との接点作りに興味を持ちました。

また、今では当たり前になっていますが、当時は消費者自身が複数の保険を比較して加入することが全く考えられない状態で、供給側と消費者側に情報格差がありました。

インターネットをはじめ、消費者が自ら調べて情報を得られる時代に転換していく中、いずれ保険業界も販売方法や経路、流通のあり方が変化する可能性を私は感じていました。

ーー経営者に転身したきっかけは何だったのでしょうか?

樋口公裕:
初めは、現在の会社の前身である日本保険サービス株式会社の投資ファンドに経営者として参加しました。知り合いから「他に適任者がいないからやってくれ」と言われ、経営経験はなくてもビジネスの経験はあったため「じゃあやりましょう」と挑戦することにしました。

社長就任後の苦労を攻めの姿勢で乗り切る

ーー社長就任時に苦労したエピソードを教えてください。

樋口公裕:
私が社長に就任した当時は、某保険会社(A社)の売り上げが90%を占めていました。そして、その半年後にA社は業績不振で新規の契約受け付けを止めることになるのです。

ただ、私は事前にA社の経営が厳しいことを業界のコネクションを通じて察知しており、就任後に急いで新しい取引保険会社を増やしていきました。一刻の猶予もないと感じていたので、「もう攻めるしかない」と規模拡大を推し進めました。

半年で、A社のシェアを半分程度に落としました。もちろん痛手はありましたが、なんとか会社を存続できたことは大きな成果でした。また、そのタイミングで現在は弊社のグループ会社である株式会社創企社を追加買収しました。

ーー買収と規模拡大を成功させた戦略は何でしょうか。

樋口公裕:
当時の創企社は、創業数十年の歴史をもち保有契約も豊富にありましたが、既契約に対してアプローチする人員が足りず、会社の資産を活かしきれていませんでした。

一方、弊社では、人員は足りていましたが、売り上げを上昇させる材料がなかったため、買収によって新しくファイナンスの入れ替えと金利条件を良くすることで乗り切りました。

乗合代理店の契約1件あたりの利益率は、各保険会社の販売手数料のランクに応じて変わります。

現在は保険会社がさまざまな商品を販売しており、その中で顧客と会社双方にとっていかに良いものを提案しているかが乗合代理店の評価ポイントになります。複数の会社から優れた商品を選ぶには相応の企業規模も必要になるため、タイミングをみて追加買収を行い、一気に会社を大きくしました。

真っ白な新人が第一線で活躍できる職場づくりを

ーー教育体制について強みなどはございますか?

樋口公裕:
弊社は、積極的に新規卒業者を採用し、真っ白な状態の社員を教育して保険営業に携わらせていることが強みです。社長就任後に、社員育成を担う教育部を新設し、日々の行動パターンをマニュアル化した教育プログラムを作成しました。そして、入社後1週間、1ヶ月、リーダーに上がるタイミングにあわせて必要な教材を用意し、毎年ブラッシュアップしています。

また、お客様とのやり取りを見える化し、各自が録音した音声を聞いて「どのような営業トークがお客様のお役に立てるのか」を振り返り、次に活かす方法もとっています。

ーー今後の展望を教えてください。

樋口公裕:
核家族化や少子高齢化に伴い、保険の役割やニーズ、販売側に求められる知識も変化していますが、若手が第一線で長く活躍できる職場づくりをしていきたいと思います。

保険業務はどんなツールであれ、いつでも相談でき、身近に感じられることが求められています。インターネットやSNSを含めたウェブマーケティングも積極的に取り組みつつ、ウェブのみで完結するのではなく、リアルとオンラインを上手く融合させ、利便性の高いツールをお客様のご希望に合わせて提供できる営業組織を広げていきたいと思います。

編集後記

幾度も逆境を乗り越え、攻めの姿勢で自らチャンスを生み出してきた樋口社長。

若手が活躍できる場をつくり、常にお客様が相談できる身近な存在を目指す株式会社NHSのさらなる挑戦はこれからも続く。

樋口公裕/1993年4月千代田生命保険相互会社(現ジブラルタ生命保険株式会社)に総合職として入社。26歳で当時最年少機関長として綱島営業所を任され、港北営業所長などを歴任した。2000年5月アリコジャパン(現メットライフ生命保険株式会社)に転職。2015年、株式会社NHSの代表取締役社長に就任。2019年、NHSグループをホールディングス化し、新たに持株会社NHSインシュアランスグループ株式会社を設立した。