※本ページ内の情報は2024年4月時点のものです。

2023年10月に開始されたインボイス制度。帝国データバンクがインボイス制度についてのアンケート調査を行ったところ、1500社からの回答を得た。そのうち、制度への対応に関して「懸念事項がある」と答えた9割超の企業に複数回答で具体的な内容を尋ねたところ、「業務負担の増加」と懸念を示した企業が7割を超えた。

グランサーズ株式会社は上記のような課題解決のため、バックオフィスのトータルサポートを行っている。代表取締役社長である筧智家至(かけひちかし)氏に起業に至った経緯や、今後の事業展望などをうかがった。

コンプレックスは弱点ではない

ーー大学卒業後、公認会計士を目指した理由を教えてください。

筧智家至:
自身の生い立ちやコンプレックスが関係していると思います。もともと人とコミュニケーションをとることが苦手で、大学時代も周囲に馴染めませんでした。就職活動をする上で、自分が営業などで活躍するイメージが持てなかったので、まずは資格をとることにしました。

昔から「人の役に立つことをしたい」と思っており、「社会の役に立つ資格は何か?」と考えている時に、公認会計士という仕事が浮かびました。1人の経営者と話ができれば、その後ろには社員が何人もいるので、「より多くの方々の役に立てるのでは」と思い、公認会計士を目指しました。

試験に合格した時、多くの人が自分を認めてくれるようになりました。それをきっかけとして、「自分の価値は他人が決めるものではなく、自分で決めるものだ」と考えるようになりました。

ーー何社も受けた中で四大監査法人の一つを選択した理由は何でしょうか?

筧智家至:
働く上で、自分自身を成長させることに重きを置いていたので、「プロフェッショナル意識が高い方々のいる環境で働きたい」と思っていました。私は「周囲に負けたくない」という思いで努力できるタイプなので、居心地のいい場所よりはノルマが課されるような厳しい環境を選択しました。

ーー入社後はどのようなモチベーションで働いていましたか?

筧智家至:
公認会計士の実務補習所にいた頃、先生から「会計士が本気になれば、日本はよくなる」と言われました。その言葉に深く共感し、「社会の役に立つため、日本の国益のために」と公認会計士を目指したのですが、実際に社会で働く人は意外とそのような熱意を持って働いていないことに愕然としました。

人生をかけて勉強し、公認会計士の資格を取得したにもかかわらず、会計士になったとたん保守的になってしまう人が現場には多い印象でした。お客様に言うべきことを言わず、粘り強いコミュニケーションをとらない表面的な関係では、やるべきことを提案できず、業績も改善しません。

私には「社会の役に立ちたい」という志があったので、そのような人たちを反面教師として、積極的に働きました。

本気で日本をよくするために、あえて独立の道を選ぶ

ーー独立するに至ったきっかけはありましたか?

筧智家至:
自分の評価や価値は他人が決めるものではない、と思っていたところ、自分自身が会社での評価とは関係なく当初思い描いていた「本気になれば日本はよくなる」ということを実践できているのか、と疑問に抱いたこときっかけでした。最終的に自分の人生はお金のために生きているわけではなく、日本のために仕事をすることである、と考えられたことが独立のきっかけでした。

転職を意識した際、他の監査法人に異動したり、事業会社のCFO(最高財務責任者)になるなど、選択肢はたくさんありました。ただ、これらは既存の延長線上でできそうだと思っていました。中小企業の経営者だった父が苦労していた姿を間近で見ていたので、自分自身の成長のために、一番厳しい世界だと実感していた独立を選びました。

ーー独立後の苦労について教えてください。

筧智家至:
独立後は、比較的順調に仕事の受注があったため、これといった苦労はありませんでした。独立後1ヶ月で以前の年収と近い売上があり、今まで自分がしてきたことは間違いではなかったと自信につながりました。

社名の「グランサーズ」には、成長(の過去分詞形grown=グラン)と走る人(runner=ランナー)を掛け合わせ、「成長伴走する」という意味を込めており、弊社はそれを売りにして事業を成長させてきたコンサルティング会社です。会社が成長したがゆえに苦労したことは、お客様のオーダーに私が応えきれなくなったことです。私はコンサル業務以外にも営業活動を行っているので、私の代わりの誰かに業務を引き継いだ場合、お客様から苦情を言われることが少なからずあり、課題解決には苦労しました。

働き方も人材も多様に選べるこれからの経営スタイル

ーー貴社の事業内容と強みをお聞かせください。

筧智家至:
弊社はブラウザ上に管理部や経理部などのバックオフィスが存在する社会の実現を目指しています。提供するサービスとしては、アナログや属人化した業務を可視化するシステムの導入や、DX推進支援のコンサルティングです。

また、弊社の正社員が直接関与して業務や作業を行う、スキルシェアリングサービスも提供しています。

強みとしては、正社員に対しての教育カリキュラムコンテンツが2000を超えていることです。認定試験や検定試験を通してスキルを可視化することで、社員のスキルアップを目指しています。

ーー数年後に実現したい事業計画はありますか?

筧智家至:
3〜4年後には上場を実現したいですね。事業を拡大するにあたって、社員を大幅に増やす予定はありません。それがこれからの経営スタイルだと思っています。

その代わりに業務委託の方に焦点を当て、副業やフリーランスなど柔軟な働き方を増やしていきたいのです。今年の業務委託者の目標は1000人ですが、3〜4年後には1万〜2万人に増やしていきたいと考えています。

地域・企業・社員みんなが幸せになる「社会貢献」を目指して

ーー会社が目指すビジョンと、若い方へ向けてメッセージをお願いします。

筧智家至:
弊社は「お客様に伴走するパートナーになること、従業員の幸福を追求すること、日本の全ての企業や全ての地方に貢献できる会社になること」を企業理念として掲げています。この3つがそろって初めて良い会社になれると思うので、この企業理念の実現をこれからもずっと突き詰めていきたいですね。

弊社はあくまでも社会貢献を仕事の根本に置いています。そのため、「自分の仕事が将来どのように社会貢献へつながるのか」を意識して働いてもらいたいと思っています。

広い視野でさまざまな事柄についてのイメージをふくらませることができ、「いつかは社会の役に立ちたい」という志を持つ方に、ぜひ来ていただきたいですね。

編集後記

人材不足が懸念される現代において、柔軟な働き方にも対応し、時代に合わせた経営スタイルを確立しているグランサーズ株式会社。日本社会の今後は同社が担っているのではないかと思わされるようなインタビューだった。同社が社会にどのような変革をもたらすのか、今後の動向に注目していきたい。

筧智家至/1980年、愛知県生まれ。慶應義塾大学を卒業。2004年に四大監査法人の一つに入社し、2012年に筧会計事務所(現・グランサーズ株式会社)を設立。IPO支援200社超、累計顧客3500社の実績がある。中小企業の管理部の現場に入り、経営者や管理部の課題解決を手がける。チャンネル登録者数が19万人を超えるYouTube『社長の資産防衛チャンネル』では、キャッシュを節税で最大限残したり、運用で効率よく増やしていく方法を伝えている。