「ホワイト企業認定」とは、安定した労働環境を提供し、従業員の働き方に配慮する企業に「ホワイト財団」より与えられるものだ。外部からはわかりにくい雇用環境を可視化することで、求職者に対し、働きやすさをアピールする仕組みとなっている。
千葉県を拠点として地域に密着しながら、業界の枠を超えた事業を展開する株式会社エアリーは「ホワイト企業認定」を受けている企業の一つだ。
今回は、人を大切にする山本社長に、これまでの軌跡と人材育成、そして今後の展望についてうかがった。
ITをベースとした多事業を展開するまでの軌跡
ーー起業の経緯を教えていただけますか。
山本成人:
株式会社富士通京葉システムエンジニアリング(2016年に富士通株式会社に吸収合併)で約3年間、技術者として勤務した後、IT関連の業界で幅広い仕事を手がけたいと考え、退社しました。その後3年間、フリーランスとして活動しています。
各業界の知識を深めるには、規模の大きな仕事が必要です。個人では大規模案件の受注が困難である一方、会社組織に属すると自分のやりたいことが制限されがちです。そういった背景から、起業して株式会社エアリーを設立しました。
弊社は、私が前職で技術者として培った経験を活かし、基幹システムの開発・運営・保守などITがメインの業務となっています。私自身、もともと特許システムの開発に携わっていたため、自治体や企業の特許関係の業務も多数取り扱っています。
ーー多業種展開の強みについて教えていただけますか。
山本成人:
お客さまと意思疎通を図りながらシステム設計を行うには、その業界全体の理解が欠かせません。たとえば、物流業界のシステムを開発する際は、業界専門誌を定期購読して知識を深めました。
IT業界で培ってきた多様な業界の知識を活かし、緑化事業やサプリメント事業など、他業種への進出も図ることで、結果的に他社との差別化につながっています。
経営の課題と人材育成の取り組みに力を注ぐ
ーー企業経営において注力したことをお聞かせください。
山本成人:
会社が成長するにつれ、社員数も増えました。社員に関しては、経年とともに給与を上げなければなりません。そういった点から、収入を確保し続けるためには、営業力が重要だと気づきました。
結果的に、私自身が営業に専念することに決め、エンドユーザーにサービスを行き届かせるために、さまざまな試行錯誤を重ね、営業活動を展開しました。今では私が引退した後も会社が存続できるよう、社員をサポートする立場に回っています。
ーー社員のサポートとは、具体的にどのようなことをしていますか?
山本成人:
社員が自立するための教育です。私の経験を共有しつつ、自立型学習組織の構築を目指しています。ちなみに、自立型学習組織とは、各部署が独立して生み出すリソースを結びつけることで、さらに大きな仕事を生み出す仕組みです。
弊社は多くの事業部があるので、私は各事業部の集まりに参加し、コミュニケーションを取るよう意識していました。コロナ禍において直接コミュニケーションを図るのが困難な時期もありましたが、今ではほぼ平常の状態に戻っています。
ホワイト企業であり続けるための展望
ーー千葉に根付いた多彩な事業展開をするうえで、どのような展望をお持ちですか?
山本成人:
弊社では、IT業界の経験者で千葉県へのIターンを検討している方々を対象に、パソコン教育事業やプログラマー・システムエンジニアの採用をはじめとする新たな雇用に関する取り組みを開始しています。他業種や他の会社で勤務経験を持つ人材が集まることで、新しい視点を得られるという利点もあります。
また、長いお付き合いのあるお客さまに対して、コンサルティングも実施しています。すでに関係性ができているため、経営方針やビジネススタイルを深く理解しており、IT企業としてDX推進などを提案できる点も強みですね。技術面だけでなく、顧客のさらなる発展を促すコンサルティングを心がけています。
ーー貴社は「ホワイト企業認定」を受けていますが、労働環境に対する考えをお聞かせください。
山本成人:
社員が「働きたい」と思える環境づくりを常に心がけています。とくに、中小企業は人材を確保するために、積極的な取り組みが必要です。外部の方には労働環境が見えにくいため、「ホワイト企業認定」を受けました。
たとえば、弊社ではコロナ禍の後もお客さまのご理解をいただき、オンラインの打ち合わせを継続しています。もちろん日頃より、従業員の皆が長く働き、活躍できる環境を整えています。
ーー貴社が求める人物像を教えてください。
山本成人:
技術力も重要ですが、それ以上に柔軟な思考力を重視していますね。面接では、絵を描いてもらうなどのユニークな採用方法で、その人の性格や価値観を見るケースもあります。
あと、若い世代には「やりたいことがあったら何でも挑戦してみるべきだ」と伝えたいですね。若いときにしかできないこと、やりたいことをすべて経験すれば、そこから新たな道が拓けると思います。
ーー今後はどのような点に注力するお考えですか。
山本成人:
AIの進化に伴い、コードの生成は不要になるかもしれません。その中でエンジニアが生き残るためには、顧客先の業界の知識を習得することが必要です。エンジニアもコミュニケーション力がさらに求められます。リスク分散のためにも、一業種に特化せず、今後は多業種経営を進める予定です。
編集後記
IT企業としてさまざまな業界のシステム開発を手がけ、各業界の知識を身につけながら新事業展開を行う山本社長。労働環境の透明性を重視し、「ホワイト企業認定」を受けた株式会社エアリーをこれからも応援していきたい。
山本成人/大学卒業後、株式会社富士通京葉システムエンジニアリング(2016年に富士通株式会社に吸収合併)に入社し、約3年間勤務。1993年に株式会社エアリーを設立。同代表取締役に就任。