株式会社イクスは、技術力を武器に成長を続ける、1999年創業の企業だ。オフィスビルやデータセンターなどの大規模施設の空調自動制御システムの施工、設備の点検、メンテナンスを手がける「シェアードシステムサービス事業」や、画像処理、光学処理技術を応用したムラ補正(De-Mura)IP及び1ピクセル解像解析ソフトウェア、ムラ補正装置関連製品の開発行う「ディスプレイソリューション事業」を柱に、日本が誇る技術力を世界に発信している。
「日本の“技術力”を武器に、技術者にもっと光を」という思いから創業した代表取締役社長の井本眞義氏に、創業ストーリーや今後の展望、事業への思いを聞いた。
創業のきっかけは「日本の技術者に光を当てたい」という思いだった
ーー株式会社イクスを創業したきっかけをお聞かせください。
井本眞義:
大学時代はスポーツに打ち込み、あまり勉強をしていなかったこともあり、「このままでは社会で通用しない」と思い、渡米しました。米国マーサー大学MBA大学院で金融学を学びました。
その後、MBAを取得して帰国。銀行に就職しました。銀行では法人融資で事業を支援する立場にいましたが、「自分でも事業を運営し、日本の技術者に光を当てたい」という思いが強くなり、起業を決断しました。
プラントエンジニアリングの会社で新規事業開発業務を経験したのち、高画質デジタル・ビデオ・デコーダの開発を行う会社を創業しました。
ーー金融業界から技術業界に転身したのはなぜですか?
井本眞義:
起業したのは、折しもバブルが崩壊した時代。日本の技術者が世界でも注目される高い技術を誇っていたにも関わらず、バフル崩壊をきっかけにビジネスの世界で光を浴びられなくなってしまった現実を目の当たりにしました。
だからこそ、日本の技術者に光を当てられるよう、世界に通用する技術を持つ会社を立ち上げようと一念発起しました。
日本的な「SURIAWASE」技術で世界に勝負をかける
ーー事業について詳しくお聞かせください。
井本眞義:
弊社は、ディスプレイソリューション事業・シェアードシステムサービス事業・ファインポリマー事業という3つの事業を柱としています。現在の売り上げ規模として最も大きいのはシェアードシステムサービス事業であり、データセンターなどの大規模施設の空調自動制御システムの施工、設備点検、メンテナンスを担う事業です。
ーーシェアードシステムサービス事業がお客様から選ばれている理由はどんなところにありますか?
井本眞義:
どのメーカーのシステムにも対応できる技術力、そして全国に展開している技術者の動員力です。空調に関する自動制御システムのメンテナンス会社は他にもありますが、特定のメーカーのみ対応しているという会社も少なくありません。どのようなメーカーでも対応できることは弊社の大きな強みです。
ーーディスプレイソリューション事業、ファインポリマー事業についても教えてください。
井本眞義:
デイスプレイソリューション事業は、ムラ補正関連製品の開発を手がける事業です。昨今技術革新の進歩により、デジタルパネルの性能は飛躍的に進化しています。
けれども、生産過程において生産側の技術力不足の問題で、製品の一定割合に輝度や色のムラなどの不具合が生じています。つまり、製品としての歩留率に関して、ディスプレイパネル製造メーカーが頭を悩ませているという実情があるのです。
私たちは、製品の歩留が悪い部分を、改善し、売れる商品・商材にしていくためのムラ解析・補正ソリューションを提供しています。顧客は中国や台湾などの海外企業が中心です。
また、ファインポリマー事業はまだまだ新しい事業です。生分解性樹脂の開発などを通じ、環境にやさしい製品を提供しています。
ーー貴社が大切にしていること、強みを教えてください。
井本眞義:
イクスの強みは、日本らしい「SURIAWASE」の技術です。
日本人は、一人ひとりの技術力で勝負するのではなく、チームで切磋琢磨しながら物事を成し遂げ、高いアウトプットを叩き出すということに長けています。
また、「経験値を蓄積してノウハウ化することで優れた製品をつくり出している」ということが実に多く見られるのが日本の特徴です。
弊社では、技術者一人ひとりが高い専門性を持つだけでなく、組織としてお互いの知見を「SURIAWASE」ることで、他社が真似できないような技術を整えています。
イクスの強みである組織としてもつノウハウの塊を活かし、今後も戦っていきたいと考えています。
100億円を超える年商を視野に入れつつ、海外展開にも挑む
ーー今後の展望をお聞かせください。
井本眞義:
数値目標でお話しすれば、今後数年で年間の売上規模を100億円超にすることを視野に入れています。売上に合わせて、従業員の増員も考えています。特に、シェアードシステムサービス事業は設備関係の仕事のため、労働集約型のビジネスになるので、売上規模は従業員の人数に比例します。海外展開も視野に入れながら、人員を拡充していくつもりです。
また、ディスプレイソリューション事業に関しては、売上規模は取扱量の拡大に比例します。現在は、シェアードシステムサービス事業が弊社で最も売上の大きい事業ですが、今後、ディスプレイソリューション事業がこれに匹敵すると予想しています。
ーー採用戦略についてもお聞かせください。
井本眞義:
弊社は新卒採用、中途採用のどちらも行っています。中途採用では、これまでの経験や専門性も大切ですが、募集時に共通していえる求める人物像は「失敗を恐れず、チャレンジし続けられるメンタリティがあること」です。
責任感を持ち、一つのことに取り組み続けることが、成功への道筋と考えています。忍耐強く何事にも取り組み続ける人と一緒に働きたいと思っています。
編集後記
「何をやったら成功するのかという考えではなく、何かをやり続けることができる人だけが成功する」と話す姿が印象的だった、井本眞義社長。情報が溢れる現代。コツコツと技術や経験を積み上げることを重視した井本社長の哲学は、私たちが忘れがちなことを改めて気づかせてくれるものだった。
井本眞義/1965年生まれ、東京都出身。成城大学経済学部卒業後に米国留学、米国マーサー大学MBA大学院修士課程修了後、株式会社第一勧業(現:みずほ)銀行に入行。法人融資の業務に携わり、多くの事業支援をしてきた経験を活かし、1999年、株式会社イクス・ベインを創業。その後、関連会社を次々に立ち上げ、2003年にイクスグループへと統合。株式会社イクスの代表取締役社長に就任し、現在に至る。