※本ページ内の情報は2024年4月時点のものです。

東京と神奈川を中心に、冠婚葬祭全般のプロデュース事業を運営している株式会社くらしの友は、非日常のサービスを提供する会社だが、日常のサービスへの事業展開も進めている。

今回は代表取締役社長の伴久之氏に、これまでの歩みと今後の展望についてうかがった。

互助会だからこそできる、地域に根ざした冠婚葬祭事業

ーー冠婚葬祭事業は他社も運営していますが、貴社ならではの特徴や強みを教えてください。

伴久之:
弊社の特徴は、互助会という組織を母体にしていることです。会員には月々1000円からの会費を積み立てていただき、その資金を婚礼や葬儀などに充てています。そして積立金額以上の価値のサービスを提供するよう努めています。

弊社はもともと貸衣装の事業を営んでいましたが、貸衣装の主な場である冠婚葬祭から互助会に展開しました。そのときに、地域婦人団体連合会からの支援をいただいて事業を拡大できました。地域への恩返しが、冠婚葬祭にとどまらない活動を始めるきっかけになったのです。

また「互助会=葬儀」というイメージが強いのですが、暮らしに必要なお手伝いもしています。「地域の皆様にとって暮らしの基になる会社」というのが弊社の社名の由来です。

ーー地域に根ざした活動を具体的に教えてください。

伴久之:
高齢者は趣味の会などを開いていますが、弊社はそのような集まりの代表者と深くつながっています。このつながりを活かして町内会のイベントに協力しています。そして、地域の皆様からの信用を積み上げて会員様の輪を広げています。

会社の三代目として育ち、反対を押し切ってアメリカへ留学

ーー幼少期や学生時代に学んだことを教えてください。

伴久之:
創業者の祖父からは「お前が三代目をやるんだ」と言われて育ちましたが、同時に「贅沢をしない・ものを大切にする・人に迷惑をかけない」という大切な、人として基本的な考え方を教わりました。

また、幼い頃から近所の集まりに参加したことも、現在まで続く地域に根差した経営につながっています。

成人後は、祖父からの反対もあったのですが、それを押し切ってアメリカの大学に留学し、世界基準のマネジメントについて学びました。ものごとを相対的に見るという価値観が備わったと思います。

経営者へのキャリアステップ、コロナショックの最中の社長就任

ーー留学後はすぐに、くらしの友に入社しましたか?

伴久之:
社会経験のために銀行に就職しました。長時間勤務の厳しい労働環境でしたが、そこで日本の企業文化を学びました。融資を担当する部署で、スタートアップの経営者などに出会ったことは、貴重な経験でした。企業経営に向けた熱意などの経営者の綺麗な側面だけでなく、お金に対する貪欲さなどのシビアな側面も勉強しました。

ーーくらしの友への入社後から社長就任までの経歴を教えてください。

伴久之:
まずは冠婚葬祭事業の現場でひと通り修業を積みました。それから人事や総務などの管理部門を経て役員となり、冠婚葬祭事業の一切を任されました。専務として企画経営部門を率いたのちに、2020年に社長に就任しました。

ーー2020年といえばコロナショックの渦中ですが、大変でしたか?

伴久之:
たしかにコロナ禍で苦しい時期の社長交代は大変でしたが、私にはそれまでの現場の経験があったので、社員のモチベーションを上げて困難を乗り越えることができました。

コロナショック、少子高齢化、経営環境の変化への対応力

ーー具体的なコロナショックの影響があれば教えてください。

伴久之:
マスク着用やアルコール消毒などの変化はありましたが、葬儀や婚礼そのものがなくなったわけではありません。

オンラインでの葬儀サービスも始めましたが、会員からの反応は薄かったですね。今までの形式を希望する方が多く、日本のしきたりに合った冠婚葬祭へのニーズが強かったので、そこを大切にしたいと感じました。

ーー今後の展望について教えてください。

伴久之:
少子高齢化で日本の人口は減少していますが、死亡人口は増えているので葬儀業界は成長産業と言われています。団塊世代が高齢者になることで、統計では東京の死亡人口は2065年まで上昇すると予測されています。葬儀の需要を取り込めるように、今後10年で50か所以上まで増やす計画です。

全国では2040年に死亡人口の上昇が上限に達することになります。そして、時代とともに葬儀が小規模化しています。このような事業環境を踏まえて、特定の地域に集中して小さな斎場をつくるドミナント戦略を策定しています。

また、今後20年・30年と斎場を増やし続けるのではなく、時代の変化に合わせて既存の施設を改修し、新しい領域で事業を再構築する計画です。

ーーどのような事業の計画がありますか?

伴久之:
30年・40年スパンの施設を、人が集まる地域に建設します。将来の需要変化に対応するために、今は主力事業の葬儀で収益を上げつつ、事業環境を見ながら段々とシフトしていくことを考えています。

リゾート婚を希望する人もおり、婚礼のニーズが多様化しています。旅行のニーズも人が生きている限り、無くなることはないでしょう。

弊社は既に、冠婚葬祭だけでなく、リゾートなどの付帯サービスを豊富に用意しています。今後は会員制のスモール・ラグジュアリー・ホテル(小規模な都市型高級ホテル)を展開することも構想しています。これらを通じて、会員様のLTV(顧客生涯価値)を高めるサービスを提供します。

日本人の魂を持ちつつ、コミュニケーションの扉は世界に開く

ーー就職活動している人に向けて、貴社が求める人材と貴社の職場環境について教えてください。

伴久之:
私は「大切な人の、大切なことを、大切にする」ということを信念に持っており、人とのコミュニケーション、人への気遣いを最も重視しています。勉強も良いのですが、他者を思いやる心が第一です。

弊社はフラットな組織を目指しています。私たちと一緒に成長していく志のある方であれば、その環境が整っています。そして、私は海外経験もあるので、国際的な感覚で時代に対応できます。今後は海外進出も視野に入れており、外国人やマイノリティの方も大歓迎です。

編集後記

冠婚葬祭という非日常のサービスを手がける株式会社くらしの友だが、その根底には互助会の中で培われた地域の人たちとの日常的なつながりがあった。そして、伝統的な文化を大切にしながら、時代の変化に対応して事業を拡大している。

これからも時代の変化に対応し、成長を続ける株式会社くらしの友は、私たちに素晴らしいサービスを届けてくれるだろう。

伴久之/1978年、横浜市生まれ。アメリカのオハイオ州立トレド大学を卒業後、株式会社三井住友銀行に入行。2005年に祖父・伴和夫氏が創業した株式会社くらしの友に入社。社内オペレーション改革やリブランディングを推進するだけでなく、冠婚葬祭業から総合生活サービス業への事業拡大等を行い、提供サービスを「非日常」だけでなく「日常」へと拡大。2020年に父・伴良二氏の後を継ぎ、代表取締役社長に就任。