※本ページ内の情報は2024年5月時点のものです。

日本で唯一、宝石専門のテレビ通販番組を持つ株式会社GSTV。自らバイヤーとして鉱山主から直接原石を買い付け、製造から販売までを自社で行う。ジュエリー業界に変革をもたらした代表取締役社長の今橋徹氏に、会社の歴史や宝石にかける思いなどを聞いた。

宝石業界に新風を吹き込む、日本初の宝石専門テレビショッピングチャンネル誕生!

ーー1975年の創業時はどのような会社でしたか。

今橋徹:
創業当初は、輸入した原石を研磨会社に卸したり、カットした宝石を輸入して甲府や東京のメーカーへ卸す事業を行っていました。また、ジュエリーを国内外で製作し、問屋やチェーン店に卸したり、カタログ販売を行ったり、さまざまなデパートの店頭や催事で直接お客様へのジュエリー販売を行う会社でした。

ーー「ジュエリー☆GSTV」の誕生のきっかけは何でしたか?

今橋徹:
通販中心にベンダーとして商品を卸すようになり、生放送のテレビ通販でジュエリー販売に大きな可能性を見出しました。当時は、店頭や催事でジュエリー販売を行う際に、商品である宝石のことを全て理解している販売員がほぼ皆無でした。

カタログも、写真しか参考になるものがないので、それほど多くは売れません。それがテレビだと、専門知識のあるMCとゲストが宝石の産地、歴史、文化なども説明してくれるので、お客様にも商品の魅力が伝わりやすいために売上も好調で、「あぁ、もう私たちの行く道はここしかないな」と感じ、テレビショッピングチャンネルを開設しました。


ーー宝石業界での貴社の強みを教えてください。

今橋徹:
価格競争力や技術力、ショッピングチャンネルの保有やチャレンジ精神も大きいのですが、やはり一番の強みは中間流通を省くことに尽きます。

ダイヤならインドやイスラエル、その他のカラーストーンはインドやタイ、ブラジル、アフリカなど、世界中の主要な産地や加工地から直接輸入することで、販売価格を抑えられることが強みです。

宝石に対する情熱と業界への旅

ーー幼少期から宝石とどのようにかかわってきましたか。

今橋徹:
幼少期、実家は宝石加工機専門メーカーとして事業を営んでいました。「宝石=加工するもの」という考えが、私には根づいていました。

将来、父親の後を継ぐかどうかとは関係なく、宝石について勉強するためにアメリカ留学も経験しました。帰国後も近山晶先生が主催している宝石のセミナーを受けたり、合宿やグループ勉強会に参加するなど、常に宝石が私の人生のそばにありました。

ーー実家の加工機メーカーに入社してからはどのような仕事をしていましたか。

今橋徹:
1400年前からスリランカでは、宝石がたくさん輸出されていましたが、当時は密輸が多かったため、スリランカ国営宝石公社がつくられました。その際、会社の機械一式とともに私もスリランカにわたって、機械の使い方や工場の運営を現地の人に教えました。

ーー独立したきっかけは何だったのでしょうか。

今橋徹:
当時はスリランカで、給料を全て宝石につぎ込んでいました。宝石の値段や相場などの詳細はわかりませんでしたが、とりあえず購入してお土産として持ち帰ると、香港における今橋製作所の代理店の社長から「買いたい」といわれたのです。購入時よりも倍の金額で買ってくれ、「宝石の産地での買い付けってすごいな」と感じました。世界中にある今橋製作所の代理店は、皆が宝石商で、朝10時から夕方5時までの勤務で良い車に乗っており、「これはいい仕事だな」と安易な気持ちで独立して宝石商になりました。

リピーター獲得のため、顧客満足度を高めることが成功の鍵

ーーテレビショッピングで重要視することはありますか。

今橋徹:
まずは、宝石に興味をもって好きになってもらうことに力を注いでいます。宝石を好きになって一度買ってもらい、買ってよかったと感じたらリピーターになってもらえるので、それが顧客獲得につながっていきます。

テレビだと嘘はつけませんし、製品自体も弊社が宝石や地金などを仕入れ、デザイン、加工、製造、販売までトータルで行っているので、安心してご購入いただけます。テレビを観て何百万円、何千万円で買ってくださり、届けに行くと現物も見ずに、「信用してるわよ」とお金だけ渡してくれる方もいらっしゃいます。

ほかの通販会社と異なり、受注生産制で、多くは原則的に返品は不可能です。6〜7週間ほどお待ちいただくので、手元に届いた時にがっかりされることがないように尽力しています。万が一の際の駆け込み寺のような機能も果たすショールームをどんどん展開しています。

以前ショール―ムでは、販売とクレーム対応が半々でしたが、現在はクレームはほとんどありません。毎日番組を観ていただいている視聴者のために、毎月400点、1日10個以上の新作を製作しています。

「ジュエリーの概念を変える」ため店舗展開と二次市場の創造を目指す

ーー今後の注力テーマについてはどのように考えていますか。

今橋徹:
店舗展開と二次市場の創造です。二次市場とはオークションと「ジュエリーセカンダリーマーケット」といって、弊社で買っていただいた商品で使わなくなったものを売ってもらうシステムです。初回販売時のおよそ6~8掛けの値をつけ、すべて新品同様に仕上げて保証や修理も無償で行うので、安心してご購入いただける仕組みです。

弊社のラボには、世界でもトップクラスの宝石学者である阿依アヒマディ博士もいるので、他所で購入されたものでも鑑定後にオークション売買が可能です。

将来的にはテレビやネットでのオークションライブの配信にも注力していく予定です。相場を理解して中古商品の架け橋となり、一次市場の価格と二次市場の価格をいかに近づけるかが今後のテーマです。

ーー5年後、10年後の目標はありますか。

今橋徹:
「ジュエリーの概念を変えること」ですね。自然の産物である原石は2000〜3000年前のものでも永久に劣化しません。宝石も100年経っても全く変わらず、むしろ価値が大きく上がります。

最近は金の値段も30年前の10倍になっていますが、まさにジュエリーも同様の成長が見込めます。良い宝石を私たちと同じ価格で売買する会社がもっと増えると嬉しいですね。

ーー最後に、読者へのメッセージをお願いします。

今橋徹:
お持ちのジュエリーを買取店などに持ち込むのは、お客様にとっても宝石にとっても大きな痛手です。バブルの頃に購入したものは特にそうですが、「ジュエリー=お宝」なので、ぜひ私たちに預けてください。売りたい人や買いたい人の仲介を積極的に行い、買取店よりはるかに高価で販売ができます。

編集後記

インタビューを通じ、「ジュエリーを買って楽しんでファンになってほしい」と語る、今橋社長の宝石に対する愛情が伝わってきた。「メーカーや作家たちが思いを込めたものを直接売ってあげられるようにDtoC(Direct to Consumer:メーカーがECサイトなどから直接、ユーザーに商品を販売するビジネスモデル)も推奨していきたい」と話す。

「ジュエリーセカンダリーマーケット」という委託販売形態は、これからの時代においていっそう需要の高い市場になっていくだろう。

今橋徹/アメリカ留学後、父が経営する会社に2年在籍した後、1975年に半貴石の個人営業を開始、法人化の後、代表取締役社長に就任。1988年、株式会社GSTVの前身である株式会社イマックビーシーを設立。