※本ページ内の情報は2024年6月時点のものです。

パチンコ店運営の株式会社合田観光商事を主軸とするひまわりグループは、各種の娯楽関連業を提供するほかに、子会社として農業法人も抱えている。

パチンコと農業の異色の組み合わせを実現した柔軟な発想はどこから生まれるのか。株式会社ひまわりホールディングスおよび合田観光商事の代表取締役社長を務める合田高丸氏からお話をうかがった。

娯楽産業は、皆が資金力や余暇を持ってこそのもの

ーー農業に参入することになった背景を教えてください。

合田高丸:
パチンコのような娯楽産業が利用されるのは、人々に金銭的な余裕があるときですよね。北海道は農業や酪農が盛んな地域なので、特にその分野を底上げしたいと考え、農業法人をグループに迎えました。

労力を最小限におさえ作物が育つ「クールな農業」の可能性に挑戦するため、機材導入に積極的に資本を投下しています。そこでできた作物を安く売るのではなく、世界に向けて利益を上げられるブランドとして「メイド・イン・北海道」を確立したいと考えています。そうすれば農業分野に余力ができ、最終的には娯楽産業も潤うでしょう。

ーーパチンコ店運営会社としては、どのような取り組みをしていますか?

合田高丸:
パチンコ自体が複雑化していて、新しい人に店舗に来て遊んでもらうハードルは高くなっています。そこで、まずはパチンコという娯楽の存在に気づいてもらうことや、弊社の店舗に訪れてもらうことを第一に考えました。

具体的には、パチンコとは無関係の美容関係の店舗をビル内テナントに入れたり、町の観光課と組んで名所とともに弊社を紹介するテレビコマーシャルを作成したりしています。道内の人が観光などで余暇を過ごす中で、選択肢のひとつとしてパチンコ店にも足を運んでもらいたいですね。

違和感や疑問を大切に、先端技術も活用する構えで

ーー機材導入に力を入れる中で、最先端技術も視野に入れていますか?

合田高丸:
必ずしも先端を目指しているわけではありませんが、便利なものが出てきたらそれをうまく活用したいと考えています。

これから先100年続く企業を目指す中で、デジタル技術を活用して継承しにくい勘やセンスについて客観的に分析し、あいまいなものに頼らず企業経営を続けられるようになっていきたいと思います。私自身も現場を見て改善のアイディアを出すことがあり、それが新しい技術に結びつくこともあります。

私はよく、「固定観念がない」「柔軟な発想を持つ人だ」と言われます。特有の文化や技術に慣れて「当たり前だ」と思ってしまうことは実は恐ろしいことなのです。特に、新卒入社の人には「あなたたちは今まっさらで、いろいろなことに疑問が持てるのだから、気がついたことは何でも言ってほしい」と伝えていますね。

ーー柔軟な発想力につながるような経験が過去にあったのでしょうか?

合田高丸:
子どもの頃、かくれんぼの最中に3階建ての屋上から地下1階まで転落し、死を覚悟するような体験をしました。その後、学校を卒業し、ワープロの入力が速かったことを活かして、家業を手伝うために弊社に入社しました。

そのときに母から「あなたはあの時、何かを成し遂げるために生かされたんだよ」と言われました。その言葉を受けて、「自分は何のために生きているのだろうか」「自分にしか成し遂げられないことは何だろうか」ということをずっと考えています。

しかし、明日のことは分からないので、「今日できることをしよう」という感覚も持っています。このような経験が、私の柔軟な発想につながっているのかもしれませんね。

自分も他者も幸せになるツールとして、変わり続ける会社に

ーー100年企業を目指すための、人材育成の工夫を教えてください。

合田高丸:
2022年から、若手社員を主に集めた「100年会」という会合をつくって、仕事のモチベ―ションを上げる方法を考えています。実際にその中から出たアイディアが形になったこともありました。私が60歳になるまで今から12年あるので、あと2年間は私自身が先頭に立ってそういった取り組みを行い、その後の10年は次の世代にチャレンジしてもらえるように変えていこうと思っています。少しずつ、私がいなくても会社がまわるようにしていきたいですね。

ーー幹部人材に求めていることは何でしょうか?

合田高丸:
幹部社員には、自分の頑張りだけでなく、他人の頑張りをサポートすることも期待しています。

私の理想は、社長も含め誰が欠けても揺るがない組織であることです。いつも、幹部の人材には「これから入社する人たちが好きになれる会社に変えていってほしい」「自分たちだけが頑張らないといけないのではなく、他の従業員に助けてもらっても良い」と伝えています。

ーーこれから入社する社員にはどんなことを期待していますか?

合田高丸:
社員には、会社を自分たちが幸せになるためのツールとして使ってほしいですね。会社は入れ物に過ぎないので、私は「会社そのものを存続させたい」というよりも、「集まってくれた社員が今後も不満なく働いていくにはどうしたら良いか」ということを考えています。

会社が良い方向に変わっていくためにも、キャリアや背景を問わず多様な方が集まるようになれば嬉しいですね。与えられた仕事をただ行うだけではなく、その内容を分析して「どう楽しくできるか」ということを自ら考えて、他の社員と刺激し合って工夫できる方に入社してほしいと思います。

編集後記

娯楽産業を利用してもらうために農業に取り組む壮大な計画を構築し、多角的な経営を行うひまわりグループの最大の強みは、グループの中心に位置する合田観光商事の社長である合田氏の柔軟な発想力にあった。100年企業として、技術を活用しながら発想力を重んずる社風が継承されていく同社の未来は明るい。

合田高丸/1976年北海道生まれ。高校を卒業後に株式会社合田観光商事に入社。店舗担当役員を経て、2011年代表取締役社長に就任。株式会社ひまわりホールディングス代表取締役社長。