※本ページ内の情報は2024年5月時点のものです。

経済産業省が公表した「IT人材需給に関する調査」によると、市場規模の拡大に伴い、2030年には最大79万人のIT人材が不足すると見込まれている。

そんな中、システムエンジニアリングサービス(SES)業界で急拡大を続ける株式会社ボールド。同社の代表取締役、澤田敏氏に、人材育成の考え方、社員がやりがいを感じる文化づくり、今後の展望についてうかがった。

期限付き目標が評価される絶対評価とコーチ制度でエンジニアのモチベーションを向上

ーー貴社の強みを教えてください。

澤田敏:
弊社は全員正規雇用で非正規雇用を行っておりません。2014年の時点で約100名だった社員が、わずか10年で10倍に増加し、売上もおよそ14倍にまで伸びています。そのうち近年の中途採用では毎月15名ほどが入社し、離職率も10%程度に抑えられています。

私たちは非常に勤勉なエンジニア集団をつくり上げました。勤勉であることを証明する1つが、社員の総資格保有数です。社員数826名の時点で総資格保有数は2210件で、これはIT業界の中でも相当多い数です。中には入社から7年間で28件の資格を取得したエンジニアもいます。

弊社では毎年10月から新卒の内定者研修を始めるのですが、9月末の時点で全員が当たり前のようにITパスポートを取得しています。また、新卒の過半数が入社前に、自主的に基本情報技術者の資格を取得しており、お客様にも驚かれます。

ーー勤勉なエンジニアを育てるための秘訣を教えてください。

澤田敏:
私が以前勤めていた人材サービス会社で、3年連続で営業成績全国1位を獲得していた時に、「トップの2割しか勝ち方を知らない」と気付きました。残りの8割は努力の仕方を知らないのです。学生時代は、受験勉強や甲子園などの期限付きの目標があるため、誰もが努力できました。私は「人生には期限付きの目標が必要不可欠だ」と考えています。

期限付きの目標を達成させるための弊社独自の取り組みとして、コーチ制度をつくりました。大手IT企業でマネジメントを経験した約45名のコーチが、社員にマンツーマンで付き、半年ごとに明確な期限付きの目標と、それを実現するためのアクションプランを設定し、日々の業務や自己研鑽に取り組んでいます。

ーー社員のモチベーションを高めるために工夫していることはありますか?

澤田敏:
弊社では、絶対評価を取り入れることで、結果を出せば必ず評価されるという制度を確立しています。社員自ら設定する目標は「顧客満足」「自己研鑽」「他者に影響を与えること」の3つの項目に基づいたもので、それぞれの達成度合いによって点数が決まります。

また、勤怠についても数値化し、「社会人として当たり前のことをしたら評価する」という仕組みをつくっています。

さらに、現場での評価を反映するために、エンジニアに対するお客様への満足度調査を実施しています。現場での頑張りがダイレクトに評価につながることで、エンジニアのモチベーションを高めることができます。

「感動大学®」でエンジニアの人間力を育む授業を開催

ーー社員のスキルアップのために取り組んでいることはありますか?

澤田敏:
弊社では、「感動大学®」という技術力と人間力のプロの講師による授業をほぼ毎日開催しています。この授業はそれぞれの現場での業務後に行いますが、毎授業20〜30名ほどの社員が参加しています。

IT業界では、現場に入ったらほったらかしで、ビジネススキルやマネジメント、コミュニケーションなどの人間力を学ぶ機会がほとんどありません。

しかし、私は人間力が不足していては良いパフォーマンスが発揮できないと思っているので、「感動大学®」では人間力を高めるための授業を数多く行っています。

もちろん、技術力向上のための、プロの講師による開発やインフラなどの授業も行っています。

ーー外部講師を迎えるにあたって印象に残っていることはありますか?

澤田敏:
弊社がまだ協会や団体に所属していなかった時代、特定非営利活動法人LPI-Japanの当時の理事長が、弊社社員が1年で数多くの資格に合格していることに興味を持って訪ねてきたことがありました。

その時に弊社の取り組みを説明したところ、「やっとこんな会社が出てきたか」と評価してくださり、この方には今でも毎月無料で講師をしていただいています。一生懸命に取り組んでいれば、こうして応援してくれる人が現れるのだと実感した出来事でした。

ーー社員の帰属意識を高めるための取り組みを教えてください。

澤田敏:
月に1度、「BOLDay」という、社員が一堂に会する帰社日を設けています。IT業界では、月に1回程度、客先に常駐している社員とコミュニケーションを図る目的で、現場での業務後に自社に帰る帰社日があります。この帰社日について、他社のエンジニアにたずねると、「つまらない」という答えが返ってくることがほとんどです。

ならば私は帰社日を「社員全員が楽しみで仕方がないものにしよう」と考えました。そのために1番大切なことは仲間と共に楽しめるディスカッションやワークを行うことです。

たとえば「感動大学®でどんな授業をやってほしいか」を話し合い、そこで出た意見を実際に取り入れます。日本人は「会社では自分の意見が通らない」と思い込んでいる人が多いので、実際に意見が通ると帰属意識が芽生えます。ワークが終わると、22時からは懇親会が始まります。懇親会では、食べ放題・飲み放題で社員一同、毎回盛り上がっています。

「40歳定年」というIT業界の常識を変える

ーー貴社のミッションを教えてください。

澤田敏:
弊社のミッションは「IT業界の変革 生涯現役エンジニアカンパニー」です。IT業界は「40歳定年説」といわれていますが、腕のあるエンジニアたちが40歳で現役でいられなくなるのはおかしいと感じています。

弊社は65歳までエンジニアとして働くことができる環境を整えています。歳を重ねてからも資格を取得すれば、褒められるだけでなく、点数が付いて昇給もできます。

ーー今後の展望をお聞かせください。

澤田敏:
4年後までに社員数4000人を目指しています。社員を増やすことで、さらに事業を伸ばしていきます。また、「生涯現役エンジニアカンパニー」になるためには、もっといろいろな事業体が必要だと考えています。

今後も、すべてのステークホルダーに感動を与えるため、勤勉であり続けます。

編集後記

社員の意見を吸い上げるためにコミュニケーションを欠かさない澤田社長。エンジニアがやりがいを持って働くことができるように独自の文化をつくり上げ、成長し続ける姿に、今後も注目していきたい。

澤田敏/1967年生まれ。広告代理店に入社し、営業職に従事。1998年に株式会社ボールドの前身となるITエンジニアのアウトソーシング事業を開始。2003年に法人化し、株式会社ボールドを設立して代表取締役に就任。座右の銘は「評価は他人が決める」。