※本ページ内の情報は2024年5月時点のものです。

今や、ECサイト上で誰もがブランド品を購入し、気軽に高級品を手にできる時代になった。競合他社がひしめく中、ブランド品などの輸入雑貨販売を手掛け、さらに付加価値の提供に目を向けたのが株式会社チャイルドの立川淑郎氏だ。

立川社長が他社との差別化を図るために徹底していることとは何か。今回は、起業までの経歴や印象に残っているエピソード、成功の理由や独自の取り組みなどをうかがった。

予想だにせず、突然担わされた重責

ーー独立前は高度経済成長期でしたが、働き手としてはどのように感じていましたか。

立川淑郎:
実際には、私がバブルの恩恵を直接享受したわけではなく、お店に来ていたお客様の様子を見ていた程度です。「ドラマや漫画の世界のようだ」と傍目で感じていました。特に、よく知っているお客様の車のトランクに積まれた札束を目にしたときは衝撃を受けました。

ーー最初に有限会社藤本実業で店長を任されたきっかけや当時の思いを聞かせてください。

立川淑郎:
当時の会長が方針を決め、新店をオープンしたその日に、会長から「この店を任せる」と言われて驚きました。準備も心構えもなかったため次々と問題が発生し、その処理に追われる毎日でした。

オープン当初は赤字が続き、かなりつらかったのですが、4〜5ヶ月続いた赤字が初めて黒字に転じたときは「やればできる」という自信になりました。「立場が人をつくる」という貴重な経験をしたと思っています。

とにもかくにも実際に動いてみることが大切

ーースナック運営の際、印象的なエピソードはございましたか?

立川淑郎:
福岡市の中洲や天神の会社へパンフレットを持って回ったことです。当時、博多駅周辺には飲食店がありましたが、中洲や天神付近にはそのようなお店が少なかったので、まずは店舗を知ってもらうことが大切だと思い、チラシを作って配って歩きました。

企業へうかがっては、受付の方に「お酒が好きな方にお渡しいただけますか」と伝えて、1週間から10日間で2000部ほど配りました。

2000部を1人で配った結果、店舗へと足を運んでくれた方は2人でした。しかし、その内の1人がある企業の役職者で、その方が知り合いを紹介してくれたことをきっかけに少しずつ客足が伸びていきました。

ーー赤字経営のお店を黒字化するために行ったことは何でしょうか?

立川淑郎:
店舗に人が来てくれても、店舗の状態が良くないと再来店してくれないことに気が付きました。そこで、店舗内容を充実させることに尽力し、「ショーを催す」という考えに至りました。

当時、流行していた曲を多くかけ、私がマイクを持って司会をし、お客様に楽しんでもらうショーを開催することで、お客様が増えていきました。

さまざまな経験を積んだ後、起業

ーー前社とは異なる業界での起業ですが、選んだきっかけや背景を教えてください。

立川淑郎:
飲食店経営の経験を通して、成功させる方法やノウハウを学びました。前職時代は会長がターゲットや方向性を決めた店舗を任されただけだったので、「ゼロの状態から仕事をしたい」と思い、起業に至りました。

中洲で働いていたことでさまざまな知り合いができ、その方々と話をする中で卸売業や輸入品に興味を持つようになりました。そこで、手始めに知名度のあるライターを仕入れて販売したことが、起業のきっかけです。

起業当初はうまくいかないことの方が多かったと思います。手元の資金がほとんどなくなるという、恐ろしい経験もしました。

当時、日本でブームだった電子ゲームの仕入れについて悩んだ時期がありました。日本では大人気で、どこにも在庫はない状態でしたが、偶然にも海外で仕入れ先を見つけました。そのとき、手元にある資金を投入して在庫を確保する決意をしました。

何かを始めることは難しいかもしれませんが、「とりあえずやる」と決断したことが印象に残っています。その後、無事に大きな利益を上げ、安堵したことを覚えています。

常にお客様第一で考えるビジネス戦略

ーー競合他社が多い業界で貴社が成功した理由は何だと思いますか。

立川淑郎:
他社との差別化を徹底的に図ったからだと思っています。購入品にブランドの紙袋や外箱を必ず付けたり、「名入れ」のサービスをしたりすることで、付加価値を高めました。

競合他社と比較して弊社の販売価格が高かったとしても、弊社の商品にはプラスアルファのサービスがあるので、ユーザーに選ばれ、利益につながったと思っています。

またECサイトにおいては、梱包や名入れ作業についてわかりやすく表示したことが、ユーザーに好評でした。商品を注文して、どのような形で届くのかを明確にしたことが、差別化につながったのです。

他にも、「永久に使えるベルト」も販売しています。通常、ベルトのストリンガ(皮帯)部分は使い続けると傷みますが、私たちは交換サービスを提供しているので、ストリンガ部分を取り換えながらずっと使い続けていただくことが可能です。

ーー今後、注力していく分野や目標について教えてください。

立川淑郎:
ストリンガのサービス、名入れとラッピングに、より注力したいと思っています。ラッピングについては、ラッピング用品をヨーロッパから輸入し、ラッピングコーディネーターの資格を持つスタッフ2名体制で行っています。高級品の名入れや特別なラッピングなど、商品購入における手数料ビジネスを今後は増やしていきたいですね。

ーー最後に20代、30代の方にメッセージをお願いします。

立川淑郎:
「自分だったらこうする」という考えや意見をもつ癖をつけてもらいたいと思います。いざ一人でやってみることになった際に、自分の考えや意見がないと、手も足も出ないからです。言われた通りに動くだけではなく、常に自分の軸を持つことを意識してもらいたいですね。

編集後記

「とにかくやってみる」ということを率先して行ってきた立川社長。その行動力で数々の試練を乗り越えてきた。今でも会社の成長のために、日々試行錯誤を続けている。

今後はどのようなサービスを展開するのだろうか。いずれの方向であっても、経営者としての目線とユーザーとしての目線を立川社長が持ち続けている限り、株式会社チャイルドの成長はとどまることはないだろう。

立川淑郎/1958年長崎県生まれ。長崎県立大崎高等学校卒業。1983年有限会社藤本実業入社。1989年5月独立、福岡市中洲にてスナック「チャイルド」をオープン。1993年有限会社チャイルドを設立し、輸入雑貨販売を開始。2002年9月株式会社チャイルドへ組織変更。