※本ページ内の情報は2024年5月時点のものです。

業務用食品専業卸国内売上No.1を誇り、77年の歴史があるトーホーグループ。(東証プライム市場上場)

そのグループの中核企業として、「A-プライス」をはじめ、「せんどば」「こまつや」「ニッショク」の屋号で国内30都府県に95店舗(※¹)を展開し、キャッシュアンドキャリー(業務用食品現金卸売)事業を手掛ける。

ディストリビューター(業務用食品卸売)事業が食材をお届け出来ない飲食店様の他、一般のお客様のイベント需要などに対しても店舗形態で業務用食材を販売。あらゆるジャンルの業務用食材を豊富に品揃えするとともに、業務用調理機器の取り扱い、品質管理、メニュー提案まで、飲食店様の繁盛店づくりをサポートする。
(※¹ キャッシュアンドキャリー事業として2024年4月時点)

食品流通業界は競争相手が多く、競争率が激しい。そのため、独自の経営戦略が業界で生き残るための鍵となる。今回は競合他社と差別化を図る株式会社トーホーキャッシュアンドキャリーに注目した。

代表取締役社長の田代光司氏は、度重なる困難を乗り越えてきた。常に前向きな姿勢を忘れないために社長が意識していることとは。入社したきっかけから今後の事業展望まで幅広く話を聞いた。

挨拶はコミュニケーションの基本

ーーまず初めに、入社したきっかけ、入社後の仕事について教えてください。

田代光司:
私が入社して間もない昭和60年代当時は、喫茶店が多く存在し外食産業も活発化している中で、この業界は右肩上がりでやりがいがあるだろうと思いトーホーグループへ入社しました。

最初の配属がトーホーグループのコア事業の一つであるディストリビューター事業部で、主にホテルやレストランなど、食のプロのお客様へ提案型営業を行っていたのですが、社会経験の浅い新入社員が、一流のプロのお客様への食材提案をしなければならず、常に勉強の日々でした。

ーー仕事をする上で心掛けていることを教えてください。

田代光司:
お客様ファーストを心がけています。「気持ちの良い挨拶は人間関係を良好にしてくれる」という思いで、39歳の時に支店長に就任してからは、来客者に気持ち良く訪問していただけるよう、チームワーク良く“全員一斉に”挨拶をすることを徹底しました。

また、弊社は、コーヒーメーカーでもあるので、さらに美味しいコーヒーを飲んでいただきたいという思いから、手間をかけたハンドドリップで淹れたコーヒーを提供することにしました。そうすることで「トーホーで飲むコーヒーが一番おいしい」という会話のきっかけができ、円滑なコミュニケーションにつながりました。

ーー苦労したエピソードがあれば教えてください。

田代光司:
2010年にM&Aでグループ入りをした株式会社トーホー・共栄(当時)の代表取締役社長に就任したのですが、さまざまな事業所のマネジメントを行う必要があり、大変苦労しました。私はトーホーで教育を受けましたが、企業風土の異なる環境で教育を受けた方々とは価値観やルールが違い、意思疎通に苦労しました。

まず、問題解決をするために着手したことは、異なった環境で働いてきた者同士が、働きやすい環境になるよう会社のルールを新しく作成し、浸透させることでした。やはりここでも挨拶を徹底し、コミュニケーションを大切にしました。

社長就任後に訪れたコロナ危機

ーートーホーキャッシュアンドキャリーの代表取締役社長に就任してから苦労したエピソードがあれば教えてください。

田代光司:
2019年に就任しましたが、その翌年にはコロナ禍に突入し先が見えず困難が次から次へと舞い込んできたのを覚えています。

しかし、2020年は社内の“当たり前”を見直し、コスト・コントロールを徹底したことにより、結果的にコロナ前より収益力が向上しました。2021年はコロナ禍で売上に少し影響があったものの、2022年は増収増益となりました。

部門という小さな組織の立て直しと、会社という大きな組織の立て直しとでは仕事の進め方が異なるので、さまざまな対策を講じて会社全体で困難を乗り越えました。

ーーコロナ禍をどのようにして乗り越えたか教えてください。

田代光司:
弊社にとって紙媒体の広告や販促物はお客様への訴求方法として大切なツールでした。しかし、コロナ禍でコストの見直しが必須となり、紙媒体の広告や販促物を見直し、A-プライスアプリを利用してデジタル化を推進しました。

例えば、月2回郵送していたダイレクトメールを止めデジタル化へ移行しましたが、社内では「紙で届かないと顧客に情報が行き渡らないのでは」と不安視する声も多く、反対意見もありました。しかし、この決断をしたことで結果的に大きなコストダウンとなり、企業体質の強化につながったと思っています。

また、アプリの内容を充実させ、さらに新規入会キャンペーンを実施することで、就任当初は16万人ほどの会員数でしたが、現時点では94万人と大幅に会員を増やすことに成功しました。

業界で生き残るためには

ーー他社との差別化を教えてください。

田代光司:
弊社は社名の通り、業界に先駆けてキャッシュアンドキャリー方式を導入した「プロの食材の店」で、現在でも対面接客に注力しています。

他社との大きな違いは、

①販売面では、対面接客を大切にしており、主要顧客である飲食店様へのメニュー提案や品揃えに関する相談等きめ細やかな対応をしています。そのため、スタッフは飲食店顧客の顔と屋号、ご購入商品を覚え、一客一客のニーズに応えた提案をしています。

②商品面では、飲食店様を知り尽くしているトーホーグループが品質にとことんこだわったプライベートブランド商品「EAST BEE(イーストビー)」「スマイルシェフ」などの品揃えが自慢です。さらに、季節ごとの厳選した産地直送食材、自社焙煎のコーヒーも充実させています。

③サポート面では、飲食店を営む上で必要な幅広いサポートに対応しています。店舗でご相談いただければ、トーホーグループが有する業務支援システム、品質管理サービス、業務用調理機器、店舗内装設計・施工など食材のみならず幅広いトータルサポートのご提案が可能です。

ーー貴社の強みを教えてください。

田代光司:
弊社の事業コンセプトは「安心、安全な商品と価値あるサービスの提供を通して飲食店の商売繁盛に貢献するプロの食材の店」です。その実現のためには、スタッフ一人一人が、食のプロフェッショナルに対し、良い商品を提案し評価してもらうことが仕事の本質だと自覚していること、それが弊社の最大の強みだと思っています。

だからこそ、個々が熱意を持って提案でき、良い商品が生まれやすいのだと考えています。

食を通して社会に貢献できる企業であり続けるために

ーー今後の展望を教えてください。

田代光司:
新たなビジネスであるECショップが3年目で、FC(フランチャイズ)展開が2年目を迎えています。ECに関しては、A-プライスの店舗がない地域のお客様でもトーホーグループの商品をお求めできるよう、良い商品を取り揃え、サービスの充実や販売チャネルの多様化に取り組んでいく予定です。(A-プライスオンラインシッョプ)

FCに関しては、未出店地域や都市部などさまざまな地域の方々に弊社の商品を購入していただけるよう出店を加速していきたいと思います。また、直営店では本年2月に、都市型店舗として、大阪の繁華街に「A-プライス久太郎町店」をオープンさせました。

A-プライス久太郎町店

通常のA-プライスより売り場面積は約4割と小さいものの、自社焙煎のコーヒー量り売りをはじめ、地域のニーズにあった品揃えとしました。繁華街の飲食店様は店舗の構造上、食材の保管スペースが狭くなる傾向があり、在庫のストックが難しく、是非パントリー代わりにご利用いただきたいと思っています。

初のセルフ式コーヒー量り売り

ーー若い方へメッセージをお願いします。

田代光司:
私は「今までこうだった」という言葉が好きではありません。それは過去の経験や前例踏襲だけに頼っていると人は成長しないと思っているからです。若い方には、固定観念にとらわれず新しいことにどんどん挑戦してもらいたいと思います。

その時は苦労だと思っていても、後で振り返れば自分の成長につながるものなので、今はさまざまなことにチャレンジしていってください。

編集後記

世間を震撼させたコロナ禍を乗り越え、成長のきっかけとしてプラスに考えた田代社長。

食品を扱うプロに対して販売を行うという意識は全ての従業員に浸透しており、会社の業績にもつながっている。

食の安全性が重要視される業界において、36年もの間、プロのお客様から信頼を得ている「A-プライス」。今後も活躍の歩みを止めない。

田代 光司(たしろ・こうじ)/1963年生まれ。熊本県出身。1981年株式会社トーホー入社。2010年株式会社トーホー・共栄の代表取締役社長に就任。2019年株式会社トーホーキャッシュアンドキャリー代表取締役社長(現任)。